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贈与税と相続税の基本的な仕組み(課税財産、非課税財産、基礎控除、配偶者の税額軽減など)を概略レベルで理解します。特に、贈与税と相続税の非課税枠や特例(相続時精算課税制度、小規模宅地等の特例、生命保険の非課税枠など)は計算問題にもつながるので、数値を伴って理解することが重要です。遺言や遺産分割、相続対策における保険の活用など、全体の流れを押さえましょう。
生前中に自分の財産を相手に無償で与えること。贈与は契約であり、贈与者と受贈者の意思表示が一致することで成立する。また、贈与は相続対策や節税対策の一環としても活用される。
贈与者と受贈者の合意によって成立する契約。原則として書面がなくても口頭で成立するが、履行前に書面がない場合は贈与者が撤回することができる。書面がある場合は原則として撤回不可。
単純贈与: 無条件に財産を贈与すること。もっとも一般的な贈与形態。
定期贈与: 定期的に継続して財産を贈与すること。実際には一括贈与とみなされる場合がある。
負担付贈与: 受贈者が一定の義務(例:介護など)を負うことを条件に贈与すること。
死因贈与: 贈与者の死亡によって効力が生じる贈与。相続と類似するが契約に基づく点が異なる。
家族関係や財産に関する民法の規定。親族の範囲は六親等内の血族、三親等内の姻族までとされ、婚姻や離婚の効果、直系血族や兄弟姉妹に対する扶養義務などが定められている。
財産をもらった人(受贈者)。贈与税は原則として受贈者が納税義務を負い、贈与を受けた年の翌年3月15日までに申告・納付を行う必要がある。
本来の贈与財産: 贈与契約により取得した財産。現金、不動産、有価証券など。
みなし贈与財産: 贈与とみなされる財産(例:極端に低い価額で財産を譲り受けた場合や名義変更のみで実質的な財産移転があった場合)。
贈与税が課されない財産(例:生活費や教育費として必要と認められるもの、香典)。ただし、生活費や教育費であっても、使途が明確でない預貯金などは課税対象となることがある。
基礎控除: 年間110万円までの贈与は非課税(暦年課税制度)。
配偶者控除(おしどり贈与): 婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産またはその取得資金を贈与した場合に、2,000万円まで非課税となる特例(基礎控除と併用可能)。
相続時精算課税制度: 60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に適用可能。累計2,500万円まで贈与税が非課税で、相続時に合算して相続税を計算。
各種贈与の特例: 教育資金の一括贈与(1,500万円まで非課税)、結婚・子育て資金の一括贈与(最大1,000万円まで非課税、ただし期限・要件あり)。
人が死亡したときに開始する。相続開始の時点で相続人の権利義務が発生し、同時に相続税の課税関係も発生する。死亡日が相続税の計算における基準日となる。
民法で定められた相続する権利を持つ人の範囲と優先順位。配偶者は常に相続人となり、他の相続人は以下の順位で決まる。
第1順位:子(代襲相続人含む)
第2順位:直系尊属(父母など)
第3順位:兄弟姉妹(その代襲相続人として甥・姪まで)
それぞれの順位で該当者がいない場合に次順位が相続人となる。
相続人となるべき子が、相続開始以前に死亡している場合に、その子(孫)が代わりに相続すること。兄弟姉妹の代襲もあり、その場合は甥・姪が相続人となる(再代襲は兄弟姉妹では不可)。
遺言書による分割、遺産分割協議、家庭裁判所による調停や審判などの方法がある。協議が成立しない場合、法定相続分に従って分割されることもある。
相続人が相続開始を知った日から3か月以内に選択する必要がある。
単純承認: すべての財産・負債を引き継ぐ。
限定承認: 相続財産の範囲内でのみ負債を引き継ぐ。
相続放棄: 一切の財産・債務を引き継がない。
限定承認と相続放棄は家庭裁判所への申述が必要。
方式: 遺言には主に以下の3つの方式がある。
自筆証書遺言: 遺言者が全文、日付、氏名を自書し、押印する。2020年7月以降は財産目録の一部にパソコン作成等も可。
公正証書遺言: 公証人が作成する遺言。証人2名の立会いが必要で、最も確実な方式とされる。
秘密証書遺言: 内容を秘密にできるが、利用頻度は少ない。方式不備による無効となるリスクが高いため注意。
要件: 各方式ごとに定められた法律上の要件を満たしている必要がある。不備があると無効となる。
自筆証書遺言では、本人の自書と日付・署名・押印が必須。
