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『ファイナンシャル・プランニング』に関するスキルが重点テーマです。また、投資に関連して、『コーポレート・ファイナンス』や『会計』などについてもみていきます。

FP[6]相続・事業承継の最近のブログ記事

遺留分

相続時、相続人のために相続財産の一定部分が法律上保障されています。この一定部分を遺留分といいます。

例えば、被相続人の遺言が、すべての相続財産を複数相続人の中の1人の相続人のみに相続させるという内容であった場合、遺言はもちろん有効ですが、他の相続人は遺留分に基づく減殺請求をすることができる、というものです。

なお、遺留分が認められるのは、兄弟姉妹以外の相続人です。

また、遺留分の額(総額)の割合については、

?直系尊属のみ(父母のみ)が相続人の場合は相続財産の3分の1

?それ以外(配偶者や子、子の代襲相続人がいる)の場合は相続財産の2分の1

となっています。

遺留分が認められる相続人(遺留分権利者)が複数人の場合、それぞれの遺留分権利者の遺留分の割合は、上記の遺留分の総額の割合(総体的遺留分)に対して、それぞれの法定相続分の割合を乗じたものとなります(個別的遺留分)。

このとき、遺留分の認められない兄弟姉妹の法定相続分の割合はないものとして計算することになります。

たとえば、被相続人が、両親(父母)と兄1人で、配偶者や子がないときの遺留分については、「?直系尊属のみ」の場合となり、両親(父母)はそれぞれ6分の1(1/3×1/2)、兄は遺留分なしとなります。

また、被相続人が、父と配偶者のみで、子がないときの遺留分については、「?それ以外」の場合となり、父は6分の1(1/2×1/3)、配偶者は3分の1(1/2×2/3)となります。

次の問題は、平成18年1月の2級ファイナンシャル・プランニング技能検定 学科試験の問題です。なお、この学科試験の全問題は、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会のWebサイト http://www.jafp.or.jp/ 、金融財政事情研究会のWebサイト http://www.kinzai.or.jp/ にて公開されています。

問題52 死亡したAさんの相続人は、配偶者とAさんの兄弟(3人)の合わせて4人であった。Aさんは、公正証書遺言により全財産を配偶者に相続させるとしていた。Aさんの相続人である兄弟の遺留分に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1.兄弟姉妹全体の遺留分は法定相続分(4分の1)と同じ割合であるから、兄弟の各人の具体的な遺留分は、12分の1ずつとなる。

2.兄弟姉妹全体の遺留分は法定相続分の2分の1であるから、兄弟の各人の具体的な遺留分は、24分の1ずつとなる。

3.兄弟姉妹全体の遺留分は法定相続分の3分の1であるから、兄弟の各人の具体的な遺留分は、36分の1ずつとなる。

4.兄弟姉妹には遺留分が認められていないから、兄弟は、配偶者に対して遺留分を主張することができない。

答えは、

もう1問みてみます。平成17年5月の2級ファイナンシャル・プランニング技能検定 学科試験の問題です。

問題54 遺留分に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1.遺留分権利者は、被相続人の配偶者、子および直系尊属であり、子の代襲相続人には遺留分権が認められない。

2.遺留分権利者は、被相続人の生前に家庭裁判所の許可を得ることにより、遺留分の放棄をすることができる。

3.総体的遺留分の割合は、相続人が直系尊属だけの場合は、被相続人の財産の3分の1、その他の場合は2分の1である。

4.遺留分減殺請求権は、相続開始および減殺すべき贈与や遺贈があったことを知ったときから1年間、または相続開始時から10年間、これを行使しないと、時効により消滅する。

答えは、が間違っています。 2の遺留分の放棄、4の遺留分減殺請求権の時効については、記述の通りです。 遺留分減殺請求権は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び贈与(原則として、相続開始前の1年間にしたもの)について認められるものです。

限定承認・単純承認・相続放棄

ファイナンシャル・プランニング技能検定試験の出題から、限定承認単純承認相続放棄についてみてみます。

次の問題は、平成19年5月の2級ファイナンシャル・プランニング技能検定 学科試験の問題です。

なお、この学科試験の全問題は、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会のWebサイト http://www.jafp.or.jp/ 、金融財政事情研究会のWebサイト http://www.kinzai.or.jp/ にて公開されています。

問題54 限定承認に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

1.相続人が数人いる場合における相続の限定承認は、限定承認をする相続人が単独で家庭裁判所へ申述することができる。

2.相続の限定承認は、被相続人の消極財産を限度として、積極財産を相続することである。

3.相続人は、相続があったことを知った時から、原則として3ヶ月以内に限定承認又は放棄をしなかったときは、単純承認をしたものとみなされる。

4.相続人が家庭裁判所へ限定承認の申述をした場合において、相続があったことを知ったときから、10ヶ月以内であれば、限定承認の取り消しをすることができる。

答えは、

相続人は本来、相続債務(消極財産)について無限責任を負うのですが、債務の過大な承継から相続人の利益を守るために、相続財産(積極財産)を限度とする有限責任に転嫁する手段が定められており、これを限定承認といいます。

限定承認をするには、原則として、相続があったことを知った時から、3ヶ月以内に、相続人全員で家庭裁判所に申述しなければなりません

ちなみに、相続放棄は、相続の効果を無条件にすべて拒否するものです。相続の放棄をした者は、その相続に関して初めから相続人でなかったものとみなされます。

相続の放棄をしようとする者は、原則として、相続があったことを知った時から、3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません

相続放棄は単独でできます。

そして、原則として、相続があったことを知った時から、3ヶ月以内に、限定承認も相続放棄もしなかったときは、単純承認、つまり無条件・無制限に承継するものとみなされます。

