1. わが国の税制
わが国の税制・税法体系
租税法律主義に基づき、税金は国会が制定した法律によってのみ課すことができます。2級では主要な税法の体系と各税法の位置づけを正確に把握する必要があります。
税の種類
税金は「国税か地方税か」「直接税か間接税か」「申告納税か賦課課税か」の3軸で整理できます。2級では各税の位置づけを体系的に理解する必要があります。
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国税と地方税の主な税目
国税:所得税・法人税・相続税・贈与税・消費税・印紙税・登録免許税・関税など。
道府県税:個人住民税(道府県民税)・法人住民税(道府県分)・個人事業税・法人事業税・不動産取得税・自動車税など。
市町村税:個人住民税(市町村民税)・法人住民税(市町村分)・固定資産税・都市計画税・軽自動車税など。
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直接税と間接税
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申告納税方式と賦課課税方式
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税負担の軽重による分類
2. 所得税の仕組み
所得税の定義と基本的事項
所得税とは、個人が1年間(暦年)に得た所得に対して課される国税です。超過累進税率(5〜45%の7段階)が適用され、所得が多いほど高い税率がかかります。
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税率と速算表
税額=課税所得金額×税率-控除額(速算表の控除額)
主な速算(2024年度):
・195万円以下:5%(控除0円)
・195万円超330万円以下:10%(控除97,500円)
・330万円超695万円以下:20%(控除427,500円)
・695万円超900万円以下:23%(控除636,000円)
・900万円超1,800万円以下:33%(控除1,536,000円)
・1,800万円超4,000万円以下:40%(控除2,796,000円)
・4,000万円超:45%(控除4,796,000円)
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納税義務者の範囲(★2級のみ)
居住者(無制限納税義務者):国内に住所あり、または1年以上居所がある個人。国内外すべての所得が課税対象。
非居住者(制限納税義務者):居住者以外の個人。国内源泉所得のみ課税対象。
非永住者:居住者のうち、日本国籍を持たず過去10年以内に国内在住期間が5年以下の者。国内源泉所得と国外から国内への送金分のみ課税。
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納税地
原則として1月1日現在の住所地。住所がない場合は居所地。国内に住所・居所がない場合は勤務地等。
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収入金額・必要経費・非課税所得
収入金額:源泉徴収前の総受取額。権利確定主義(権利が確定した時点で収入に計上)が原則。
必要経費:所得を得るために直接要した費用。事業所得・不動産所得で計上。家事費(私的費用)は算入不可。
非課税所得:通勤手当(月15万円まで)・遺族年金・傷病手当金・雇用保険の失業等給付・損害保険金(実損補てん部分)・宝くじ当選金など。
所得税の計算手順
所得税の計算は5段階の手順で行います。2級では各ステップの意味と数値の流れを計算問題の中で追える能力が求められます。
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STEP 1:各種所得金額の計算
10種類の所得区分ごとに所得金額を算出。各所得の計算式は「各種所得の内容」を参照。
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STEP 2:損益通算・繰越控除
不・事・山・譲の損失を他の所得と相殺して総所得金額等を算出。
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STEP 3:所得控除の適用
総所得金額等から15種類の所得控除を差し引いて課税総所得金額を算出。
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STEP 4:税額の計算
課税総所得金額×超過累進税率=算出税額。速算表の控除額を差し引いて計算します。
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STEP 5:税額控除・源泉徴収税額の精算
算出税額から税額控除(住宅ローン控除・配当控除等)を差し引き→復興特別所得税額(×2.1%)を加算→源泉徴収税額・予定納税額を差し引いた残額が納付税額(または還付額)。
税額の計算方法・総合課税と分離課税
課税方式は総合課税・申告分離課税・源泉分離課税の3種類があります。同一の所得でも課税方式の選択によって税負担が変わる場合があります。
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総合課税
給与所得・事業所得・不動産所得・一時所得・雑所得等を合算して超過累進税率を適用。所得が多いほど高税率がかかります。配当所得は申告分離・総合・申告不要から選択可。
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申告分離課税
他の所得と切り離して一定税率を適用し確定申告で納税。
主な対象:土地・建物の譲渡所得(短期39.63%・長期20.315%)、株式等の譲渡所得(20.315%)、先物取引の雑所得(20.315%)、山林所得(5分5乗方式)など。
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源泉分離課税
支払い時に20.315%を天引きして課税完結。預貯金利子・一般公社債の利子等が対象。申告不要で確定申告しても還付を受けられません。
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租税特別措置法
本則の税率・控除以外に特別な優遇措置を定める法律。一時的な政策効果を目的とするため、毎年の税制改正で見直されます。居住用財産の3,000万円特別控除・軽減税率の特例などが根拠法令。
復興特別所得税
2013年から2037年まで、所得税額に2.1%を乗じた金額が復興特別所得税として追加課税されます。源泉徴収・申告納税ともに適用されます。
