コンピュータネットワークの基礎 ④ ネットワークケーブルとコネクタ
ツイストペアケーブルは、LAN配線で最も一般的なケーブルです。内部にはペア状に撚られた銅線が含まれており、電磁ノイズの影響を低減する効果があります。
- UTP(Unshielded Twisted Pair):非シールド型で、コストが安く、一般家庭やオフィスで広く利用されています。
- STP(Shielded Twisted Pair):シールドで覆われており、外部からのノイズ耐性がUTPより高く、工場や医療施設などノイズが多い環境での使用に適しています。
ケーブルの内部構造:単線とより線
ツイストペアケーブルの内部銅線は、その構造によって「単線(Solid)」と「より線(Stranded)」に分けられます。
- 単線(Solid):1本の太い銅線で構成されており、長距離の配線や壁内配線など、一度設置したら動かさない場所での使用に適しています。信号の安定性が高く、ノイズに強いという特徴があります。ケーブル自体は硬めです。
- より線(Stranded):細い銅線を複数本撚り合わせて構成されており、柔軟性が高く、頻繁に抜き差ししたり、取り回しが必要な場所(PC周りなど)での使用に適しています。短距離での利用が推奨され、単線に比べてノイズ耐性は若干劣ります。
ツイストペアケーブルは、通信速度や周波数帯域に応じて、カテゴリ(Cat)で分類されます。カテゴリ番号が大きいほど、より高速な通信と広い周波数帯域に対応します。
- Cat5e:最大1000Mbps(1Gbps、ギガビットイーサネット)に対応。一般家庭や小規模オフィスで広く使われています。
- Cat6:最大10Gbpsに対応(ただし、55mまでの短距離)。より高周波数に対応し、ギガビットイーサネット以上の速度が必要な環境に適しています。
- Cat6A:Cat6の強化版で、10Gbps通信を最大100mまで可能にします。安定性が高く、将来的な高速化を見据えた配線に適しています。
- Cat7・Cat8:それぞれ最大10Gbps(Cat7)、25Gbps/40Gbps(Cat8)に対応し、データセンターやサーバー間の接続など、非常に高速で安定した通信が求められる環境で使用されます。シールド(STP)が必須となります。
イーサネット接続において、機器の種類に応じてケーブル内の配線順序が異なります。
- ストレートケーブル:異なる種類の機器同士を接続する際に使用します(例:PCとスイッチングハブ、ルーターとPC)。ケーブル内の各ピンが両端で同じ順序に接続されています。
- クロスケーブル:同種の機器同士を直接接続する際に使用します(例:PCとPC、スイッチングハブ同士)。ケーブル内の一部のピンが、送受信を入れ替えるように交差して接続されています。
- Auto-MDI/MDI-X:近年では、多くのネットワーク機器がこの機能に対応しており、接続されたケーブルの種類(ストレートかクロスか)を自動的に判別し、内部で通信を調整するため、ケーブルの区別を意識する必要が少なくなっています。
光ファイバーケーブルは、電気信号ではなく光信号を用いてデータを伝送するケーブルです。電磁ノイズの影響を受けず、長距離かつ高速な通信に適しています。主に基幹ネットワークやデータセンター、FTTH(Fiber To The Home)などで利用されます。
- シングルモード光ファイバー(SMF):コア(光が通る中心部)が非常に細く、1種類の光信号しか伝送しないため、光の分散が少なく、長距離伝送(数km~数十km)に適しています。通信事業者や基幹ネットワーク、長距離のデータセンター間接続で用いられます。
- マルチモード光ファイバー(MMF):コアが比較的太く、複数の光信号を伝送できるため、短・中距離(数百メートル以内)の伝送に適しています。構内LANやデータセンター内のラック間接続などで広く利用されています。
同軸ケーブルは、中心導体を誘電体で覆い、さらにその外側を外部導体(シールド)で覆った構造のケーブルです。
かつてのイーサネット(10BASE-2など)で広く使用されていましたが、現在はLAN配線ではほとんど使われていません。TVアンテナやケーブルテレビ、監視カメラシステムなどで現在も利用されています。
ツイストペアケーブルで最も広く使われるコネクタです。8本のピンで構成されており、イーサネットの標準コネクタとして世界中で利用されています。差し込み口の形状もRJ-45型で統一されていますが、対応するカテゴリ(Cat)によって性能が異なります。
4-2. SC / LCコネクタ(光ファイバー用)
光ファイバーケーブルの端子として使用されます。種類によって形状や特徴が異なります。
- SCコネクタ(Subscriber Connector / Standard Connector):四角い形状で、押し込み式で簡単に接続・取り外しが可能です。業務用で広く使用されており、安定した接続が可能です。
- LCコネクタ(Lucent Connector / Little Connector):小型で、高密度な光ファイバー装置やブレードサーバーなど、省スペース性が求められる環境で普及しています。SFPなどの光トランシーバーに多く採用されています。
- その他:FCコネクタ(ねじ込み式、高精度な接続)、STコネクタ(バヨネット式、初期のLANで利用)などもありますが、現在はSCやLCが主流です。
古いイーサネット(10BASE-2など)やビデオ機器、測定器などで使用されていた、ねじ込み式またはバヨネット式の同軸ケーブルコネクタです。
ネットワークケーブルを敷設する際には、性能を最大限に引き出すためにいくつかの注意点があります。
- 長さの制限:ツイストペアケーブル(UTP/STP)は、規格上、最大100m(ケーブル長90m+両端パッチコード各5m)とされています。これを超えると信号の減衰や通信速度の低下が発生しやすくなります。
- 折り曲げ厳禁:ケーブルを急角度で折り曲げると、内部の銅線が断線したり、光ファイバーが損傷したりして、性能低下や通信不良の原因となります。特に光ファイバーは非常にデリケートです。
- 結線順序(T568A / T568B):RJ-45コネクタの結線には、TIA/EIA-568-A(T568A)とTIA/EIA-568-B(T568B)という2つの国際規格があります。日本ではT568Bが広く採用されています。ストレートケーブルの場合は両端を同じ規格で結線し、クロスケーブルの場合は両端を異なる規格で結線します。
- PoE(Power over Ethernet)対応:IP電話や無線LANアクセスポイント、ネットワークカメラなど、LANケーブルを通じて電力も供給するPoE対応機器を使用する場合は、PoE対応のケーブルやPoEインジェクター、PoE対応スイッチが必要になります。ケーブルの品質が悪いと電力供給が不安定になることがあります。
- ノイズ源からの分離:電源ケーブルや蛍光灯など、電磁ノイズを発生させる機器からネットワークケーブルを離して配線することで、通信の安定性を向上させることができます。
- 耐久性:コネクタのツメは折れやすいため、抜き差しが多い場所ではツメ折れ防止カバー付きの製品を選ぶと良いでしょう。また、屋外で使用する場合は、防水・耐候性に優れた屋外用ケーブルを選びましょう。
- ネットワークケーブルは、通信方式や速度、設置環境(距離、ノイズの有無、可動性など)により、適切な種類(カテゴリ、単線/より線、UTP/STP)を選定する必要があります。
- コネクタもケーブル種別に応じて適切に取り付け・管理することが重要です。特にRJ-45の結線や光ファイバーコネクタの取り扱いには注意が必要です。
- ネットワークの物理層(ケーブルやコネクタ)におけるトラブルは、通信全体に大きな影響を及ぼすため、正確な知識を持ち、適切な製品を選び、丁寧な配線を行うことが安定したネットワーク運用の鍵となります。