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参議院と衆議院

憲法は、国会について、両院制を定めています。参議院と衆議院です。両院の関係をいくつか復習してみることにします。

 

まず、両院の活動について。

(1) 独立活動の原則。両院はそれぞれ独立に議事を行い、議決します。
(2) 同時活動の原則。両院は同時に召集され、同時に閉会します。

 

つぎに、憲法上の衆議院の優越について。以下の議決において、衆議院と参議院が異なるときは、衆議院の優越が定められています。

(1) 法律案の議決。59条。法律案について、衆議院で可決し、参議院がこれと異なった議決となったとき、衆議院で 2/3 以上の多数で再び可決したとき、法律となります。(衆議院の再議決の前に両議院の協議会(両院協議会)を開くこともあります。)
(2) 予算の議決。60条2項。両議院の協議会(両院協議会)を開いても意見が一致しないとき、衆議院の議決を国会の議決とします。
(3) 条約締結の承認。61条。
(4) 内閣総理大臣の指名。67条。

 

なお、両院独立活動の原則の例外として、両院協議会があります。両院協議会が開催されるのは、つぎのようなときです。

(1) 法律案の議決(59条)について、衆議院で可決し、参議院がこれと異なった議決(否決または修正)をした場合、衆議院の要求、または、参議院が要求して衆議院が同意したときに開催されます。
(2) 予算の議決(60条2項)、条約締結の承認(61条)、内閣総理大臣の指名(67条)について、参議院と衆議院で異なった議決をした場合、必ず、両院協議会が開催されます。両院協議会で意見が一致しないときは、衆議院の議決が国会の議決となります。

 

そのほか、衆議院のみに定められている権限があります。

(1) 予算先議。60条1項。
(2) 内閣不信任案決議。69条。

 

このようなことから、参議院は衆議院に対して第二院というように見られることもあります。ところが、議員の任期は、衆議院議員が4年。衆議院が解散されれば、この任期前に終了してしまうこともあるのに対して、参議院議員は6年。参議院議員は、衆議院議員よりも安定した議員活動が見込まれます。また、参議院議員は、3年ごとに半数改選というしくみがとられており、それぞれの選挙時における焦点・争点が必ずしも一致しない議員で構成されることも特徴と感じます。

 

ちなみに、両議院が対等とされるものです。

(1) 皇室の財産授与についての議決。8条。
(2) 予備費の支出の承諾。87条2項。
(3) 決算の審査。90条1項。
(4) 憲法改正の発議。96条。

 

第42条[両院制]

国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。

 

第59条[法律案の議決、衆議院の優越]

1 法律案は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。

2 衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは、法律となる。

3 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。

4 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて60日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

 

第60条[衆議院の予算先議及び衆議院の優越]

1 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。

2 予算について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は、参議院が、衆議院の可決した予算を受け取った後、国会休会中の期間を除いて30日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

 

第61条[条約の承認についての衆議院の優越]

条約の締結に必要な国会の承認については、前条第2項の規定を準用する。

 

第67条[内閣総理大臣の指名、衆議院の優越]

1 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だって、これを行う。

2 衆議院と参議院とが異なった指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて10日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

 

第69条[衆議院の内閣不信任と解散又は総選挙]

内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は新任の決議案を否決したときは、10日以内に、衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

選挙制度の基本

選挙の基本原理

まずは、選挙の基本原理のおさらいです。

普通選挙:選挙権は性別・財産・納税・学歴などで制限しない。(普通選挙に対して、制限選挙。)

平等選挙:選挙権は平等の価値をもつ。(平等選挙に対して、不平等選挙。)

自由選挙:選挙権を自由に行使できる。(自由投票に対して、強制投票。)

秘密選挙:投票内容を秘密にする。(秘密投票に対して、公開投票。)

直接選挙:選挙人が直接選挙する。(直接選挙に対して、間接選挙。)

参議院議員選挙の特色

参議院議員選挙については、全都道府県の区域を通じて行われる比例代表選挙と各都道府県を単位とする選挙区選の二本立ての制度が採られています。

比例代表選挙については、2000年の公職選挙法改正により非拘束名簿式が導入されています。これは、各政党が候補者に順位付けをしないで名簿を提出し、政党名・候補者名をあわせた総得票数に従って政党に議席が配分された上で、候補者名投票の得票数の多いものから順に当選者を決める方式です。

ちなみに、衆議院議員選挙では、小選挙区比例代表並立制という方式がとられています。

選挙区制

選挙区制には、大別して小選挙区制大選挙区制があります。

小選挙区制は、1選挙区から1人の議員を選出します。(多数代表制)2大政党化を促し、政局が安定するというような長所があるといわれています。また、死票の確率が高くなるという短所があるといわれています。

大選挙区制は、1選挙区から2人以上の議員を選出します。(少数代表制)死票が少なくなる、少数派も議員を選出する可能性があるというような長所があるといわれています。また、同一政党からの複数候補が共倒れとなる場合があるという短所があるといわれています。

投票方式

投票方式には、大別して単記投票法連記投票法があります。

単記投票法は、選挙区の議員定数にかかわらず、投票用紙に1人の候補者を記入して投票する方式です。

連記投票法は、1選挙区から2人以上の議員を選出する大選挙区制において、投票用紙に2人以上の候補者を記入して投票する方式です。更に、連記投票法は、選挙区の議員定数と同数の候補者を記入する「完全連記投票制」と、選挙区の議員定数より少ない候補者を記入する「制限連記投票制」とがあります。

