1. FPと倫理
ファイナンシャル・プランニングの社会的ニーズと役割
ファイナンシャル・プランニング(FP)とは、個人・家族の生涯にわたるライフプランの実現に向けて、財務的な目標設定・資金計画の立案・実行支援・定期的な見直しを総合的に行うプロセスです。
2. FPと関連法規
FPと税理士法
税理士法では、税理士でない者が税務代理・税務書類の作成・税務相談を業として行うことを禁じています(無償であっても有償であっても同様)。FPはこの規定に注意して業務を行う必要があります。
-
税理士業務(税理士でなければできないこと)
税務代理:税務署等への申告・申請・不服申立て等を顧客に代わって行うこと。
税務書類の作成:確定申告書・相続税申告書等の税務書類を作成すること。
税務相談:顧客の個別具体的な税務上の質問に答えること(個別・具体的な税額計算を含む)。
-
FPが行えること(税理士法に抵触しない行為)
FP試験ポイント:「個別の顧客の具体的な税額計算・税務書類の作成は税理士でなければできない」「一般的な税制の説明はFPでも可能」の区別が最頻出です。
FPと保険業法
保険業法では、保険商品の募集(勧誘・説明・申込の取次ぎ)は内閣総理大臣の登録・授権を受けた保険募集人・保険仲立人でなければ行えません。FPが保険の募集を行う場合は保険募集人としての登録が必要です。
FPと金融商品取引法
金融商品取引法は、有価証券(株式・債券・投資信託等)の売買・投資助言・投資運用業等を規制する法律です。これらの業務を行う場合は金融商品取引業者としての内閣総理大臣への登録が必要です。
FP試験ポイント:「有価証券の投資に関する個別・具体的な助言(投資顧問契約に基づく有償の助言)は投資助言業の登録が必要」「一般的な説明はFPでも可能」の区別が頻出です。
FPと弁護士法
弁護士法では、弁護士でない者が法律事件に関する法律事務(法律相談・法律書類の作成・代理等)を業として行うことを禁じています(非弁行為)。FPは法的問題については弁護士に相談を促すことが重要です。
-
弁護士でなければできないこと(法律事務)
法律相談:法的な権利・義務・紛争解決に関して個別具体的に回答すること。
法律書類の作成:契約書・遺言書(公正証書遺言の原案等)・内容証明郵便等の法律書類を業として作成すること。
法的手続きの代理:訴訟・調停・交渉等の代理を行うこと。
-
FPが行えること(弁護士法に抵触しない行為)
FP試験ポイント:「遺産分割協議書の作成代行・遺言書の法的有効性の判断・相続人間の紛争の代理交渉は弁護士でなければできない」「一般的な相続の知識提供はFPでも可能」の区別が頻出です。
FPとその他の関連法規
FPの業務に関連する主なその他の法規です。
-
社会保険労務士法
社会保険労務士(社労士)でない者が、労働社会保険諸法令に基づく申請書類の作成・提出代行・相談・指導を業として行うことは禁止されています。
FPは社会保険・労働保険の一般的な説明は行えますが、具体的な申請書類の作成・提出代行は社労士でなければできません。
-
宅地建物取引業法
宅地・建物の売買・交換・賃借の媒介・代理・取引を業として行う場合は宅地建物取引業者としての免許が必要です。不動産の購入・売却のアドバイスをする際は、具体的な取引の媒介・代理は免許業者に任せる必要があります。
-
個人情報保護法
FPは業務上、顧客の収入・資産・家族構成・健康状態などの個人情報を取り扱います。個人情報保護法に基づき、利用目的の明示・安全管理措置・第三者提供の制限などが義務づけられています。要配慮個人情報(病歴・障害・犯罪歴等)の取得には原則として本人の同意が必要です。
-
消費者契約法・金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律(金融サービス提供法)
消費者契約法:事業者が消費者に対して不実告知・断定的判断の提供・不利益事実の不告知等を行った場合、消費者は契約を取り消すことができます。
金融サービス提供法(旧金融商品販売法):金融商品の販売業者等は、顧客に対してリスク等の重要事項を説明する義務があります(説明義務違反があった場合に損害賠償責任を負う)。金融サービス仲介業として銀行・証券・保険を一元的に仲介できる資格(2021年〜)も設けられています。
