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ファイナンシャル・プランニング技能検定

A

ライフプランニングと資金計画

FP3級学科試験主要用語集2026

ファイナンシャル・プランニング(FP)の入門として、「お金と人生設計」の基礎知識を幅広く学ぶ科目です。

FPの社会的役割と職業倫理の理解から始まり、税理士法・保険業法・金融商品取引法などの関連法規によって「FPができること・できないこと」の境界を把握します。続いて、ライフイベント表やキャッシュフロー表・バランスシートを使ったライフプランニングの手法を学び、健康保険・雇用保険・労災保険・公的介護保険などの社会保険制度の仕組みを概略として押さえます。

さらに国民年金・厚生年金保険の老齢・障害・遺族給付という公的年金の基礎、確定拠出年金(iDeCo含む)・個人年金・財形年金などの上乗せ年金制度、年金にかかる税の扱いを学びます。ライフプランに直結する住宅ローン・教育資金・老後資金のプランニング、そしてクレジットカード・消費者ローンの仕組みまで、生活に身近なテーマが幅広くカバーされています。

3級では各項目を「概略として理解すること」が求められるレベルで、実生活の場面に照らし合わせながら基本的な仕組みを押さえることが合格への近道です。

1. FPと倫理

ファイナンシャル・プランニングの社会的ニーズと役割

ファイナンシャル・プランニング(FP)とは、個人・家族の生涯にわたるライフプランの実現に向けて、財務的な目標設定・資金計画の立案・実行支援・定期的な見直しを総合的に行うプロセスです。

  • FPの社会的ニーズ

    少子高齢化・低金利環境・社会保障制度の持続可能性への不安・働き方の多様化などを背景に、個人が自らライフプランと資金計画を立てる必要性が高まっています。公的年金だけでは賄えない老後資金の自助努力・資産形成の重要性が増しており、FPの専門的なアドバイスへの需要が拡大しています。

  • FPの社会的役割

    • ライフプランの策定支援:顧客のライフイベント・収支・資産・負債・保険などを総合的に把握し、目標達成に向けた資金計画を提案します。

    • 各専門家との連携:FPは総合的なアドバイスを行いますが、個別の専門的事項(税務・法律・保険等)は各専門家(税理士・弁護士・保険募集人等)と連携して対応します。

    • 継続的なフォローアップ:ライフプランは定期的に見直し・更新することが必要です。

  • FPの職業的原則

    • 顧客利益の優先:FPは自己の利益よりも顧客の利益を優先して行動しなければなりません。自己の利益のために顧客に不利な商品・サービスを勧めることは禁止されます。

    • 守秘義務の厳守:業務上知り得た顧客の個人情報・財務情報は厳格に管理し、本人の同意なく第三者に開示してはなりません。

    • 能力の範囲内での業務遂行:自己の資格・知識・能力の範囲内で業務を行い、専門外の事項は適切な専門家を紹介することが求められます。

    • 継続的な自己研鑽:法令・制度の改正に対応するため、継続的な学習・スキルアップが必要です。

2. FPと関連法規

FPと税理士法

税理士法では、税理士でない者が税務代理・税務書類の作成・税務相談を業として行うことを禁じています(無償であっても有償であっても同様)。FPはこの規定に注意して業務を行う必要があります。

  • 税理士業務(税理士でなければできないこと)

    • 税務代理:税務署等への申告・申請・不服申立て等を顧客に代わって行うこと。

    • 税務書類の作成:確定申告書・相続税申告書等の税務書類を作成すること。

    • 税務相談:顧客の個別具体的な税務上の質問に答えること(個別・具体的な税額計算を含む)。

  • FPが行えること(税理士法に抵触しない行為)

    • 税制の一般的な説明・解説:税法の仕組みや制度の一般的な説明はFPでも行えます。

    • 仮定・一般的な計算例の提示:「一般的にこのような場合は○○円程度になります」という仮定ベースの説明は可能。

FP試験ポイント:「個別の顧客の具体的な税額計算・税務書類の作成は税理士でなければできない」「一般的な税制の説明はFPでも可能」の区別が最頻出です。

FPと保険業法

保険業法では、保険商品の募集(勧誘・説明・申込の取次ぎ)は内閣総理大臣の登録・授権を受けた保険募集人・保険仲立人でなければ行えません。FPが保険の募集を行う場合は保険募集人としての登録が必要です。

  • 保険募集人でなければできないこと

    • 保険契約の勧誘・説明:特定の保険商品を顧客に勧めて加入を促すこと。

    • 保険契約申込の取次ぎ・代理:顧客の保険契約申込を保険会社に取り次ぐこと。

  • FPが行えること(保険業法に抵触しない行為)

    • 保険商品の一般的な説明・比較情報の提供:保険の仕組み・種類・特徴を一般的に説明することはFPでも可能です。

    • 保険の必要性に関する一般的なアドバイス:「保険が必要かどうか」の一般的な観点からのアドバイスは可能。

  • 特定保険募集人(乗合代理店)への規制

    複数の保険会社の商品を取り扱う乗合代理店(独立系FP事務所等)には、顧客への比較説明義務・情報提供義務・意向確認義務等が課されています。

FPと金融商品取引法

金融商品取引法は、有価証券(株式・債券・投資信託等)の売買・投資助言・投資運用業等を規制する法律です。これらの業務を行う場合は金融商品取引業者としての内閣総理大臣への登録が必要です。

  • 登録が必要な業務(金融商品取引業者でなければできないこと)

    • 有価証券の売買等:株式・債券・投資信託等の売買を業として行うこと。

    • 投資助言業:顧客に対して有価証券への投資に関する助言を業として行うこと(投資顧問契約に基づく有償の助言)。

    • 投資運用業:顧客から資金を預かって運用を行うこと。

  • FPが行えること(金融商品取引法に抵触しない行為)

    • 金融商品の一般的な説明・仕組みの解説:株式・投資信託等の一般的な説明はFPでも可能。

    • ライフプランに基づく資産配分の考え方の説明:具体的な銘柄推薦でなければアドバイス可能。

  • 主な行為規制(登録業者への規制)

    • 適合性の原則:顧客の知識・経験・財産状況・投資目的に適合した勧誘・販売をしなければなりません。

    • 説明義務・書面交付義務:商品の内容・リスクについて事前に書面で説明する義務があります。

    • 断定的判断の提供の禁止:「必ず儲かる」などの断定的表現での勧誘は禁止されています。

FP試験ポイント:「有価証券の投資に関する個別・具体的な助言(投資顧問契約に基づく有償の助言)は投資助言業の登録が必要」「一般的な説明はFPでも可能」の区別が頻出です。

FPと弁護士法

弁護士法では、弁護士でない者が法律事件に関する法律事務(法律相談・法律書類の作成・代理等)を業として行うことを禁じています(非弁行為)。FPは法的問題については弁護士に相談を促すことが重要です。

  • 弁護士でなければできないこと(法律事務)

    • 法律相談:法的な権利・義務・紛争解決に関して個別具体的に回答すること。

    • 法律書類の作成:契約書・遺言書(公正証書遺言の原案等)・内容証明郵便等の法律書類を業として作成すること。

    • 法的手続きの代理:訴訟・調停・交渉等の代理を行うこと。

  • FPが行えること(弁護士法に抵触しない行為)

    • 法律制度の一般的な説明:相続法・契約法等の仕組みを一般的に説明することはFPでも可能。

    • 相続対策の一般的なアドバイス:遺産分割の一般的な方法や活用できる制度を説明することは可能。

FP試験ポイント:「遺産分割協議書の作成代行・遺言書の法的有効性の判断・相続人間の紛争の代理交渉は弁護士でなければできない」「一般的な相続の知識提供はFPでも可能」の区別が頻出です。

FPとその他の関連法規

FPの業務に関連する主なその他の法規です。

  • 社会保険労務士法

    社会保険労務士(社労士)でない者が、労働社会保険諸法令に基づく申請書類の作成・提出代行・相談・指導を業として行うことは禁止されています。
    FPは社会保険・労働保険の一般的な説明は行えますが、具体的な申請書類の作成・提出代行は社労士でなければできません。

  • 宅地建物取引業法

    宅地・建物の売買・交換・賃借の媒介・代理・取引を業として行う場合は宅地建物取引業者としての免許が必要です。不動産の購入・売却のアドバイスをする際は、具体的な取引の媒介・代理は免許業者に任せる必要があります。

  • 個人情報保護法

    FPは業務上、顧客の収入・資産・家族構成・健康状態などの個人情報を取り扱います。個人情報保護法に基づき、利用目的の明示・安全管理措置・第三者提供の制限などが義務づけられています。要配慮個人情報(病歴・障害・犯罪歴等)の取得には原則として本人の同意が必要です。

