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民法の特例法の最近のブログ記事

最初に、条文をみてみます。

第1条趣旨) この法律は、消費者が行う電子消費者契約の要素に特定の錯誤があった場合及び隔地者間の契約において電子承諾通知を発する場合に関し民法(明治29年法律第89号)の特例を定めるものとする。

第2条定義) この法律において「電子消費者契約」とは、消費者と事業者との間で電磁的方法により電子計算機の映像面を介して締結される契約であって、事業者又はその委託を受けた者が当該映像面に表示する手続に従って消費者がその使用する電子計算機を用いて送信することによってその申込み又はその承諾の意思表示を行うものをいう。

 この法律において「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいい、「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。

 この法律において「電磁的方法」とは、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法をいう。

 この法律において「電子承諾通知」とは、契約の申込みに対する承諾の通知であって、電磁的方法のうち契約の申込みに対する承諾をしようとする者が使用する電子計算機等(電子計算機、ファクシミリ装置、テレックス又は電話機をいう。以下同じ。)と当該契約の申込みをした者が使用する電子計算機等とを接続する電気通信回線を通じて送信する方法により行うものをいう。

第3条電子消費者契約に関する民法の特例) 民法第95条ただし書の規定は、消費者が行う電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示について、その電子消費者契約の要素に錯誤があった場合であって、当該錯誤が次のいずれかに該当するときは、適用しないただし、当該電子消費者契約の相手方である事業者(その委託を受けた者を含む。以下同じ。)が、当該申込み又はその承諾の意思表示に際して、電磁的方法によりその映像面を介して、その消費者の申込み若しくはその承諾の意思表示を行う意思の有無について確認を求める措置を講じた場合又はその消費者から当該事業者に対して当該措置を講ずる必要がない旨の意思の表明があった場合は、この限りでない。

 消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該事業者との間で電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を行う意思がなかったとき

 消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示と異なる内容の意思表示を行う意思があったとき

第4条電子承諾通知に関する民法の特例) 民法第526条第1項及び第527条の規定は、隔地者間の契約において電子承諾通知を発する場合については、適用しない。

まず、第1条で、この法律の趣旨が定められています。「消費者が行う電子消費者契約の要素に特定の錯誤があった場合」と、「隔地者間の契約において電子承諾通知を発する場合」の2つの場合について、民法の特例を定めています。この特例の内容については、第3条、第4条で定められています。

 

そして、第2条で、この法律における「消費者」、「事業者」、「電磁的方法」、「電子承諾通知」の定義が定められています。

 

第3条で、「電子消費者契約に関する民法の特例」が定められています。

民法

第95条錯誤) 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

この民法第95条ただし書の規定は、次の2つの場合については適用しないものとしています。

 

一 「電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を行う意思がなかったとき。」たとえば、ショッピングサイトで購入するつもりがまったくなかったのに、誤って購入ボタンを押してしまった場合が考えられます。

 

二 「電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示と異なる内容の意思表示を行う意思があったとき。」たとえば、ショッピングサイトで数量1つ購入するために、購入数量を1と入力するところを、誤って11と入力して購入ボタンを押してしまった場合が考えられます。

 

ただし、当該電子消費者契約の相手方である事業者(その委託を受けた者を含む。以下同じ。)が、当該申込み又はその承諾の意思表示に際して、電磁的方法によりその映像面を介して、その消費者の申込み若しくはその承諾の意思表示を行う意思の有無について確認を求める措置を講じた場合又はその消費者から当該事業者に対して当該措置を講ずる必要がない旨の意思の表明があった場合」については、民法第95条ただし書の規定が適用されるものとしています。たとえば、ショッピングサイトにおいて、購入ボタンが押されたときに必ず内容確認のページが表示され、購入の確認をするような措置をとっている場合や、ショッピングサイトにおいて、たとえば1クリックで購入手続きが完了するオプションも提供していて、購入者がそのような確認ページの表示がない手続きをとることをあらかじめ表明されている場合が考えられます。

 

第4条で、「電子承諾通知に関する民法の特例」が定められています。

民法

第526条隔地者間の契約の成立時期) 隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する

 申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。

第527条申込みの撤回の通知の延着) 申込みの撤回の通知が承諾の通知を発した後に到達した場合であっても、通常の場合にはその前に到達すべき時に発送したものであることを知ることができるときは、承諾者は、遅滞なく、申込者に対してその延着の通知を発しなければならない。

 承諾者が前項の延着の通知を怠ったときは、契約は、成立しなかったものとみなす。

この民法第526条第1項の「隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する」という規定は、「電子承諾通知」の場合には適用しないものとしています。つまり、「電子承諾通知」の場合には、契約は「電子承諾通知」が到達したときに成立するものとしています。

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 (2011.08.28 21:00)