FP試験ポイント:「社労士でなければ社会保険の申請書類作成・提出代行はできない」「宅建業の免許なく不動産取引の媒介はできない」「個人情報の取扱いには個人情報保護法が適用される」の3点が頻出です。
3. ライフプランニングの考え方・手法
ライフプランニングの目的と効用
ライフプランニングとは、人生の各ステージにおける生活目標を明確にし、その実現に必要な資金計画を立案・実行するプロセスです。将来の収支を可視化することで、今からどのような準備をすべきかを明らかにします。
-
主な効用
目標の明確化:住宅取得・子どもの教育・老後生活など、ライフイベントにかかる費用と時期を把握できます。
資金不足の早期発見:将来の収支計画を作成することで、資金不足が発生する時期を事前に把握し対策を講じることができます。
優先順位の決定:限られた収入の中で、何を優先して資金を準備するかの判断基準となります。
各ライフステージにおける一般的テーマとライフステージ別資金運用
人生を就学前・学齢期・社会人・子育て・老後などのライフステージに区分し、各段階での主要な財務的テーマを把握することがライフプランニングの出発点です。
-
主なライフステージと財務テーマ
独身期(就職〜結婚前):生活費の自立・緊急予備資金の確保・資産形成の開始(iDeCo・NISA等の活用)。
新婚期・子育て期:住宅取得資金の準備・生命保険の見直し・教育資金の積立開始。収入に対する支出圧力が高い時期。
子独立後・老後準備期:住宅ローンの完済・老後資金の本格的な積立・相続対策の開始。
退職後(老後):年金収入・資産の取り崩し管理・医療・介護費用の準備・相続・贈与の実行。
-
ライフステージ別の資金運用方針
若い時期は長期運用が可能なため相対的にリスクを取りやすい(株式等の割合を高める)。老後に近づくにつれてリスク性資産の割合を下げ、安全性・流動性を高める資産配分に移行するのが基本的な考え方です。
-
ライフプラン上の各種統計数値
平均寿命・健康寿命・合計特殊出生率・世帯数の推移などの統計数値は、ライフプランを策定する際の前提となります。平均寿命(0歳の平均余命)だけでなく、健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)との差(約10年)が老後の医療・介護費用を見積もる際の重要な参考値となります。
顧客情報等各種の情報の収集・把握の方法
ライフプランの策定に先立ち、顧客の現状を正確に把握することが必要です。定量的情報と定性的情報の両方を収集します。
-
定量的情報(数値化できる情報)
収入・支出・資産・負債・保険の内容(保険料・保障額)・年金加入記録・住宅ローン残高など。
-
定性的情報(価値観・目標等)
家族構成・ライフイベントの希望(住宅取得・教育・老後の生活水準等)・リスク許容度・価値観・健康状態など。
-
情報収集の手段
ヒアリング(面談)・質問票・関係書類(源泉徴収票・確定申告書・保険証券・預金通帳等)の収集・分析。個人情報保護法に基づき、利用目的を明示の上で取得します。
可処分所得の計算
可処分所得とは、実際に自由に使える手取り収入のことです。キャッシュフロー表の「年間収入」の欄に記入する基礎数値となります。
FP試験ポイント:「可処分所得=年収-(所得税+住民税+社会保険料)」の計算は毎回出題されます。健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料を合計した社会保険料の控除を忘れずに。
ライフイベント表・キャッシュフロー表の作成
ライフプランの策定に使用する2つの主要なツールです。
-
ライフイベント表
家族全員の将来のライフイベント(進学・就職・結婚・住宅取得・退職等)を時系列に一覧化した表。各イベントの発生時期と概算費用を記入します。キャッシュフロー表作成の前提となります。
-
キャッシュフロー表の構成と作成手順
将来の各年の収入・支出・収支・貯蓄残高を一覧にした表。通常5〜10年先まで作成します。
①年間収入欄:可処分所得・その他収入(賃料・配当等)を記入。
②年間支出欄:基本生活費・住宅ローン返済額・教育費・保険料等を記入。
③年間収支:年間収入-年間支出。