  • 消費者契約法・金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律(金融サービス提供法)

    • 消費者契約法:事業者が消費者に対して不実告知・断定的判断の提供・不利益事実の不告知等を行った場合、消費者は契約を取り消すことができます。

    • 金融サービス提供法(旧金融商品販売法):金融商品の販売業者等は、顧客に対してリスク等の重要事項を説明する義務があります(説明義務違反があった場合に損害賠償責任を負う)。金融サービス仲介業として銀行・証券・保険を一元的に仲介できる資格(2021年〜)も設けられています。

FP試験ポイント:「社労士でなければ社会保険の申請書類作成・提出代行はできない」「宅建業の免許なく不動産取引の媒介はできない」「個人情報の取扱いには個人情報保護法が適用される」の3点が頻出です。

3. ライフプランニングの考え方・手法

ライフプランニングの目的と効用

ライフプランニングとは、人生の各ステージにおける生活目標を明確にし、その実現に必要な資金計画を立案・実行するプロセスです。将来の収支を可視化することで、今からどのような準備をすべきかを明らかにします。

  • 主な効用

    • 目標の明確化:住宅取得・子どもの教育・老後生活など、ライフイベントにかかる費用と時期を把握できます。

    • 資金不足の早期発見:将来の収支計画を作成することで、資金不足が発生する時期を事前に把握し対策を講じることができます。

    • 優先順位の決定:限られた収入の中で、何を優先して資金を準備するかの判断基準となります。

各ライフステージにおける一般的テーマとライフステージ別資金運用

人生を就学前・学齢期・社会人・子育て・老後などのライフステージに区分し、各段階での主要な財務的テーマを把握することがライフプランニングの出発点です。

  • 主なライフステージと財務テーマ

    • 独身期(就職〜結婚前):生活費の自立・緊急予備資金の確保・資産形成の開始(iDeCo・NISA等の活用)。

    • 新婚期・子育て期:住宅取得資金の準備・生命保険の見直し・教育資金の積立開始。収入に対する支出圧力が高い時期。

    • 子独立後・老後準備期:住宅ローンの完済・老後資金の本格的な積立・相続対策の開始。

    • 退職後(老後):年金収入・資産の取り崩し管理・医療・介護費用の準備・相続・贈与の実行。

  • ライフステージ別の資金運用方針

    若い時期は長期運用が可能なため相対的にリスクを取りやすい(株式等の割合を高める)。老後に近づくにつれてリスク性資産の割合を下げ、安全性・流動性を高める資産配分に移行するのが基本的な考え方です。

  • ライフプラン上の各種統計数値

    平均寿命・健康寿命・合計特殊出生率・世帯数の推移などの統計数値は、ライフプランを策定する際の前提となります。平均寿命(0歳の平均余命)だけでなく、健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)との差(約10年)が老後の医療・介護費用を見積もる際の重要な参考値となります。

顧客情報等各種の情報の収集・把握の方法

ライフプランの策定に先立ち、顧客の現状を正確に把握することが必要です。定量的情報と定性的情報の両方を収集します。

  • 定量的情報(数値化できる情報)

    収入・支出・資産・負債・保険の内容(保険料・保障額)・年金加入記録・住宅ローン残高など。

  • 定性的情報(価値観・目標等)

    家族構成・ライフイベントの希望(住宅取得・教育・老後の生活水準等)・リスク許容度・価値観・健康状態など。

  • 情報収集の手段

    ヒアリング(面談)・質問票・関係書類(源泉徴収票・確定申告書・保険証券・預金通帳等)の収集・分析。個人情報保護法に基づき、利用目的を明示の上で取得します。

可処分所得の計算

可処分所得とは、実際に自由に使える手取り収入のことです。キャッシュフロー表の「年間収入」の欄に記入する基礎数値となります。

  • 可処分所得の計算式

    可処分所得=年収(税込み)-(所得税+住民税+社会保険料)
    例:年収500万円・所得税25万円・住民税30万円・社会保険料70万円の場合
    可処分所得=500万円-(25万円+30万円+70万円)=375万円

  • キャッシュフロー表における取り扱い

    キャッシュフロー表では、給与収入は可処分所得(手取り)を記入します。ただし自営業者の場合は売上から経費を差し引いた事業所得を収入として記入することが一般的です。

FP試験ポイント:「可処分所得=年収-(所得税+住民税+社会保険料)」の計算は毎回出題されます。健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料を合計した社会保険料の控除を忘れずに。

ライフイベント表・キャッシュフロー表の作成

ライフプランの策定に使用する2つの主要なツールです。

  • ライフイベント表

    家族全員の将来のライフイベント(進学・就職・結婚・住宅取得・退職等)を時系列に一覧化した表。各イベントの発生時期と概算費用を記入します。キャッシュフロー表作成の前提となります。

  • キャッシュフロー表の構成と作成手順

    将来の各年の収入・支出・収支・貯蓄残高を一覧にした表。通常5〜10年先まで作成します。
    ①年間収入欄:可処分所得・その他収入(賃料・配当等)を記入。
    ②年間支出欄:基本生活費・住宅ローン返済額・教育費・保険料等を記入。
    ③年間収支:年間収入-年間支出。
    ④貯蓄残高:前年残高×(1+運用利率)+当年収支。

個人のバランスシートの作成

個人のバランスシート(純資産計算表)とは、一定時点における個人の資産・負債・純資産の状況を整理した表です。現在の財務状態を把握するために作成します。

  • バランスシートの構成

    • 資産の部:現金・預貯金・有価証券・不動産・生命保険の解約返戻金など。時価で記入。

    • 負債の部:住宅ローン残高・カードローン残高・その他借入金など。残高で記入。

    • 純資産:資産合計-負債合計。正であれば正味財産がある状態。

  • バランスシート作成の注意点

    • 不動産は時価(市場価値)で記入します(取得価額・固定資産税評価額ではない)。

    • 生命保険は解約返戻金相当額を資産として計上します(死亡保険金額ではない)。

FP試験ポイント:「不動産は時価で記入」「生命保険は解約返戻金を資産に計上」は頻出の引っかけポイントです。

必要保障額の計算

必要保障額とは、世帯主が死亡した場合に遺族が必要とする生活費・教育費等の総支出から、遺族が受け取れる収入(遺族年金・既存の保険金等)を差し引いた不足額のことです。この金額が生命保険で用意すべき保障の目安となります。

  • 必要保障額の計算式

    必要保障額=(遺族の必要生活資金の総額+各種費用)-(遺族年金の総額+既存の預貯金・保険金等)
    遺族の必要生活資金:月間生活費×12か月×遺族の生活年数(末子独立まで・独立後の2段階に分けることが多い)。

  • 計算に含める主な項目

    • 支出側:遺族の生活費(現在の生活費×0.7程度・独立後は0.5程度)・末子の教育費・住宅取得費(または住宅ローン残高)・その他(葬儀費用等)。

    • 収入側:遺族基礎年金・遺族厚生年金・配偶者の収入・既存の預貯金・既存の死亡保険金。

FP試験ポイント:遺族の生活費は「現在の生活費×0.7(現在の生活水準の7割)」を使う場合が多いです。遺族年金の受給有無・住宅ローン残高(団信で完済の場合は支出に含めない)の取り扱いも問われます。

6つの係数の意味と活用

ライフプランの資金計算に使う6種類の係数は、金利(利率)・期間・現在価値・将来価値・年金(一定期間の定期的な積立・取崩し)の関係を計算するための係数表です。

  • ①終価係数(しゅうかけいすう)

    現在の一定金額が将来いくらになるかを求める係数。
    使い方:「現在100万円を年利2%で○年間運用すると?」→ 100万円×終価係数
    公式:(1+r)n (r:年利率、n:期間)

  • ②現価係数(げんかけいすう)

    将来の一定金額を受け取るために、現在いくら必要かを求める係数(終価係数の逆数)。
    使い方:「○年後に1,000万円必要な場合、現在いくら用意すれば?」→ 1,000万円×現価係数
    公式:1÷(1+r)n

  • ③年金終価係数(ねんきんしゅうかけいすう)

    毎年一定金額を積み立てた場合、将来いくらになるかを求める係数。
    使い方:「毎年100万円を年利2%で○年間積み立てると?」→ 100万円×年金終価係数

  • ④減債基金係数(げんさいききんけいすう)

    将来の目標額を積み立てるために、毎年いくら積み立てればよいかを求める係数(年金終価係数の逆数)。
    使い方:「○年後に1,000万円貯めるために、年利2%なら毎年いくら積み立てれば?」→ 1,000万円×減債基金係数

  • ⑤資本回収係数(しほんかいしゅうけいすう)