小選挙区制では、単記投票法となります。そして、多数代表制の特徴をもちます。

大選挙区制では、完全連記投票制の場合は多数代表制の特徴をもちますが、制限連記投票制の場合は少数代表制の特徴をもつといわれています。

なお、参議院議員選挙の各都道府県を単位とする選挙区選は、大選挙区制での単記投票法となっており、少数代表制の特徴をもつといわれています。

比例代表制

多数・少数各派勢力に対して、得票数に比例した議席を配分する選挙方式です。投票方式として、単記移譲式(単記による投票で、当選に必要十分な得票数を超える票を、選挙人の指定する順位に従って、他の候補者に順次移譲させる方式)、拘束名簿式(選挙人が、政党の作成した候補者名簿すなわち政党に対して投票を行い、各名簿の得票数に応じて、あらかじめ名簿に登録された順位に従って当選者を決定する方法)、非拘束名簿式(選挙人が、政党の作成した候補者名簿上の候補者を指定して投票し、まず、名簿ごとに得票数を集計して当選者数を決定し、各名簿の中で個人得票数が多数の者から順番に当選者を決定する方法)があります。

参議院議員選挙の比例代表選挙は、非拘束名簿式で、投票用紙には候補者または政党名を記入する方式となっています。

国民投票と憲法

日本国憲法は、硬性憲法であるといわれています。憲法改正の要件・手続を厳格な方法で定めているために、このようにいわれます。

憲法第96条で、憲法改正の手続を定めています。国会が、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、憲法の改正を発議し、国民投票で、その過半数の賛成を必要とします。なお、現在はまだ国民投票に関する手続法は制定されていません。つまり、投票権を有するのは誰?過半数の基準は?投票の方法は?などについて、法律で取り決められていないということです。

さて、平成18年度の旧司法試験の論文試験に、つぎのような問題が出題されています。

【憲法】第2問

 A市において,「市長は,住民全体の利害に重大な影響を及ぼす事項について,住民投票を実施することができる。この場合,市長及び議会は,住民投票の結果に従わなければならない。」という趣旨の条例が制定されたと仮定する。

 この条例に含まれる憲法上の問題点について,「内閣総理大臣は,国民全体の利害に重大な影響を及ぼす事項について,国民投票を実施することができる。この場合,内閣及び国会は,国民投票の結果に従わなければならない。」という趣旨の法律が制定された場合と比較しつつ,論ぜよ。

この出題をもとに、「国民投票」について、憲法のおさらいをしてみたいと思います。

まず、憲法の条文上で「国民投票」について定められているのは、第96条【憲法改正の手続】においてのみです。また、第41条【国会の地位、立法権】において、「国会は、国権の最高機関」であるのに、その国会の審議を経ないで、内閣総理大臣が国民投票を実施し、その上、内閣総理大臣が実施した国民投票の結果に内閣及び国会が従わなければならないとすることは、憲法が定める国家機関の役割にズレが生じていると思われます。

そして、第72条【内閣総理大臣の職権】および、第73条【内閣の職務】から、出題文にある「国民投票を実施することができる」のかという疑問も生じます。

なお、憲法前文と第1条【天皇の地位、国民主権】に、主権は国民にあることが定められています。それとともに、憲法前文には「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、」としています。出題文にある「国民全体の利害に重大な影響を及ぼす事項」について、主権者たる国民の意思を問う「国民投票」であっても、その手続法を定めるにあたっては、「国民の厳粛な信託」にこたえうる方法・手順であってほしいものと思います。

第96条[憲法改正の手続]

1 この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

2 憲法の改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体をなすものとして、直ちにこれを公布する。

常会の招集

憲法では、国会の会期について、常会・臨時会・特別会の3種類を定めています。

毎年1回召集されるのが常会で、1月中に召集されます。今年2007年は、1月25日に召集が予定されています。

常会の会期は、150日間。今年2007年は、6月23日までとなります。常会は、衆・参両議院一致の議決により、 1回に限り会期延長ができます。(議決につき衆議院の優先が認められています。)また、常会の会期中に衆議院が解散されたときや、常会の会期中に議員の任期が満限に達したとき、国会は、閉会となります。

ちなみに、臨時会は、

(1)内閣が必要とするとき

(2)衆議院・参議院のいずれかの議院の総議員の 4分の 1以上の要求があるとき

(3)衆議院議員の任期満了による総選挙または参議院議員の通常選挙が行われたとき

に召集されます。

また、特別会は、衆議院の解散による総選挙後に召集されます。

臨時会と特別会は、両議院一致の議決により、 2回まで延長できます。(議決につき衆議院の優先が認められています。)

今年2007年は、参議院議員選挙が行われますので、選挙後、臨時会が招集されることになります。

なお、国会の衆・参両院は、同時活動の原則により、召集も閉会も同時に行われます。参議院議員選挙が行われたからといって、参議院だけ召集されるというわけではないということになります。

さて、今回召集される国会でも、憲法改正の手続法としての「国民投票法案」が、引き続き審議されることにとなっています。今月のブログのテーマは、国会と選挙、憲法改正の手続について、憲法の復習をしていきます。

第52条[常会]

国会の常会は、毎年1回これを召集する。

 

第53条[臨時会]

内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

 

第54条[衆議院の解散後の選挙、特別会の招集、参議院の緊急集会]

1 衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から30日以内に、国会を召集しなければならない。

2 衆議院が解散されたときは、参議院は同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。

3 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後10日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。

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 (2011.08.28 21:00)