④貯蓄残高:前年残高×(1+運用利率)+当年収支。
-
キャッシュフロー表の数値の修正
物価変動(インフレ率)・収入の伸び率・運用利率を考慮して将来の数値を修正します。
変動率を使った将来価値の計算:
・収入・支出の将来値=現在の値×(1+変動率)n(n年後)
・貯蓄残高の計算:前年残高×(1+運用利率)+当年収支
例:現在の年間支出300万円が毎年1%上昇する場合、3年後の支出:300万円×1.013≒309万円
個人のバランスシートの作成
個人のバランスシート(純資産計算表)とは、一定時点における個人の資産・負債・純資産の状況を整理した表です。現在の財務状態を把握するために作成します。
-
バランスシートの構成
資産の部:現金・預貯金・有価証券・不動産・生命保険の解約返戻金など。時価で記入。
負債の部:住宅ローン残高・カードローン残高・その他借入金など。残高で記入。
純資産:資産合計-負債合計。正であれば正味財産がある状態。
-
バランスシート作成の注意点
FP試験ポイント:「不動産は時価で記入」「生命保険は解約返戻金を資産に計上」は頻出の引っかけポイントです。
必要保障額の計算
必要保障額とは、世帯主が死亡した場合に遺族が必要とする生活費・教育費等の総支出から、遺族が受け取れる収入(遺族年金・既存の保険金等)を差し引いた不足額のことです。この金額が生命保険で用意すべき保障の目安となります。
FP試験ポイント:遺族の生活費は「現在の生活費×0.7(現在の生活水準の7割)」を使う場合が多いです。遺族年金の受給有無・住宅ローン残高(団信で完済の場合は支出に含めない)の取り扱いも問われます。
6つの係数の意味と活用
ライフプランの資金計算に使う6種類の係数は、金利(利率)・期間・現在価値・将来価値・年金(一定期間の定期的な積立・取崩し)の関係を計算するための係数表です。
-
①終価係数(しゅうかけいすう)
現在の一定金額が将来いくらになるかを求める係数。
使い方:「現在100万円を年利2%で○年間運用すると?」→ 100万円×終価係数
公式:(1+r)n (r:年利率、n:期間)
-
②現価係数(げんかけいすう)
将来の一定金額を受け取るために、現在いくら必要かを求める係数(終価係数の逆数)。
使い方:「○年後に1,000万円必要な場合、現在いくら用意すれば?」→ 1,000万円×現価係数
公式:1÷(1+r)n
-
③年金終価係数(ねんきんしゅうかけいすう)
毎年一定金額を積み立てた場合、将来いくらになるかを求める係数。
使い方:「毎年100万円を年利2%で○年間積み立てると?」→ 100万円×年金終価係数
-
④減債基金係数(げんさいききんけいすう)
将来の目標額を積み立てるために、毎年いくら積み立てればよいかを求める係数(年金終価係数の逆数)。
使い方:「○年後に1,000万円貯めるために、年利2%なら毎年いくら積み立てれば?」→ 1,000万円×減債基金係数
-
⑤資本回収係数(しほんかいしゅうけいすう)
現在の一定金額を取り崩す場合(または借入金を返済する場合)に、毎年(毎月)いくら受け取れるか(または返済するか)を求める係数。
使い方:「退職金2,000万円を年利2%で○年間取り崩すと毎年いくら受け取れる?」「住宅ローンの毎月返済額は?」→ 金額×資本回収係数
-
⑥年金現価係数(ねんきんげんかけいすう)
毎年一定金額を受け取るために、現在いくら必要かを求める係数(資本回収係数の逆数)。
使い方:「年利2%で毎年100万円を○年間受け取るには、今いくら用意すれば?」→ 100万円×年金現価係数
FP試験ポイント:6係数の使い分けは「何を求めるか」で決まります。「現在の一定額→将来:終価係数」「将来の目標額→現在:現価係数」「毎年積立→将来:年金終価」「将来目標→毎年積立:減債基金」「現在の資金→毎年取崩し:資本回収」「毎年受取→現在:年金現価」と整理しましょう。
4. 社会保険
社会保険制度の全体像
社会保険は医療・年金・介護・雇用・労災の5種類から成り、会社員は被用者保険、自営業者等は地域保険に加入します。
-
5種類の社会保険と主な運営主体
-
保険料の負担方法
労災保険:全額事業主負担。
雇用保険:事業主負担>被保険者負担(事業主が多く負担)。
健康保険・厚生年金:事業主と被保険者が折半(各50%)。