    現在の一定金額を取り崩す場合(または借入金を返済する場合)に、毎年(毎月)いくら受け取れるか(または返済するか)を求める係数。
    使い方:「退職金2,000万円を年利2%で○年間取り崩すと毎年いくら受け取れる?」「住宅ローンの毎月返済額は?」→ 金額×資本回収係数

  • ⑥年金現価係数(ねんきんげんかけいすう)

    毎年一定金額を受け取るために、現在いくら必要かを求める係数(資本回収係数の逆数)。
    使い方:「年利2%で毎年100万円を○年間受け取るには、今いくら用意すれば?」→ 100万円×年金現価係数

FP試験ポイント:6係数の使い分けは「何を求めるか」で決まります。「現在の一定額→将来:終価係数」「将来の目標額→現在:現価係数」「毎年積立→将来:年金終価」「将来目標→毎年積立:減債基金」「現在の資金→毎年取崩し:資本回収」「毎年受取→現在:年金現価」と整理しましょう。

4. 社会保険

社会保険制度の全体像

社会保険とは、国民が生活上のリスク(病気・けが・失業・老齢・介護等)に対して、保険料を拠出することで給付を受けられる強制加入の公的保険制度です。

  • 社会保険の5種類

    • 医療保険:健康保険・国民健康保険・後期高齢者医療制度など。

    • 年金保険:国民年金・厚生年金保険。

    • 介護保険:40歳以上の国民が加入。

    • 雇用保険:失業・育児・介護等の給付。

    • 労働者災害補償保険(労災保険):業務上・通勤途上の災害に対する給付。

  • 被用者保険と地域保険

    • 被用者保険:会社員・公務員等が加入(健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険)。保険料は事業主と被保険者で分担。

    • 地域保険:自営業者・無職者等が加入(国民健康保険・国民年金)。保険料は本人が全額負担。

公的医療保険の全体像・健康保険の仕組み

公的医療保険とは、病気やけがで医療機関を受診した際の費用の一部を給付する制度です。会社員は健康保険、自営業者等は国民健康保険に加入します。

  • 健康保険の種類

    • 全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ):中小企業の従業員が対象。保険料率は都道府県によって異なります(平均約10%)。

    • 組合管掌健康保険(組合健保):大企業が設立した健康保険組合が運営。

  • 自己負担割合

    • 小学校就学前:2割負担。

    • 小学校就学後〜69歳3割負担。

    • 70〜74歳:2割負担(一定以上所得者は3割)。

  • 主な給付の種類

    • 療養の給付:病院での診察・薬・入院等の費用の自己負担分を除いた額を給付。

    • 高額療養費:1か月の自己負担が自己負担限度額を超えた場合、超過分を給付。限度額は所得に応じて異なります。

    • 傷病手当金:業務外の病気・けがで連続4日以上休業した場合、休業4日目から最長1年6か月間、標準報酬日額の3分の2を給付。

    • 出産手当金:産前42日・産後56日の休業中、標準報酬日額の3分の2を給付。

    • 出産育児一時金:1児あたり50万円(産科医療補償制度加入の場合)。

  • 被扶養者の範囲

    被保険者に生計を維持される3親等内の親族等(年収130万円未満・同居の場合は被保険者の収入の2分の1未満)。被扶養者は保険料負担なしで同様の給付を受けられます。

FP試験ポイント:「傷病手当金は4日目から1年6か月・3分の2」「出産育児一時金50万円」「高額療養費の限度額は所得に応じる」は頻出です。

国民健康保険の仕組み

国民健康保険(国保)は、健康保険等の職域保険に加入していない人(自営業者・農業者・無職者・退職者等)が加入する医療保険です。市区町村(および国民健康保険組合)が運営します。

  • 保険料

    世帯単位で前年の所得・資産・加入者数等を基に計算されます。保険料は全額本人(世帯主)が負担。傷病手当金・出産手当金は原則として支給されません。

  • 給付の内容

    療養の給付・高額療養費・出産育児一時金等は健康保険と同様。ただし傷病手当金・出産手当金は(任意給付のため)通常支給されません。

退職者及び高齢者向け公的医療制度

退職後や高齢になった場合に移行する医療保険制度です。

  • 任意継続被保険者制度

    退職後も最長2年間、在職中の健康保険に継続加入できる制度。保険料は事業主負担分もすべて本人が負担(在職中の約2倍)。申請期限:退職日翌日から20日以内

  • 後期高齢者医療制度

    75歳以上(または65歳以上で一定の障害がある者)が加入する独立した医療保険制度(都道府県単位の広域連合が運営)。自己負担は1割(一定以上所得者は2割または3割)。保険料は年金から天引き(特別徴収)が基本。

FP試験ポイント:「任意継続は2年間・20日以内申請」「後期高齢者医療制度は75歳以上・自己負担1割」の2点は頻出です。

公的介護保険の仕組み

介護保険とは、要介護・要支援状態になった際に介護サービスを受けられる公的制度です。40歳以上の国民が加入します。

  • 被保険者の区分

    • 第1号被保険者65歳以上の者。原因を問わず要介護・要支援認定を受ければサービスを利用できます。

    • 第2号被保険者40歳以上65歳未満の医療保険加入者。老化に起因する特定疾病(16疾病)によって要介護・要支援になった場合のみサービスを利用できます。

  • 要介護認定・要支援認定

    市区町村に申請し、調査・審査を経て要支援1・2または要介護1〜5に認定されます。認定を受けると区分に応じた支給限度額の範囲内でサービスを利用できます。

  • 自己負担割合

    原則1割(一定以上の所得がある第1号被保険者は2割または3割)。

  • サービスの種類

    • 居宅サービス:訪問介護・通所介護(デイサービス)・短期入所(ショートステイ)など。

    • 施設サービス:特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設・介護療養型医療施設など。

FP試験ポイント:「第1号は65歳以上(原因問わず)」「第2号は40〜64歳(特定疾病のみ)」「自己負担原則1割」の3点が頻出です。

公的医療制度の最近の動向

少子高齢化への対応と医療費適正化を目的とした改革が進んでいます。

  • 後期高齢者の自己負担2割導入(2022年10月〜)

    後期高齢者のうち一定以上の所得がある者(単身で年収200万円以上等)の自己負担が1割から2割に引き上げられました。

  • マイナ保険証への移行

    健康保険証とマイナンバーカードの一体化(マイナ保険証)が推進されています。

  • 介護保険制度の見直し

    介護保険の自己負担割合の引き上げ(2割・3割負担の対象拡大)や、地域包括ケアシステムの推進が継続的に議論されています。

労働者災害補償保険(労災保険)

労災保険とは、業務上の事由または通勤途上における労働者の負傷・疾病・障害・死亡に対して給付を行う制度です。保険料は全額事業主が負担します。

  • 適用範囲

    労働者を1人でも雇用するすべての事業に適用(農林水産業の一部は任意適用)。パート・アルバイト等も含むすべての労働者が対象。

  • 主な保険給付の種類

    • 療養(補償)給付:業務上・通勤災害による傷病の治療費を全額給付(自己負担なし)。

    • 休業(補償)給付:業務上・通勤災害による休業4日目以降、給付基礎日額の60%を給付。

    • 障害(補償)給付:障害が残った場合に障害等級(1〜14級)に応じて年金または一時金を給付。

    • 遺族(補償)給付:死亡した場合に遺族に年金または一時金を給付。

    • 介護(補償)給付:障害・傷病年金受給者が介護を受けている場合に給付。

  • 特別支給金

    保険給付に上乗せして支給される給付金。休業特別支給金(給付基礎日額の20%)等。休業(補償)給付と合わせると給付基礎日額の80%相当になります。

  • 特別加入制度

    労働者ではない中小企業の事業主・一人親方・特定作業従事者等が任意で加入できる制度。

FP試験ポイント:「労災保険の保険料は全額事業主負担」「休業給付は4日目から60%(特別支給金20%と合わせて80%)」「特別加入は中小企業主や一人親方も可能」は頻出です。

雇用保険

雇用保険とは、失業した場合や育児・介護で休業した場合に給付を行い、生活の安定と早期再就職を支援する制度です。保険料は事業主と被保険者が分担します。

  • 被保険者

    週所定労働時間が20時間以上31日以上雇用される見込みの労働者が加入対象(パート・アルバイトも含む)。

  • 基本手当(失業給付)

    離職して失業状態にある者に支給。
    受給資格:離職前2年間に被保険者期間が通算12か月以上(倒産・解雇等の特定受給資格者は1年間に6か月以上)。
    給付額:賃金日額(離職前6か月の賃金÷180)×給付率(50〜80%)。
    所定給付日数:離職理由・年齢・被保険者期間によって90〜360日。
    待期期間:離職後7日間は給付なし(自己都合離職の場合はさらに2025年4月1日以降原則1か月の給付制限)。