公正証書遺言では、遺言者の口述と公証人の筆記、証人2名の立会いが必要。
効力: 遺言により、法定相続に優先して財産の分配が可能。遺言執行時に法的拘束力を持つ。
遺留分を侵害する内容であっても、受遺者が受け取る権利は原則として有効(ただし遺留分侵害額請求の対象となる)。
執行: 遺言の内容を実現すること。必要に応じて遺言執行者が選任される。
執行者がいない場合でも相続人が協力して執行できるが、第三者による執行のほうが円滑なケースが多い。
撤回: 遺言者はいつでも自由に遺言を撤回・変更できる。後の遺言が前の遺言に優先する。
矛盾する内容がある場合は、後の遺言が優先して適用される。
自筆証書遺言書保管制度: 自筆証書遺言を法務局が保管する制度(2020年7月開始)。
家庭裁判所の検認が不要となる。
保管には本人による申請が必要(代理不可)。
法務局で形式審査がされるが、内容の有効性は審査されない。
兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる、遺言等によっても奪えない最低限の相続分。
・直系尊属のみの場合:遺留分=法定相続分の1/3
・それ以外:法定相続分の1/2。
遺留分侵害があった場合は、遺留分侵害額請求(旧:減殺請求)が可能。
被相続人の建物に無償で住んでいた配偶者が、一定の期間そのまま住み続けることができる権利。
・配偶者短期居住権: 原則として6か月間は無条件で居住可能。
・配偶者居住権: 遺産分割や遺言によって長期間の居住が可能になる制度で、評価額を抑えて取得できる。
相続人以外の親族が、無償で被相続人の療養看護や事業支援などを行い、財産の維持・増加に貢献した場合に、相続人に対して金銭を請求できる制度。
平成30年の民法改正で新設された。
相続によって財産を取得した人に相続税の納税義務が生じる。
国内に住所がある被相続人から相続した場合、取得者の住所の有無にかかわらず課税対象となる。
一定の条件下では、相続人でない人(遺贈による取得者など)も納税義務者となる。
※相続税は被相続人単位でなく、財産を取得した個人ごとに課税される。
本来の相続財産: 現金、預貯金、不動産、有価証券、車両、宝石、書画骨とう、未収金など、被相続人の所有していた資産。
みなし相続財産: 民法上は相続財産ではないが、税法上は相続とみなして課税される財産。代表例は死亡保険金や死亡退職金。ただし一定額は非課税(下記参照)。
相続開始前3年以内の贈与財産: 被相続人から相続人に対して行われた生前贈与で、相続開始前3年以内のものは「持ち戻し」として課税対象となる。
相続時精算課税制度に係る贈与によって取得した財産: 生前贈与時には贈与税を申告・納付しているが、相続開始時に相続財産に加算して相続税を再計算する。
死亡保険金・死亡退職金: 相続人が受け取る場合、「500万円 × 法定相続人の数」までが非課税。人数には相続放棄した者も含まれる。
弔慰金: 被相続人が業務上の死亡である場合は給与の3年分、業務外死亡は給与の半年分までが非課税。それを超える部分は課税対象。
相続税の計算において、被相続人の債務(借入金、未払金、未払税金など)を相続財産から控除できる。
控除できるのは相続開始時点で確定している債務に限られ、保証債務など将来の不確実な負債は対象外となる場合がある。
被相続人の死亡に伴って発生した葬儀費用は、相続財産から控除できる。
控除可能な例:葬儀代、火葬料、遺体搬送費、読経料、戒名料など。
控除不可な例:香典返し、法要費用、墓地・墓石の購入費など。
遺産に係る基礎控除額: 「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」。この金額までは相続税が課されない。
課税遺産総額: 正味の遺産額から基礎控除額を差し引いた残額。これに税率を適用して相続税総額を計算。
配偶者の税額軽減: 配偶者が相続した財産のうち、「1億6,000万円」と「法定相続分」のいずれか多い額までが非課税。申告すれば適用可能。
2割加算: 被相続人の配偶者、子、直系尊属以外(例:兄弟姉妹、孫など)が財産を取得した場合、算出税額の2割が加算される。
贈与税額控除: 相続時精算課税制度で生前贈与された財産にかかる贈与税は、相続税額から控除可能。
未成年者控除: 相続開始時に未成年である相続人には、「(20歳-相続開始時の年齢) × 10万円」が相続税から控除される。
相続税を期限内に現金で納めることが困難な場合、一定の要件を満たせば不動産や有価証券などの「物」で納めることができる制度。
原則、延納(分割納付)でも納付が困難な場合に限られ、事前に税務署の承認が必要。