介護保険:第1号は年金天引き等、第2号は医療保険料に上乗せ(協会けんぽは折半)。
公的医療保険の全体像・健康保険の仕組み
会社員が加入する健康保険の給付内容です。2級では給付額の計算・標準報酬月額との関係まで正確に把握する必要があります。
-
自己負担割合
-
高額療養費の計算
1か月の自己負担が所得区分に応じた限度額を超えた場合、超過分が払い戻されます。
一般的な所得区分(年収約370〜770万円)の場合:80,100円+(医療費合計-267,000円)×1%が月の限度額の目安。
直近12か月間で3回以上限度額超えの場合、4回目以降は多数回該当として限度額が引き下げられます。
-
傷病手当金の計算
1日あたりの給付額=支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均÷30×2/3
支給期間:休業4日目から通算1年6か月(2022年1月改正:同一疾病での1年6か月に変更)。
同一疾病で傷病手当金受給後に障害厚生年金・障害手当金を受給する場合は調整あり。
-
出産に関する給付
-
被扶養者の範囲
3親等内の親族(同居要件あり)で年収130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満)・被保険者の年収の2分の1未満。別居の場合は仕送り額以下が要件。
2級重要ポイント:傷病手当金の計算式(標準報酬月額÷30×2/3)・通算1年6か月・出産育児一時金50万円は計算問題として頻出です。
国民健康保険の仕組み
健康保険等の職域保険に加入していない人が加入する地域保険です。都道府県と市区町村が共同運営します(2018年度〜)。
-
保険料の計算方法
世帯単位で①所得割(前年所得に応じた額)、②均等割(加入者数に応じた額)、③平等割(世帯ごとの定額)、④資産割(固定資産税に応じた額・採用しない市町村あり)を合算して計算します。事業主負担はなく全額本人(世帯主)が負担します。
-
傷病手当金・出産手当金
国民健康保険では原則として傷病手当金・出産手当金は支給されません(任意給付のため)。ただし新型コロナウイルス感染症対応等の臨時措置として条例で定める場合は支給されることがあります。
退職者及び高齢者向け公的医療制度
退職後・高齢になった場合の医療保険の移行先と選択肢です。
-
任意継続被保険者制度
退職後最長2年間、在職中の健康保険を継続できます。
要件:退職日まで継続2か月以上被保険者であったこと。申請は退職日翌日から20日以内。
保険料:在職中の標準報酬月額と協会けんぽの平均標準報酬月額のいずれか低い方に保険料率を乗じた金額を全額本人が負担(在職時の約2倍)。
2022年1月〜:任意の脱退が可能になりました(従来は傷病手当金の不支給等の条件変更時のみ脱退可)。
-
後期高齢者医療制度
75歳以上(または65〜74歳で一定の障害認定を受けた者)が全員加入する独立した制度。
自己負担:1割(一定以上所得者は2割、現役並み所得者は3割)。
保険料:所得割+均等割で計算。年金月額15,000円以上の場合は特別徴収(年金天引き)。
財源:保険料(約1割)+後期高齢者支援金(若者世代から約4割)+公費(約5割)。
公的介護保険の仕組み
40歳以上の国民が加入する公的保険制度です。2級では要介護認定の流れ・支給限度額・給付の種類まで把握する必要があります。
公的医療制度の最近の動向
医療費の増大・高齢化への対応として制度改正が続いています。FPとして最新の改正内容の把握が求められます。
-
後期高齢者の自己負担2割導入(2022年10月〜)
単身世帯で年収200万円以上等の後期高齢者の自己負担が1割から2割に。急激な負担増を抑える配慮措置(3年間)あり。
-
介護保険の負担割合の見直し
第2号被保険者(40〜64歳)の保険料の総報酬割(報酬が高いほど多く負担する仕組み)が2017年8月〜段階的に導入されました。自己負担2〜3割の対象拡大の議論も継続中。
-
マイナ保険証・医療DX
マイナンバーカードを健康保険証として使用するマイナ保険証への移行が推進されています。オンライン資格確認の全医療機関への義務化(2023年4月〜)が実施されました。
労働者災害補償保険(労災保険)