  • 主な就職促進給付・教育訓練給付

    • 就業促進手当:所定給付日数の3分の1以上残して就職した場合等に支給。

    • 教育訓練給付:一定の教育訓練を修了した場合に費用の一部を支給(一般:20%・特定・専門実践:最大80%)。

  • 育児休業給付金

    育児休業取得中に、休業開始前の賃金日額の67%(休業開始から180日まで)・以降は50%を支給。子が1歳(保育所に入れない等の場合は最長2歳)になるまで受給可能。

  • 介護休業給付金

    介護休業取得中に、休業前賃金の67%を通算93日(最大3回まで分割取得)支給。

FP試験ポイント:「受給資格12か月以上」「待期7日+自己都合は2025年4月1日以降原則1か月給付制限」「育児休業給付67%→50%」は頻出です。

育児休業・介護休業制度

労働者が育児・介護のために取得できる休業制度です。育児・介護休業法に基づき、一定の要件を満たせば会社に申し出ることで取得できます。

  • 育児休業

    • 取得期間:子が原則1歳(保育所に入れない等の場合は最長2歳)になるまで取得可能。

    • 産後パパ育休(出生時育児休業):子の出生後8週間以内に最大4週間取得できる父親向け休業(2022年10月〜)。分割して2回取得可能。

    • 男性の育休取得率向上:2023年4月〜従業員1,000人超企業に育休取得率の公表義務。

  • 介護休業

    要介護状態にある家族1人につき通算93日間(最大3回に分割)取得可能。介護休業給付金(賃金の67%)が雇用保険から支給されます。

  • 子の看護休暇・介護休暇

    小学校就学前の子の看護等のために年5日(子2人以上は10日)の休暇取得が可能(1日または半日単位)。介護休暇も同様の日数。

FP試験ポイント:「育休は最長2歳まで」「産後パパ育休は出生後8週間以内に4週間」「介護休業は93日・3回分割可能」の3点が頻出です。

5. 公的年金

公的年金制度の全体像

日本の公的年金は2階建て構造です。20歳以上60歳未満のすべての国民が加入する国民年金(基礎年金)が1階部分で、会社員・公務員が加入する厚生年金保険が2階部分です。

  • 被保険者の3区分

    • 第1号被保険者:自営業者・学生・無職等。20歳以上60歳未満の国内在住者。

    • 第2号被保険者:会社員・公務員等。厚生年金保険の被保険者(70歳未満)。

    • 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養される配偶者(年収130万円未満等)。20歳以上60歳未満。保険料の負担なし。

  • 財政方式

    公的年金は賦課方式(現役世代の保険料が現在の受給者の給付に充てられる)を基本とし、積立金も活用する修正積立方式で運営されています。

  • 給付の種類

    老齢・障害・遺族の3種類の事由に対して給付が行われます。

FP試験ポイント:「2階建て構造」「3種類の被保険者(第1〜3号)」「賦課方式」の3点は必須です。

国民年金

国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する基礎年金制度です。老齢・障害・遺族の3種類の基礎年金が支給されます。

  • 保険料

    第1号被保険者は定額保険料を納付します(2026年度:月額17,920円)。第2号は厚生年金保険料に含まれ、第3号は負担なし。

  • 保険料の免除・猶予制度

    • 法定免除:障害基礎年金受給者・生活保護受給者は保険料が全額免除(届出要)。

    • 申請免除:所得が少ない場合に全額・3/4・半額・1/4の4段階で免除申請可。

    • 学生納付特例:学生は在学中の保険料を猶予(10年以内に追納可)。年金額には反映されない。

    • 納付猶予:50歳未満で所得が低い場合に猶予(10年以内に追納可)。

  • 任意加入制度

    60歳以上65歳未満で年金額を増やしたい場合や、海外在住の日本人は任意加入ができます。

厚生年金保険

厚生年金保険は、会社員・公務員等が国民年金に上乗せして加入する年金制度です。保険料は事業主と被保険者が折半して負担します。

  • 被保険者と適用事業所

    常時5人以上の従業員がいる事業所(強制適用事業所)に使用される70歳未満の者が対象。2022年以降は常時50人超の事業所でパート・アルバイト等の短時間労働者も一定条件で加入義務あり(社会保険の適用拡大)。

  • 保険料率

    標準報酬月額・標準賞与額に18.3%を乗じた金額を事業主と被保険者が折半(各9.15%)。

  • 標準報酬月額

    実際の報酬を一定の幅(等級)に当てはめた金額。4月・5月・6月の報酬の平均で9月から翌年8月まで適用する定時決定と、昇給等による随時改定がある。

老齢給付(老齢基礎年金・老齢厚生年金)

老後の所得を保障する年金です。老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金(厚生年金)があります。

  • 老齢基礎年金

    受給要件:保険料納付済期間+免除期間等の合算が10年以上。原則65歳から受給開始。
    満額(2026年度):月額約70,000円(40年間保険料を納付した場合)。
    保険料免除期間は国庫負担割合に応じて減額されます。

  • 老齢厚生年金

    厚生年金の被保険者期間が1か月以上あれば老齢基礎年金に上乗せして受給可能。報酬比例部分(標準報酬月額×乗率×被保険者月数)で計算。

  • 繰上げ受給・繰下げ受給

    • 繰上げ受給:60〜64歳から受給開始。月0.4%×繰上げ月数だけ年金額が減額(最大24%減)。一度繰上げすると取消不可。

    • 繰下げ受給:66〜75歳まで受給開始を遅らせることで月0.7%増額(最大84%増)。

  • 在職老齢年金(60歳以上の就労と年金の調整)

    65歳以上で厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受給する場合、報酬と年金の合計が一定額(50万円)を超えると年金が一部または全部支給停止されます。

FP試験ポイント:「受給資格期間10年」「繰上げ0.4%減・繰下げ0.7%増」「在職老齢年金の支給停止基準50万円」は頻出です。

障害給付(障害基礎年金・障害厚生年金)

病気・けがによって障害が残った場合に支給される年金です。

  • 受給要件(共通)

    • 初診日:障害の原因となった傷病について初めて医療機関を受診した日。

    • 保険料納付要件:初診日の前々月までの保険料納付済期間+免除期間が全体の2/3以上(または直近1年間に未納なし)。

    • 障害認定日:初診日から1年6か月後または治癒日のいずれか早い日。

  • 障害基礎年金

    障害等級1級・2級が対象。1級は老齢基礎年金満額×1.25、2級は老齢基礎年金満額。子の加算あり(18歳未満の子)。

  • 障害厚生年金

    厚生年金加入中に初診日がある場合に加算。障害等級1〜3級(3級は最低保障額あり)。1・2級の場合は障害基礎年金に上乗せ。配偶者加給年金額あり。

FP試験ポイント:「障害基礎年金は1・2級のみ」「障害厚生年金は1〜3級」「初診日の被保険者資格が重要」は頻出です。

遺族給付(遺族基礎年金・遺族厚生年金)

被保険者が死亡した場合に遺族に支給される年金です。

  • 遺族基礎年金

    受給者:死亡した人に生計を維持されていた子のある配偶者または子(子は18歳年度末まで)。
    年金額:老齢基礎年金満額847,300円+子の加算(1・2人目各243,800円、3人目以降各81,300円/2026年度概算)。

  • 遺族厚生年金

    受給者:被保険者(または受給者)の死亡時に生計を維持していた配偶者・子・父母・孫・祖父母(優先順位あり)。
    年金額:死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4
    中高齢寡婦加算:夫死亡時に子のない40歳以上65歳未満の妻に加算。

  • 死亡一時金(寡婦年金)

    死亡一時金:第1号被保険者として36か月以上保険料を納めた者が老齢基礎年金・障害基礎年金を受け取らずに死亡した場合に遺族に支給。
    寡婦年金:第1号被保険者の夫が10年以上保険料を納め年金を受給せずに死亡した場合、60〜65歳の妻に夫の老齢基礎年金×3/4を支給(5年間)。死亡一時金との選択制。

FP試験ポイント:「遺族基礎年金は子のある配偶者または子が受給者」「遺族厚生年金は報酬比例部分の3/4」「寡婦年金と死亡一時金は選択制」は頻出です。

併給調整

同一人が複数の年金を受給できる場合、原則として1人1年金ですが、一定の場合に複数の年金を受給できます。

  • 原則(同一支給事由)