物納の順位は「国債・地方債 → 不動産 → 株式」の順。
相続税や贈与税を算定する際には、財産評価基本通達に基づいて、相続開始時の時価を基準に評価する。
財産の種類ごとに評価方法が細かく定められており、実務では通達に沿って評価するのが一般的。
預貯金:相続開始日の残高+既経過利息。
公社債:発行条件に応じた評価(市場価格、利付・割引債など)
生命保険契約に関する権利:解約返戻金相当額を基準に評価。
上場株式: 相続発日・その前後の一定期間の終値平均など、複数基準日のうち最も低い価額を採用。
取引相場のない株式: 類似業種比準価額方式(企業規模が大きい場合)や純資産価額方式(小規模企業向け)で評価。事業承継税制適用時は特例も。
路線価方式: 市街地における評価方法。国税庁が公表する「路線価」に地積を乗じて評価。
倍率方式: 路線価が設定されていない地域で適用。固定資産税評価額に地域ごとの倍率をかけて算出。
借地権:路線価に借地権割合を乗じて評価。
貸宅地:借地権分を控除した価額。
貸家建付地:自用地としての価額から貸家による制約分(借家権割合 × 賃貸割合)を控除して評価。
一定の要件を満たす場合、宅地の評価額を最大80%まで減額可能。
・居住用(330㎡まで):80%減額
・事業用(400㎡まで):80%減額
・貸付事業用(200㎡まで):50%減額
相続税額を大幅に圧縮できる重要な特例。
相続税評価額(路線価評価など)は、市場での実勢価格(時価)よりも低いことが多いため、節税上の効果がある。
ただし、売却時には時価で譲渡所得が課税されるため、税務上の取り扱いに注意が必要。
相続税対策として、生前に財産を移転することで相続財産を減らす手法。
贈与によって計画的に財産を移転し、相続時の課税財産を圧縮することができる。
暦年贈与: 年間110万円以下の贈与は非課税(基礎控除)であり、複数年にわたる分散贈与が有効。
配偶者控除: 婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産またはその取得資金を贈与する場合、基礎控除に加えて2,000万円まで非課税(通称「おしどり贈与」)。
住宅取得等資金の贈与の特例: 父母・祖父母からの住宅取得資金の贈与について、一定の条件下で最大1,000万円(省エネ住宅は1,500万円)まで非課税となる特例(※年度ごとに非課税限度額が変動)。
相続財産の評価額を下げることによって、相続税の課税価格そのものを圧縮するための手法。
不動産の購入: 現金よりも評価額が下がりやすい不動産に資産を転換することで、課税価格を圧縮。
貸家建付地による評価減: 賃貸物件の土地は、借家権や借地権の影響で自用地としての評価額が下がる。
定期借地権の活用: 借地権が設定された土地は、自用地に比べて評価が低くなる。
小規模宅地等の特例: 上記で説明した80%・50%評価減の特例の活用も、有効な課税価格対策。
相続税の納税資金をどのように確保するかに関する対策。相続税は原則、現金一括で納付が必要なため、事前準備が重要。
延納: 一定の条件を満たせば分割払いが可能。原則5年以内だが、不動産を含む場合は最長20年まで可(利子税が課される)。
物納: 現金納付・延納が困難な場合に限り、土地・建物・有価証券などを税務署に納付。物納には優先順位と厳しい審査あり。
売却: 相続財産の一部を売却して納税資金を捻出する方法。譲渡所得税が発生する可能性あり。
資産の組み換え: 現金化しやすい資産(流動性資産)への換価や、収益性の高い不動産への投資によって納税資金を確保する準備も重要。
相続人間でのトラブルを避け、円満かつ円滑な相続を実現するための準備。
遺言書の作成: 遺言書があることで、法定相続分にとらわれず、財産の配分を明確に指定できる。特に不動産の相続では有効。
分割容易資産への変換: 不動産や同族株式など分けにくい資産を、現金・上場株などに転換しておくことで分割が容易になる。
代償分割: 特定の相続人が財産(例:不動産)を取得し、他の相続人に代償金を支払うことで公平性を確保。あらかじめ資金準備が必要。
遺産分割対策: 生命保険金は「受取人固有の財産」であり、遺産分割の対象外となるため、特定の相続人に確実に現金を渡せる。納税資金や代償分割資金として活用されることも多い。
相続税の軽減対策: 生命保険金には「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠がある。現金よりも有利に財産を移転できる。
その他の活用法: 被相続人が加入者・契約者・被保険者となり、相続人を受取人にする形が一般的。事前に設計を誤ると、贈与税や所得税の対象になる場合もあるため注意が必要。