業務上・通勤途上の傷病・死亡に対して給付を行う制度です。保険料は全額事業主が負担します。
雇用保険
失業・育児・介護等の場合に給付する制度です。2級では基本手当の計算・受給期間・各種給付の詳細まで把握する必要があります。
-
被保険者の種類
一般被保険者:週20時間以上・31日以上雇用見込みの労働者(65歳未満)。
高年齢被保険者:65歳以上の労働者。高年齢求職者給付金(一時金)の対象。
短期雇用特例被保険者・日雇労働被保険者:特定の短期・日雇い労働者。
-
基本手当の計算と受給
受給資格:離職前2年間に被保険者期間が通算12か月以上(倒産・解雇等の特定受給資格者は1年間に6か月以上)。
賃金日額=離職前6か月間の賃金÷180
基本手当日額=賃金日額×給付率(45〜80%・低賃金ほど高率)
所定給付日数:自己都合退職(一般)は90〜150日。特定受給資格者(倒産・解雇等)は90〜330日(年齢・被保険者期間により異なる)。
待期7日間(全員)+自己都合は2025年4月1日以降原則1か月の給付制限(離職日からさかのぼって5年間で2回以上は3か月)。
-
育児休業給付金
休業開始前2年間に被保険者期間12か月以上が要件。
給付率:休業開始から180日まで67%、以降50%(手取りで実質8割程度)。
2025年4月〜:子の出生後一定期間内に両親とも取得した場合、給付率が80%に引き上げ(一定の要件あり)。
-
教育訓練給付金
一般教育訓練給付:受講費用の20%(上限10万円)。
特定一般教育訓練給付:受講費用の40%(上限20万円)。
専門実践教育訓練給付:受講費用の50%(上限年40万円、資格取得+就職等で70%・上限年56万円)。
2級重要ポイント:「賃金日額=6か月賃金÷180」「特定受給資格者は給付日数が長い・待期1か月なし」「育休給付67%→50%(2025年〜80%)」は計算問題頻出です。
育児休業・介護休業制度
育児・介護休業法に基づく休業制度です。2022年以降の大幅な改正内容も含めて把握する必要があります。
2級重要ポイント:「産後パパ育休(出生後8週間・4週間・2回分割)」「育休の2回分割取得(2022年〜)」「介護休業93日・3回分割」は2022年改正の重要論点です。
5. 公的年金
公的年金制度の全体像
日本の公的年金は2階建て構造です。1階が国民年金(基礎年金)、2階が厚生年金保険です。2024年以降は第3号被保険者制度の見直し議論も進んでいます。
国民年金
国民年金は20歳以上60歳未満のすべての国内在住者が加入する基礎年金制度です。2級では保険料免除の効果・追納・任意加入まで正確に把握する必要があります。
-
保険料と付加保険料
第1号被保険者の定額保険料:2026年度月額17,920円。
付加保険料:月額400円を上乗せして納付すると、老齢基礎年金に「200円×付加保険料納付月数」が加算されます(国民年金基金との選択制)。
-
保険料の免除・猶予と年金額への影響
全額免除:老齢基礎年金の1/2相当が加算(国庫負担分のみ)。
3/4免除:老齢基礎年金の5/8相当が加算。
半額免除:老齢基礎年金の6/8(3/4)相当が加算。
1/4免除:老齢基礎年金の7/8相当が加算。
学生納付特例・納付猶予:年金額に加算なし(将来追納しない限り満額にならない)。
-
追納
免除・猶予を受けた保険料は10年以内であれば追納可能。ただし免除・猶予を受けた年度から3年度目以降は加算金(利子相当)が上乗せされます。
厚生年金保険
会社員・公務員等が加入する2階部分の年金。保険料は事業主と被保険者が折半負担します。
-
社会保険の適用拡大
短時間労働者への厚生年金・健康保険の適用拡大。週所定労働時間20時間以上・賃金月額88,000円以上・2か月超の雇用見込み・学生でないこと、の要件を満たす場合に加入義務あり。
適用拡大の対象事業所規模:2016年10月(501人以上)→2022年10月(101人以上)→2024年10月(51人以上)と段階的に拡大。
-
標準報酬月額の決定方法
-
保険料率
標準報酬月額・標準賞与額×18.3%を事業主と被保険者が折半(各9.15%)。育児休業中は申出により保険料免除。
老齢給付(老齢基礎年金・老齢厚生年金)