    老齢・障害・遺族の同じ事由の基礎年金と厚生年金は合わせて受給できます(2階建て)。例:老齢基礎年金+老齢厚生年金。

  • 65歳以降の特例的な併給

    • 老齢基礎年金+遺族厚生年金:65歳以降は受給可能(65歳未満は不可)。

    • 老齢基礎年金+障害厚生年金:65歳以降は受給可能。

  • 支給停止の原則

    65歳未満は障害年金と老齢年金、遺族年金と老齢年金(または障害年金)は原則として選択制(どちらか一方のみ受給)。

FP試験ポイント:「65歳以上は老齢基礎年金+遺族厚生年金の併給が可能」は特に重要な論点です。

離婚時年金分割

離婚した場合に、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録(標準報酬)を夫婦間で分割できる制度です。基礎年金は分割されません。

  • 合意分割(2007年4月〜)

    当事者の合意(または裁判所の決定)によって、婚姻期間中の標準報酬を最大50%まで分割できます。離婚後2年以内に請求が必要。

  • 3号分割(2008年5月〜)

    2008年4月1日以降の婚姻期間中に第3号被保険者であった期間の相手方(第2号)の標準報酬を、一方の請求だけで1/2ずつに分割できます。合意不要。

FP試験ポイント:「合意分割は最大50%・2年以内請求」「3号分割は2008年4月以降の期間・自動的に1/2分割」の区別が重要です。

年金の請求手続

公的年金は自動的に支給されるものではなく、受給者が請求(裁定請求)する必要があります。

  • 請求先

    • 第1号被保険者のみ:住所地の市区町村役場。

    • 厚生年金の加入期間がある場合:年金事務所(日本年金機構)。

  • 時効

    老齢・障害・遺族の各年金の受給権が発生してから5年間請求しなかった場合、時効(消滅時効)により過去分の受給権が消滅します。

  • ねんきん定期便・ねんきんネット

    加入状況や年金見込み額を定期的に確認できるサービス。35・45・59歳には詳細版が送付されます。

年金生活者支援給付金

年金生活者支援給付金とは、公的年金等の収入と他の所得を合わせた額が一定基準以下の年金受給者に対して、年金に上乗せして給付される制度です(2019年10月から消費税率引き上げ(10%)の際に導入)。

  • 老齢年金生活者支援給付金

    要件:65歳以上で老齢基礎年金を受給・前年の公的年金等収入金額+その他の所得が低い場合(前年の所得が基準額以下)。
    給付額は保険料納付済期間と保険料免除期間に応じて算出されます。

  • 障害年金・遺族年金生活者支援給付金

    障害基礎年金・遺族基礎年金の受給者で、前年の所得が基準額以下の場合に支給されます。

年金生活者支援給付金は日本年金機構から対象者に案内が届きます。別途請求が必要です。

6. 企業年金・個人年金等

企業年金の全体像

企業年金とは、会社が従業員のために設ける退職後の所得保障制度です。公的年金(1・2階部分)に上乗せする3階部分にあたります。大きく確定給付型(DB)確定拠出型(DC)に分かれます。

  • 確定給付型(DB)と確定拠出型(DC)の違い

    • 確定給付型(DB):あらかじめ給付額(受取額)が決まっている。運用リスクは会社が負う。

    • 確定拠出型(DC):拠出額(掛金)が決まっており、給付額は運用結果次第。運用リスクは加入者(従業員)が負う。

  • 主な企業年金の種類

    • 確定給付企業年金(DB):規約型・基金型の2種類。

    • 企業型確定拠出年金(企業型DC):会社が設立・掛金を拠出。

    • 中小企業退職金共済(中退共):中小企業向けの共済型退職金制度。

確定給付型年金(確定給付企業年金・DB)

確定給付企業年金(DB)とは、あらかじめ定められた計算式に基づいて将来の給付額が決まる企業年金です。2002年に施行された確定給付企業年金法に基づきます。

  • 規約型と基金型

    • 規約型:労使合意による年金規約を厚生労働大臣が承認。信託銀行・保険会社等に資産を管理・運用させます。

    • 基金型:企業から独立した法人(企業年金基金)を設立して年金を管理・運用します。

  • 給付の内容

    老齢給付金(原則60歳以降・年金または一時金で受給)・脱退一時金(一定の要件で中途脱退時に受給可)・遺族給付金などがあります。

確定拠出年金(DC)

確定拠出年金(DC)とは、毎月の掛金が決まっており、加入者が自ら運用商品を選択・運用し、その結果によって将来の給付額が決まる年金制度です。企業型DC個人型DC(iDeCo)があります。

  • 企業型DC(企業型確定拠出年金)

    会社が掛金を拠出し、従業員が運用指図を行います。掛金の上限:月額55,000円(DBなど他の企業年金がない場合)・他の企業年金がある場合は27,500円。加入者が一定額を上乗せできるマッチング拠出の制度もあります。

  • 個人型DC(iDeCo)

    国民年金被保険者であれば原則誰でも加入可能(一部例外あり)。掛金は全額小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象。掛金の上限は職業・加入状況によって異なります(自営業者:月額68,000円が上限)。

  • DCの共通事項

    • 原則60歳以降に受給開始(通算加入期間が10年未満の場合は受給開始可能年齢が繰り下がる)。

    • 運用益が非課税(運用中の利益に課税なし)。

    • 受取時の優遇:一時金受取は退職所得控除、年金受取は公的年金等控除が適用。

    • 途中解約不可:原則として60歳前の資産の引き出しはできません。

FP試験ポイント:「DCは掛金全額所得控除・運用益非課税・受取時優遇の三重優遇」「iDeCoは原則60歳まで引き出せない」は頻出です。

その他の年金・退職金制度

企業年金以外にも、中小企業向けや自営業者向けの退職金・年金制度があります。

  • 中小企業退職金共済制度(中退共)

    独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営する中小企業向け退職金制度。会社が掛金を全額負担し、退職時に従業員に直接支払われます。掛金は全額損金算入。加入対象:一定規模以下の中小企業。

  • 小規模企業共済制度

    小規模企業の経営者・個人事業主の退職金積立制度(独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営)。掛金は月額1,000円〜70,000円で全額小規模企業共済等掛金控除の対象。廃業・退職時に共済金として受け取ります(退職所得扱い)。

  • 国民年金基金

    第1号被保険者(自営業者等)が国民年金に上乗せして加入できる年金制度。掛金は全額社会保険料控除の対象。iDeCoとの合算で月額68,000円が上限。確定年金・終身年金などの給付タイプを選択できます。

  • 生命保険等を活用した非適格年金制度

    法律に基づく適格年金とは異なる、生命保険・信託等を活用した社内の退職給付制度。現在は新規設定が少なく、既存制度の適格年金は廃止されました。

個人年金

個人年金とは、個人が老後の所得保障を目的として、保険会社・銀行・証券会社等の金融機関との契約によって積み立てる私的年金です。

  • 個人年金の主な分類

    • 定額個人年金:運用利率が予定利率で固定。受取額が契約時に確定しており安定的。

    • 変額個人年金:保険料を株式・債券等で運用し、運用成績によって受取額が変動。インフレ対策になる一方、元本割れリスクあり。

  • 受取期間による分類

    • 確定年金:一定期間(10年・15年等)受け取れる。受取人が死亡した場合、残期間分を遺族が受け取れる。

    • 終身年金:生存している限り一生涯受け取れる。長生きリスクに有効。

    • 有期年金:一定期間、生存している間のみ受け取れる(死亡時は支払終了)。

  • 税制適格個人年金(個人年金保険料控除の対象)

    年金受取人が契約者または配偶者・保険料払込期間10年以上・年金受取開始年齢60歳以上・年金受取期間10年以上の要件を満たす場合、個人年金保険料として生命保険料控除(個人年金保険料控除)が適用されます(上限4万円)。

財形年金・財形貯蓄制度

財形貯蓄制度とは、勤労者が給与から天引きで積み立てる国と会社が支援する積立制度です。財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄・一般財形貯蓄の3種類があります。

  • 財形年金貯蓄

    55歳未満の勤労者が加入可。60歳以降に5年以上の年金として受け取る場合、財形住宅貯蓄と合わせて元本550万円まで(保険型は385万円まで)の利子が非課税。目的外払出しは課税(過去5年分の利子税が課される)。

  • 一般財形貯蓄

    使用目的は自由。非課税の特典はありません。

FP試験ポイント:「財形年金+財形住宅の合計550万円(保険型は385万円)まで非課税」「一般財形は非課税なし」の区別が頻出です。

7. 年金と税金

公的年金等に係る税金(課税の仕組み・公的年金等の範囲)

公的年金(老齢年金)は雑所得として所得税・住民税の課税対象となります。ただし受給額によっては非課税となる場合があります。

  • 公的年金等の範囲

    • 公的年金等に含まれるもの:老齢基礎年金・老齢厚生年金・企業年金(確定給付企業年金・企業型DCの年金受取)・iDeCoの年金受取・小規模企業共済の共済金(年金型)・国民年金基金の年金など。

