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ゼロトラスト(Zero Trust)は、近年あらゆる業界で注目されるセキュリティ概念ですが、 金融においてはその重要性が他業界と比べて圧倒的に高く、 かつ “金融ならではの意味” を持ちます。
本章では、境界防御モデルがなぜ通用しなくなったのか、 そしてゼロトラストが金融でどのような価値を持つのかを整理します。
かつての金融システムは、
という明確な前提のもとで設計されていました。 ファイアウォールや VPN を境界に配置し、 「境界の内側に入れば信頼する」 というモデルが長年主流でした。
しかし現在、この前提は完全に崩れています。その背景には次の 4 つがあります。
データやアプリケーションが社外に存在し、「社内ネットワーク」という概念自体が意味を持たなくなりました。
外部サービスとの常時接続が当たり前となり、攻撃対象領域(Attack Surface)が大幅に拡大しました。
物理的に“社内にいるかどうか”は、もはや信頼の判断基準になりません。
情報の入力先が外部サービスとなり、新たなデータ流出経路が生まれました。
これらの変化により、ネットワーク中心の防御は限界を迎え、 セキュリティの軸は ネットワーク → ID 中心 へと完全に移行しました。
ゼロトラストは「何も信用しない」という極端な思想だと誤解されがちですが、本質はそうではありません。
Zero Trust = 信用を“前提にする”のではなく、“毎回検証する”モデル
つまり、
とみなすのではなく、
といった“状況(コンテキスト)”に基づき、アクセスのたびに検証します。
これにより境界モデルが抱えていた 「内部不正に弱い」という致命的欠点 を克服できます。
技術としてのゼロトラストではなく、金融の現場での“意味”として理解することが重要です。
金融取引で「この人は誰か? 信用できるか?」と与信判断するように、 ID 管理はアクセス前にユーザーを識別し、 「アクセスの与信判断」 を行います。
パスワードだけの認証は「担保なしの貸付」に近く危険です。 MFA によって “担保付きの信用” に引き上げます。
金融では「証跡がない=リスク」。 ログは “監査可能性” を担保する仕組みです。
結論:Zero Trust は「すべてのアクセスを信用取引として扱うモデル」
ゼロトラストが金融で不可欠とされる理由は、 金融事故の最大要因が内部不正だから です。
内部者は、
ため、外部攻撃者より検知が難しい存在です。
ゼロトラストは次の仕組みにより内部不正を抑止します:
金融実務でゼロトラストを“使えるもの”にするには、次の 3 つが鍵です。
必要な権限だけを付与し、定期的に棚卸しすることで「権限過剰」を排除します。
ログイン時だけでなく、行動・IP・場所など“状況”に応じて検証し続けます。
全ログを統合し相関分析することで、異常行動を早期に検知します。
ゼロトラストの本質:
この前提を理解すると、次章の Cloud Native(止めない設計) や DevSecOps(説明責任の設計) と、ゼロトラストがどのように組み合わさるべきかが明確になります。
意思決定を高度化する
信用を守り、説明責任を果たす
止めない・守る・説明できる基盤を作る
金融をデータとコードで実装する
知識を価値に変え、意思決定できる人材へ