老後の所得を保障する年金です。2級では年金額の計算・繰上げ繰下げの影響・在職老齢年金まで正確に把握する必要があります。
-
老齢基礎年金の計算
年金額=満額×保険料納付済月数(+免除期間の加算月数)÷480か月
満額(2026年度):年額約840,000円(月額約70,000円)。
例:35年(420か月)納付の場合:840,000円×420/480≒735,000円
-
老齢厚生年金の計算(報酬比例部分)
報酬比例部分=平均標準報酬月額×5.481/1000×2003年3月以前の月数+平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の月数(概略)
加給年金額:厚生年金加入期間が20年以上で、生計を維持する65歳未満の配偶者がいる場合に加算(年額423,700円等/2026年度)。
-
繰上げ受給・繰下げ受給
-
在職老齢年金
65歳以上で厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受給する場合、(月額賃金+月額年金)の合計が50万円を超える部分の年金が支給停止。
支給停止額=(標準報酬月額+標準賞与月額÷12+老齢厚生年金月額)×1/2×超過分の調整
2級重要ポイント:老齢基礎年金の計算式(480か月割)・繰上げ0.4%/繰下げ0.7%・在職老齢年金50万円の基準・加給年金額の加算条件は計算問題として頻出です。
障害給付(障害基礎年金・障害厚生年金)
病気・けがによって一定以上の障害が残った場合に支給される年金です。2級では障害の程度・年金額の計算まで把握する必要があります。
遺族給付(遺族基礎年金・遺族厚生年金)
被保険者または受給者が死亡した場合に遺族に支給される年金です。
-
遺族基礎年金
受給者:死亡した人に生計を維持されていた子のある配偶者または子(子は18歳年度末まで・障害者は20歳未満)。
年金額:老齢基礎年金満額847,300円+子の加算(1・2人目各243,800円、3人目以降各81,300円/2026年度概算)。
-
遺族厚生年金
年金額:死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分×3/4。被保険者期間が300月未満の場合は300月に切り上げ。
中高齢寡婦加算:夫が死亡した時に40歳以上65歳未満で子のない妻、または子が18歳到達等で遺族基礎年金を失権した40歳以上の妻に加算(年額612,000円等/2024年度)。65歳以降は経過的寡婦加算に移行。
-
65歳以降の妻の遺族厚生年金
65歳以降の妻が自身の老齢厚生年金を受給できる場合、遺族厚生年金の額は①遺族厚生年金と②(遺族厚生年金×2/3+老齢厚生年金×1/2)のいずれか多い方が支給されます(2007年4月改正)。
-
死亡一時金・寡婦年金
第1号被保険者として36か月以上保険料を納めた者が年金を受け取らずに死亡した場合の給付(死亡一時金)と、10年以上保険料を納めた夫が年金未受給で死亡した場合の妻への給付(寡婦年金:60〜65歳・夫の老齢基礎年金×3/4・5年間)は選択制です。
併給調整
公的年金は原則1人1年金ですが、65歳以降は一定の組み合わせで複数の年金を受給できます。2級では主要パターンを整理して把握する必要があります。
離婚時年金分割
離婚時に婚姻期間中の厚生年金の標準報酬を夫婦間で分割できる制度です。基礎年金は分割されません。
年金の請求手続
年金は自動的には支給されず、受給権者自らが裁定請求を行う必要があります。
年金生活者支援給付金
公的年金等収入と他の所得の合計が一定基準以下の年金受給者に対して、年金に上乗せして給付される制度(2019年10月〜)です。
-
老齢年金生活者支援給付金
65歳以上・老齢基礎年金受給・前年の公的年金等収入+その他所得の合計が基準額(老齢:低所得者基準)以下の者。給付額は保険料納付済期間・免除期間に応じて計算。
-
障害・遺族年金生活者支援給付金
障害基礎年金・遺族基礎年金の受給者で前年所得が基準額以下の場合。1級は月額6,638円・2級は5,310円(2024年度概算)。
年金生活者支援給付金は消費税率10%引き上げ(2019年10月)に合わせて導入されました。老齢基礎年金の支払い機関(日本年金機構)から案内が届きます。