    • 非課税の年金:障害年金・遺族年金は非課税です(所得税・住民税がかかりません)。

  • 公的年金等の課税の仕組み

    雑所得(公的年金等)=収入金額-公的年金等控除額
    公的年金等控除額は受給者の年齢(65歳未満・65歳以上)と収入金額によって決まります。65歳以上で年金収入が一定額以下の場合は非課税となります。

  • 源泉徴収と確定申告

    年間108万円超(65歳未満は60万円超)の老齢年金には、日本年金機構が源泉徴収(所得税)を行います。
    公的年金等の収入が年間400万円以下かつ他の所得が20万円以下の場合は、確定申告が不要です(ただし医療費控除等を受ける場合は申告が必要)。
    扶養親族等申告書:年金受給者は日本年金機構に提出することで、源泉徴収税額を少なくできます(控除の反映)。

FP試験ポイント:「障害年金・遺族年金は非課税」「老齢年金は雑所得として課税」「年金収入400万円以下・他所得20万円以下は確定申告不要」は頻出です。

個人年金に係る税金(掛金・受取金の取り扱い)

個人年金保険の保険料(掛金)と受取金には、それぞれ異なる税の取り扱いが適用されます。

  • 掛金(保険料)の税の取り扱い

    税制適格個人年金(払込期間10年以上・受取開始60歳以上・受取期間10年以上・受取人が契約者または配偶者の要件を満たすもの):個人年金保険料控除(生命保険料控除の一区分)の対象。所得税で最大4万円・住民税で最大2.8万円の控除。

  • 受取金(年金・一時金)の税の取り扱い

    • 年金受取(契約者=受取人):毎年受け取る年金のうち、必要経費(年間年金額に対応する払込保険料)を超える部分が雑所得として課税。

    • 一時金受取(契約者=受取人):受取額から払込保険料を差し引いた差益部分が一時所得として課税(差益-50万円の特別控除後×1/2が課税対象)。

  • 財形年金の税の取り扱い

    財形年金貯蓄で積み立てた資金を年金として受け取る場合:財形住宅貯蓄と合わせて元本550万円まで(保険型は385万円まで)の利子・収益が非課税。規定の方法(年金形式)以外で払い出すと、過去5年分の利子等に課税されます。

FP試験ポイント:「年金受取は雑所得・一時金受取は一時所得」「契約者≠受取人は年金受給権に贈与税→2年目以降雑所得」「財形年金550万円まで非課税」の3点が頻出です。

企業年金に係る税金

企業年金(確定給付企業年金・確定拠出年金等)の掛金・運用・受取の各段階での税の取り扱いです。

  • 掛金拠出時

    • 会社が拠出する掛金:全額損金算入(法人税の課税対象外)。従業員側は給与課税なし。

    • iDeCoの掛金:全額小規模企業共済等掛金控除(所得控除)として所得税・住民税の課税所得から控除。

    • マッチング拠出分(企業型DC):従業員が上乗せした掛金も全額小規模企業共済等掛金控除の対象。

  • 運用中

    確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)の運用益は非課税(通常の金融商品なら約20.315%課税される運用益が非課税となる)。確定給付企業年金の運用益も特別法人税(現在凍結中)を除き課税されません。

  • 受取時

    • 一時金(退職一時金)として受取退職所得として課税。退職所得控除(勤続20年以下:40万円×年数、20年超:800万円+70万円×(年数-20))が適用され、さらに1/2課税で税負担が大幅に軽減。

    • 年金として受取雑所得(公的年金等)として課税。公的年金等控除が適用。

FP試験ポイント:「DCの三重優遇(掛金控除・運用益非課税・受取時優遇)」「一時金は退職所得・年金は雑所得」「iDeCoと退職金の同年受取は退職所得控除の調整に注意」は頻出です。

8-1. 住宅取得プランニング(住宅ローン)

住宅取得の考え方

住宅取得は人生最大の買い物のひとつです。購入か賃貸かの選択や、新築・中古・マンション・戸建てなど住宅の種類、ライフステージや家族構成を踏まえた検討が必要です。

  • 住宅取得に必要な資金の把握

    物件価格のほか、諸費用(仲介手数料・登記費用・各種税金等)が物件価格の3〜7%程度かかります。頭金は一般的に物件価格の2割程度が目安とされますが、フラット35等では頭金ゼロでも利用できます。

  • 無理のない返済額の目安

    年間返済額は年収の25〜30%以内が目安とされています(返済負担率)。

住宅購入時の諸費用

住宅の購入には物件価格以外にさまざまな諸費用がかかります。主な費用を把握して資金計画に組み込む必要があります。

  • 仲介手数料

    不動産会社への手数料。上限は売買代金×3%+6万円(税別)(売買代金400万円超の場合)。

  • 登記費用

    所有権移転登記・抵当権設定登記の登録免許税と司法書士報酬。登録免許税は一定の軽減税率が適用される場合があります。

  • 住宅ローン関連費用

    融資事務手数料・保証料・火災保険料・団体信用生命保険料(フラット35は別途)など。

  • 不動産取得税(取得後)

    不動産取得後に都道府県から課税される地方税。税率は固定資産税評価額×3%(住宅・土地)。一定の軽減措置があります。

住宅取得のための自己資金の形成プラン

住宅購入に向けた自己資金(頭金)を計画的に準備するための方法です。

  • 財形住宅貯蓄

    勤労者が給与から積み立てる財形貯蓄の一種。財形年金貯蓄と合わせて元本550万円までの利子が非課税。住宅取得・増改築に利用することが条件。

  • 住宅取得等資金の贈与税非課税特例

    直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の非課税特例(省エネ等住宅:1,000万円・その他:500万円/2024年度)。通常の暦年贈与110万円基礎控除と組み合わせると最大1,110万円が非課税です。

住宅取得と税金

住宅の取得・保有・売却の各段階で様々な税金が関わります。主なものを把握しておく必要があります。

  • 取得・保有段階の税金

    • 不動産取得税:取得後に課税(固定資産税評価額×3%)。軽減措置あり。

    • 固定資産税:毎年1月1日現在の所有者に課税。固定資産税評価額×1.4%(標準税率)。住宅用地の特例(小規模住宅用地は1/6・一般住宅用地は1/3)あり。

    • 都市計画税:市街化区域内の不動産に課税。固定資産税評価額×最高0.3%

  • 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)

    住宅ローンを利用して住宅を取得した場合、年末ローン残高の0.7%を所得税(+住民税)から控除。控除期間は新築住宅等13年間・中古住宅10年間。本人の合計所得金額2,000万円以下が要件。初年度は確定申告が必要(2年目以降は年末調整で可)。

FP試験ポイント:「固定資産税=評価額×1.4%・小規模住宅用地は1/6」「住宅ローン控除=0.7%・13年(新築)・所得2,000万円以下」は頻出です。

住宅ローンの仕組み

住宅ローンは長期・高額の借入れであるため、金利・返済方法・返済期間を十分に理解した上で選択することが重要です。

  • 元利均等返済と元金均等返済

    • 元利均等返済:毎月の返済額(元金+利息)が一定。返済初期は利息部分が多く元金の減りが遅い。家計管理がしやすい。

    • 元金均等返済:毎月の元金返済額が一定。返済初期の負担が大きいが、総支払利息は元利均等より少なくなる。

  • 金利の種類

    • 固定金利型:借入れ時の金利が返済終了まで変わらない。返済計画が立てやすい。

    • 変動金利型:市場金利に連動して定期的(通常半年ごと)に金利が見直される。低金利時は有利だが将来の上昇リスクあり。

    • 固定金利期間選択型:一定期間(3年・5年・10年等)は固定、その後は固定または変動を選択。

住宅ローンの種類と内容

住宅ローンには民間ローン・フラット35・財形住宅融資など複数の種類があります。

  • 民間住宅ローン

    銀行・信用金庫・保険会社・ノンバンク等が提供するローン。金利・審査基準・サービスは各金融機関によって異なります。

  • フラット35

    住宅金融支援機構と民間金融機関が提携した全期間固定金利の住宅ローン。金利は申込時点で固定(返済期間中変わらない)。融資限度額:8,000万円。頭金ゼロでも利用可能(頭金10%未満は金利が高め)。省エネ性能の高い住宅(フラット35S)はさらに低い金利が適用されます。

  • 財形住宅融資

    財形貯蓄を1年以上継続し残高50万円以上ある勤労者が利用できるローン。5年固定金利制(5年ごとに見直し)。融資額の上限:財形貯蓄残高の10倍以内かつ4,000万円以内。