また、相続財産の全部または一部を処分したときも単純承認したものとみなされます。 そのほか、関連する事項をいくつかあげてみます。

・限定承認または相続放棄の撤回はできません。また、取消しは、一定の事由に該当する場合に限り認められます。

・相続を放棄した者の子は、代襲相続人にはなれません。

法定相続分

法定相続分は、法律によって定められている相続の割合です。民法では、遺言によって相続分が指定されていない場合に適用があります。また、遺言による相続分の指定が一部にとどまる場合、他の相続分について適用があります。

最初に、平成19年1月の2級ファイナンシャル・プランニング技能検定 学科試験の問題をみてみます。なお、この学科試験の全問題は、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会のWebサイト http://www.jafp.or.jp/ 、金融財政事情研究会のWebサイト http://www.kinzai.or.jp/ にて公開されています。

問題52 民法に定める相続分等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1.相続人が配偶者と被相続人の両親の3人である場合、両親の法定相続分はそれぞれ6分の1である。

2.相続人が配偶者と長女の2人である場合において、遺言により長女の相続分を3分の1、配偶者の相続分を3分の2とすることはできる。

3.相続人が配偶者と被相続人の姉の2人である場合において、被相続人の姉が相続の放棄をしたときは、配偶者がすべての財産を相続する。

4.相続人が配偶者、被相続人の孫(相続開始時において死亡している長男の子)および二男の3人である場合、被相続人の孫の代襲相続分は3分の1である。

答えは、が間違っています。

被相続人の孫(相続開始時において死亡している長男の子)の代襲相続分は、長男が受けるべきであった相続分と同じになります。1/2×1/2=1/4 となります。

民法に定められている法定相続分のポイントなどを確認してみます。

配偶者の法定相続分

?他に相続人がないとき、すべて

?他の相続人が子(第一相続人)のとき、2分の1

?子が相続人でなく、他の相続人が直系尊属(第二相続人)のとき、3分の2

?子も直系尊属も相続人でなく、他の相続人が兄弟姉妹(第三相続人)のとき、4分の3

子(第一相続人)の法定相続分

?他の相続人が配偶者のみのとき、2分の1

?配偶者が相続人でないとき、すべて。直系尊属、兄弟姉妹があっても同じ。

※複数人の場合は均等割。ただし、非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の2分の1。

直系尊属(第二相続人)の法定相続分

?他の相続人が配偶者のみのとき、3分の1

?子(第一相続人)が相続人のとき、なし。配偶者が相続人であってもなくても同じ。

?配偶者も子も相続人でないとき、すべて。兄弟姉妹があっても同じ。

※複数人の場合は均等割。

兄弟姉妹(第三相続人)の法定相続分

?他の相続人が配偶者のみのとき、4分の1

?子(第一相続人)が相続人のとき、なし。配偶者が相続人であってもなくても同じ。

?直系尊属(第二相続人)が相続人のときも、なし。配偶者が相続人であってもなくても同じ。

?配偶者も子も直系尊属も相続人でないとき、すべて

※複数人の場合は均等割。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1。

代襲相続

被相続人の子が、相続開始以前に死亡、あるいは相続人となることができない法定の欠格事由に該当するとき、もしくは廃除によって、その相続権を失っているとき、その者の子(被相続人の直系卑属の者に限る)が代襲者となり、相続人となります。これが代襲相続です。

さらに、代襲相続において代襲者となるべき者にも代襲原因(=相続開始以前に死亡、あるいは欠格、もしくは廃除)があるときは、その代襲者となるべき者の子が相続人となります。これが再代襲相続です。

再代襲相続は、代襲原因がある場合に、直系卑属が順次、代襲者となって相続人となります。

なお、相続の放棄をした者の代襲相続はありません。 代襲相続は、被相続人の兄弟姉妹についても認められていますが、兄弟姉妹の子までに限られています。つまり、兄弟姉妹の再代襲相続は認められていません。

相続税の計算に関して、平成19年9月に実施されたファイナンシャル・プランニング技能検定試験の2級学科試験の過去問をみてみます。過去問題は、きんざいの Webサイト http://www.kinzai.or.jp/ 、日本FP協会の Webサイト http://www.jafp.or.jp/ にて公開、ダウンロードができます。

問題 55

相続税の計算における相続財産に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 .相続人が受け取った、みなし相続財産とされる死亡保険金の合計額のうち、「5,000千円×法定相続人の数」に相当する金額までは非課税財産とされる。

2.相続の放棄をした者であっても、受け取った死亡保険金または退職手当金についての相続税の非課税財産の規定の適用を受けることができる。

3.死亡保険金に対する非課税限度額の計算上の法定相続人の数とは、法定相続人のうちに相続の放棄をした者があったとしても、その相続の放棄がなかったものとした場合の相続人の数である。

4.被相続人の死亡後3年以内に支給が確定した退職手当金は、相続財産とみなされて相続税の課税対象となる。

誤っている肢は、2 となります。

みなし相続財産とは、相続によって取得した財産ではないものの、相続財産と同様とみられる財産のことで、生命保険金死亡退職金などがあげられます。そして、生命保険金のうち、「500万円×法定相続人の数」が相続税の非課税対象となり、死亡退職金のうち、「500万円×法定相続人の数」も相続税の非課税対象となります。

なお、相続税法上、相続税を計算する際の法定相続人の数は、相続放棄者があっても放棄がないものとします。しかし、相続放棄者は、上記の非課税の適用を実際に受けることはできません。

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 (2011.08.28 21:00)