FP試験ポイント:「フラット35は全期間固定・民間と機構の提携ローン・8,000万円上限」「財形住宅融資は財形残高の10倍・5年固定」の2点が頻出です。

住宅ローンの借換え

住宅ローンの借換えとは、現在の住宅ローンを別の金融機関のより条件の良いローンに切り替えることです。金利差・残高・残期間によって有利不利が異なります。

  • 借換えの有利不利の判断

    一般的に、現在の金利と借換え後の金利の差が1%以上・残高が1,000万円以上・残期間が10年以上ある場合に借換えの効果が高いとされています。

  • 借換えの費用

    現在のローンの繰上げ返済手数料・新ローンの事務手数料・保証料・登記費用(抵当権の抹消と新規設定)等がかかります。これらを差し引いても効果があるか試算することが重要です。

住宅ローンの繰上げ返済

繰上げ返済とは、毎月の返済とは別に元金の一部または全部を返済することです。利息の節約効果がある一方、手元資金の減少に注意が必要です。

  • 期間短縮型

    毎月の返済額はそのままで、返済期間を短縮する方法。利息の節約効果が大きい(繰上げた元金に対する残存期間分の利息がすべてなくなる)。

  • 返済額軽減型

    返済期間はそのままで、毎月の返済額を減らす方法。期間短縮型より利息の節約効果は小さいが、毎月の家計が楽になる。

  • 繰上げ返済時の注意点

    住宅ローン控除の適用を受けている場合、繰上げ返済で残高が減少すると翌年以降の控除額が減少します。繰上げ返済のタイミングを慎重に検討する必要があります。

FP試験ポイント:「期間短縮型は利息節約効果が大きい」「住宅ローン控除と繰上げ返済のトレードオフ」の2点が頻出です。

住宅の買換え・建替え・リフォーム・バリアフリー化等

ライフステージの変化に伴い、住み替え・建替え・リフォームを検討する場合の基本的な考え方です。

  • 住宅の買換え

    現在の住宅を売却して新たな住宅に買い換える場合、旧住宅の売却益・売却損に対する税制上の特例(居住用財産の3,000万円特別控除・買換えの特例等)の適用可否を検討します。

  • リフォーム・バリアフリー化

    増改築・バリアフリー改修・省エネ改修を行う場合、住宅ローンを利用したリフォームローンや、各種税制優遇(バリアフリー改修促進税制・省エネ改修促進税制)の活用を検討できます。

8-2. 資金計画(教育)

教育プランと教育費

子どもの教育費は住宅取得・老後資金と並ぶ「人生の三大支出」の一つです。学校の種別(公立・私立)や進路によって必要額が大きく異なるため、早期から計画的な準備が必要です。

  • 主な教育費の目安(文部科学省「子供の学習費調査」等より)

    • 幼稚園〜高校まで(15年間):すべて公立の場合:約574万円。すべて私立の場合:約1,838万円程度(年度により変動)。

    • 大学(4年間):国立大学:約250万円(入学金+授業料)。私立文系:約420万円程度。私立理系:約540万円程度。

  • 教育費の特徴

    教育費は進学の時期が概ね決まっているため、いつ・いくら必要かを把握しやすく、計画的な積立が可能です。大学入学時が最大の支出ピークになります。

教育資金の形成プラン

教育費は必要になる時期が明確なため、目標額・積立期間・運用利率から必要な積立額を計算し、適切な積立手段を選択することが重要です。

  • 主な積立手段

    • こども保険(学資保険):子どもの進学時期に合わせて満期金・祝い金が支払われる保険。保険料払込免除特則(被保険者=親が死亡・高度障害の場合に以後の保険料が免除)が付いているものが多い。

    • 低解約返戻金型終身保険:払込期間中は解約返戻金が低く設定されているが、払込満了後は増加する保険。教育費の積立に活用されることがある。

    • NISA(つみたて投資枠等):長期の積立投資で教育資金を形成する方法。運用成果が非課税になるメリットがある。

    • 教育資金の一括贈与の特例:直系尊属から30歳未満の子・孫への教育資金一括贈与(1,500万円まで非課税)。金融機関経由の信託等が必要(適用期限は延長中)。

学資保険の保険料払込免除特則は、親に万が一のことがあっても教育費の積立が続けられる点がメリットです。

教育ローン・奨学金

積立だけで教育費を賄えない場合は、教育ローンや奨学金を活用します。返済義務の有無・利率・対象を正確に把握することが重要です。

  • 国の教育ローン(日本政策金融公庫)

    融資限度額:子ども1人あたり350万円(一定の条件下で450万円)。金利:固定金利(年利1〜3%程度)。返済期間:最長18年。世帯年収に上限あり。在学中は利息のみ返済も可能。

  • 民間の教育ローン

    銀行・信用金庫等が提供。金利・限度額は各金融機関により異なります。国の教育ローンと比べ金利が高めのことが多い。

  • 日本学生支援機構(JASSO)の奨学金

    • 給付型奨学金:返済不要。住民税非課税世帯等の低所得世帯の学生が対象(2020年〜拡充)。

    • 第一種奨学金(無利子):成績・家計状況の要件あり。返済不要ではなく貸与型(返済義務あり)。

    • 第二種奨学金(有利子):第一種より要件が緩やか。利率は年3%上限の変動または固定から選択。

FP試験ポイント:「国の教育ローン(公庫)の限度額350万円・最長18年」「第一種奨学金は無利子・貸与型(返済義務あり)」「給付型奨学金は返済不要」の区別が頻出です。

8-3. 資金計画(リタイアメント)

リタイアメントプランニング(老後生活の必要資金と準備)

リタイアメントプランニングとは、退職後の生活設計と必要な資金を把握し、現役時代から準備を進めるためのプロセスです。公的年金だけでは生活費を賄えないケースが多いため、自助努力による準備が不可欠です。

  • 老後の生活費の把握

    総務省「家計調査」によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上・妻60歳以上)の毎月の平均支出は約26〜28万円程度。これに対して公的年金等の収入を差し引いた不足分が毎月生じる場合、老後の期間を通じて大きな資金需要となります。

  • 老後資金の準備手段

    • 公的年金の繰下げ受給:65歳以降に繰下げるほど月0.7%増額(最大75歳まで84%増)。長生きするほど有利になります。

    • iDeCo・企業型DCの活用:掛金の所得控除・運用益非課税・受取時優遇の三重優遇を活用した積立。

    • NISA(成長投資枠・つみたて投資枠):非課税での長期・分散投資による資産形成。老後資金として積み立てつつ、必要時に非課税で引き出せます。

    • 退職金・企業年金:退職所得控除で税優遇される退職一時金や、企業年金の活用。

  • リタイアメント前後の保険の見直し

    退職後は収入が減少するため、過剰な保険料負担は避けるべきです。死亡保障の必要性は低下する一方、医療・介護保障のニーズが高まります。また健康保険は退職後に国民健康保険への切り替えや任意継続(最長2年間)を選択します。

FP試験ポイント:「老後資金の不足額計算に年金現価係数を使う」「繰下げ受給は月0.7%増額」「60〜65歳の年金なし期間の資金確保が盲点」の3点が頻出です。

9. ローンとカード

クレジットカードの種類と特徴

クレジットカードは、加盟店での商品・サービスの購入代金を後払いで決済できる仕組みです。カード会社(イシュアー)が立替払いを行い、後日利用者に請求します。

  • カードの発行主体による分類

    • 銀行系カード:都市銀行・地方銀行等が発行または提携。信用力が高く審査が厳しめ。

    • 流通系カード:百貨店・スーパー等が発行。自社店舗での特典・ポイントが充実。

    • 信販系カード:信販会社(JCB・オリコ等)が発行。ショッピングローン機能を持つものも多い。

    • 交通系カード:交通機関(JR・地下鉄等)が発行。定期券機能・電子マネー機能と一体化。

    • 提携カード:カード会社とブランド・企業が提携して発行。特定の加盟店での特典が充実。

  • 国際ブランド

    Visa・Mastercard・JCB・American Express・Diners Club など。同一ブランドであれば世界中の加盟店で利用できます。

  • 付帯機能の種類

    • ポイント・マイル:利用金額に応じてポイント・マイルが貯まる。

    • 旅行保険・ショッピング保険:海外・国内旅行傷害保険やショッピング購入品の損害補償が付帯するカードが多い。

    • ETCカード:高速道路のETC利用に対応。

クレジットカードの利用上の留意点

クレジットカードは便利な反面、支払方法・金利・不正利用等に関する注意が必要です。

  • 主な支払方法

    • 一括払い(翌月払い):手数料なし。最もシンプルな支払方法。

    • 分割払い:3回・6回・12回等に分けて支払う。手数料(実質年率15%程度)がかかります。

    • リボルビング払い(リボ払い):毎月一定額を支払う方式。残高に対して高い手数料(実質年率15〜18%程度)がかかり、残高がなかなか減らないリスクあり。

    • 2回払い・ボーナス払い:手数料なしのカードが多い。

  • キャッシング

    ATMで現金を借りる機能。高い金利(実質年率18%前後が上限)がかかります。貸金業法上、年収の3分の1を超える借入はできません(総量規制)。

  • クレジットカードの不正利用とセキュリティ

    不正利用の被害にあった場合は、速やかにカード会社に連絡することで一定の補償を受けられます。三者への譲渡・担保設定は禁止されています。

FP試験ポイント:「リボ払いは実質年率15〜18%・残高が減りにくい」「キャッシングは年収の3分の1が上限(総量規制)」「抗弁の接続はクレジット払いの場合に購入者を保護する制度」は頻出です。

キャッシュレス決済等の新たな決済手段

現金を使わないキャッシュレス決済が急速に普及しています。主な決済手段の仕組みと特徴を把握しておく必要があります。

  • 電子マネー

    • プリペイド型(前払い):Suica・PASMO・nanaco・WAON等。事前にチャージして利用。チャージ残高は原則保護されない(預金保険の対象外)。

    • ポストペイ型(後払い):iD・QUICPay等。クレジットカードと紐づけて後払いする方式。

  • QRコード・バーコード決済

    PayPay・楽天Pay・au Pay・d払い等。スマートフォンのアプリを使ってQRコード・バーコードで決済。チャージ残高型・クレジットカード紐づけ型・銀行口座紐づけ型などがある。ポイント還元キャンペーンが充実していることが多い。

  • デビットカード

    利用と同時に預金口座から即時引き落とされるカード。Jデビット(国内規格)とVisaデビット・Mastercardデビット(国際ブランド付き)がある。与信審査不要で作りやすい反面、口座残高を超えて利用できない。

  • プリペイドカード

    事前に金額をチャージして使うカード(Visaプリペイド・Mastercard プリペイド等)。与信審査不要・使いすぎ防止に有効。

「電子マネーのチャージ残高は預金保険の対象外」「デビットカードは即時引落し・残高の範囲内でのみ利用可能」「QRコード決済は主に前払い・後払い・即時払いの三方式」の区別が重要です。

各種消費者向け無担保ローンの仕組みと特徴

住宅ローン以外の消費者向けローンです。金利が高めで審査が比較的簡易なものから、低金利で審査が厳しいものまで様々な種類があります。

  • 銀行系カードローン・フリーローン

    銀行が提供する個人向け無担保ローン。消費者金融より金利は低め(実質年率3〜14%程度)だが審査に時間がかかる場合がある。総量規制の対象外(銀行法適用)。

  • 消費者金融(サラ金)

    即日融資・少額から利用可能な反面、金利が高い(実質年率最大18%:貸金業法の上限金利)。貸金業法の適用を受け、年収の3分の1を超える貸付は禁止(総量規制)。

  • 目的別ローン

    • マイカーローン:自動車購入専用。フリーローンより低金利。

    • 教育ローン:教育費専用(国の教育ローン・銀行の教育ローン等)。

    • 医療・介護ローン:医療費・介護費用専用。

FP試験ポイント:「消費者金融の上限金利18%(貸金業法)」「総量規制=年収の3分の1まで(銀行ローンは対象外)」「グレーゾーン金利は2010年に撤廃済み」の3点が頻出です。

10. ライフプランニングと資金計画の最新の動向

資産所得倍増プランとNISA・iDeCoの拡充

政府の「資産所得倍増プラン」に基づき、2024年から新NISAが開始され、iDeCoも拡充されました。「貯蓄から投資へ」の流れを加速させる施策として、FPとして正確な制度理解が求められます。

  • 新NISAの主な変更点(2024年〜)

    • 非課税保有期間:無期限化(旧:一般NISA5年・つみたてNISA20年)。

    • 年間投資枠:つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円=最大360万円

    • 生涯非課税限度額1,800万円(うち成長投資枠の上限1,200万円)。

    • 売却後の枠の再利用:翌年に取得価額分の枠が復活(旧NISAにはなかった機能)。

  • iDeCoの拡充(2024年12月〜)

    企業型DCとiDeCoの合算上限が月額55,000円(年金払い給付なし企業)に拡大。受給開始年齢の上限が75歳まで延長。

年金制度の改正動向

少子高齢化・就業形態の多様化に対応した年金制度の見直しが進んでいます。

  • 社会保険の適用拡大

    短時間労働者への厚生年金・健康保険の適用拡大。対象事業所規模:2016年10月(501人以上)→2022年10月(101人以上)→2024年10月(51人以上)と段階的に拡大。将来的にはさらなる拡大(従業員数要件の撤廃等)も議論されています。

  • 在職老齢年金の見直し

    65歳以上の在職老齢年金の支給停止基準額が50万円(月額)に統一されました(2022年4月〜、従来は60〜64歳が28万円・65歳以上が47万円)。高齢者の就労意欲を損なわない制度への見直しです。

  • 繰下げ受給の上限引き上げ

    老齢基礎年金・老齢厚生年金の繰下げ受給の上限年齢が70歳から75歳に引き上げられました(2022年4月〜)。75歳まで繰下げると最大84%増額

育児休業給付の拡充・子育て支援の強化

少子化対策として、育児休業給付の拡充と子育て支援施策が強化されています。

  • 育児休業給付率の引き上げ(2025年4月〜)

    両親ともに育児休業を取得した場合、子の出生後一定期間内に給付率が休業前賃金の80%相当(手取りでほぼ10割)に引き上げられる予定です(一定の要件あり)。

  • 産後パパ育休(出生時育児休業)の活用促進

    2022年10月から施行された産後パパ育休(子の出生後8週間以内に最大4週間取得・2回分割可)の活用が推進されています。2023年4月〜従業員1,000人超の企業は育休取得率の公表が義務化されました。

  • 児童手当の拡充(2024年10月〜)

    所得制限の撤廃・支給対象年齢の引き上げ(中学生まで→高校生年代まで)・第3子以降の加算増額(月3万円)など。子育て世帯への経済支援が強化されています。

高齢者雇用・リタイアメントプランの動向

高齢化の進展とともに、65歳以降も働き続ける環境整備や、多様な老後の選択肢が広がっています。

  • 高年齢者雇用安定法の改正

    70歳までの就業機会確保が事業主の努力義務とされました(2021年4月〜)。対応策として①定年の70歳までの延長、②定年廃止、③継続雇用制度の70歳までの延長、④他企業への再就職支援、⑤業務委託契約等の締結、⑥社会貢献活動への参加支援の6つの措置が示されています。

  • リバースモーゲージ

    自宅を担保に金融機関から資金を借り入れ、毎月の生活費等に充てる資金調達手段。死亡時または契約終了時に自宅を処分して一括返済します。メリット:自宅に住み続けながら老後資金を確保できる。デメリット:住宅価格の下落リスク・長生きリスク(長生きすると担保不足になる可能性)。

ファイナンシャル・プランニング
6つの係数

終価係数 : 元本を一定期間一定利率で複利運用したとき、将来いくら になるかを計算するときに利用します。

現価係数 : 将来の一定期間後に目標のお金を得るために、現在いくら の元本で複利運用を開始すればよいかを計算するときに利用します。

年金終価係数 : 一定期間一定利率で毎年一定金額を複利運用で 積み立て たとき、将来いくら になるかを計算するときに利用します。

年金現価係数 : 元本を一定利率で複利運用しながら、毎年一定金額を一定期間 取り崩し ていくとき、現在いくら の元本で複利運用を開始すればよいかを計算するときに利用します。

減債基金係数 : 将来の一定期間後に目標のお金を得るために、一定利率で一定金額を複利運用で 積み立て るとき、毎年いくら ずつ積み立てればよいかを計算するときに利用します。

資本回収係数 : 元本を一定利率で複利運用しながら、毎年一定金額を一定期間 取り崩し ていくとき、毎年いくら ずつ受け取りができるかを計算するときに利用します。

積み立て&取り崩しモデルプラン

積立金額→年金額の計算 : 年金終価係数、終価係数、資本回収係数を利用して、複利運用で積み立てた資金から、将来取り崩すことのできる年金額を計算します。

年金額→積立金額の計算 : 年金現価係数、現価係数、減債基金係数を利用して、複利運用で将来の年金プランに必要な資金の積立金額を計算します。


住宅ローン計算ツール

NISA / iDeCo 積立シミュレーター

ポートフォリオ効率フロンティア可視化ツール


ファイナンシャル・プランニング
債券利回り計算(単利)

最終利回り計算(単利) : 債券を購入時点から、最終償還日まで保有していた場合に得られる収益の利回りを単利にて計算します。

所有期間利回り計算(単利) : 債券の購入時点から、最終償還日前の売却時点までの所有期間に得られる収益の利回りを単利にて計算します。