3. 各種所得の内容
利子所得
利子所得とは、預貯金・公社債の利子、公社債投資信託の収益分配金などから生じる所得です。必要経費の控除は認められません。
2級重要ポイント:「一般公社債は源泉分離課税(損益通算不可)」と「特定公社債等は申告分離課税(損益通算可能)」の区別が頻出です。
配当所得
配当所得とは、株式の配当金・投資信託の普通分配金・剰余金の分配などから生じる所得です。借入金で株式を取得した場合は借入金利子を控除できます。
不動産所得
不動産所得とは、土地・建物・船舶・航空機などの貸付けによって生じる所得です。
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計算式
不動産所得の金額=収入金額-必要経費
必要経費:固定資産税・損害保険料・減価償却費・修繕費・管理費・借入金利息など。
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損益通算の制限
不動産所得の赤字は他の所得と損益通算できますが、土地取得のための借入金利息に相当する部分の赤字は損益通算の対象外です。建物取得のための借入金利息は通算可能です。
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事業的規模と非事業的規模
貸付け規模が5棟10室基準(一戸建て5棟以上または部屋数10室以上)を満たす場合は事業的規模とみなされ、青色申告特別控除の最大65万円・事業専従者給与の全額必要経費算入等の特典が受けられます。非事業的規模では特別控除は10万円です。
2級重要ポイント:「土地取得借入金利息の損益通算不可」「5棟10室基準」は2級の最頻出論点です。
事業所得
事業所得とは、農業・漁業・製造業・小売業・サービス業・自由業など、継続的・反復的に行う事業から生じる所得です。
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計算式
事業所得の金額=収入金額-必要経費(-青色申告特別控除額)
必要経費:仕入代金・人件費・地代家賃・減価償却費・広告宣伝費など。
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家事関連費の取扱い
自宅兼事務所の家賃・水道光熱費等の家事と業務の両方に関わる費用(家事関連費)は、業務遂行上必要な部分を合理的に按分した金額のみ必要経費に算入できます。
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青色事業専従者給与
青色申告者が生計を一にする配偶者等に支払う給与のうち、労務の対価として相当な金額は全額必要経費に算入できます(事前に税務署への届出が必要)。
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事業所得と雑所得の区別
副業収入が事業所得か雑所得かは、活動の継続性・反復性・規模・収益性等で判断。帳簿書類の保存がある場合は事業所得として認められやすくなります(2022年の国税庁通達改正)。
給与所得
給与所得とは、勤務先から受け取る給与・賞与・手当などから生じる所得です。
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計算式と給与所得控除額の速算
給与所得の金額=給与等の収入金額-給与所得控除額
主な速算(2024年度):
・収入162.5万円以下:55万円
・収入180万円以下:収入×40%-10万円
・収入360万円以下:収入×30%+8万円
・収入660万円以下:収入×20%+44万円
・収入850万円以下:収入×10%+110万円
・収入850万円超:195万円(上限)
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所得金額調整控除
給与収入850万円超で、本人が特別障害者・23歳未満の扶養親族あり・同一生計配偶者または扶養親族が特別障害者の場合に適用。(給与収入-850万円)×10%(最高15万円)を給与所得から控除。
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特定支出控除
通勤費・転居費・研修費・資格取得費・帰宅旅費・勤務必要経費(書籍・衣服・交際費:限度65万円)が対象。特定支出の合計が給与所得控除額の1/2を超える場合、超過部分を追加控除。
2級重要ポイント:給与所得控除の速算表は実際の計算問題で使用します。上限195万円(収入850万円超)は必須暗記です。
譲渡所得
譲渡所得とは、土地・建物・株式・ゴルフ会員権・貴金属などの資産の譲渡による所得です。対象資産によって課税方式・税率・特例が大きく異なります。
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土地・建物の譲渡所得(申告分離課税)
譲渡所得の金額=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)-各種特別控除
取得費が不明な場合は譲渡収入金額の5%を概算取得費として使用可能。
・短期譲渡所得(所有期間5年以下):税率39.63%(所得税30.63%+住民税9%)
・長期譲渡所得(所有期間5年超):税率20.315%(所得税15.315%+住民税5%)
※所有期間は譲渡した年の1月1日現在で判定。
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株式等の譲渡所得(申告分離課税)
申告分離課税(20.315%)。上場株式等の譲渡損失は同年の配当所得(申告分離選択分)・利子所得(申告分離)と損益通算でき、控除しきれない損失は3年間繰越控除可能。
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総合課税の譲渡所得(一般動産・ゴルフ会員権等)
譲渡所得の金額=(総収入金額-取得費-譲渡費用)-特別控除50万円
・短期(所有5年以下):全額を他の所得と合算
・長期(所有5年超):1/2を他の所得と合算
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居住用財産の3,000万円特別控除(概要)
マイホームを売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例。所有期間の制限なし(ただし居住用であることが要件)。
2級重要ポイント:土地・建物の短期(39.63%)・長期(20.315%)の税率の違い、株式等の損益通算・繰越控除、「概算取得費5%」が頻出計算問題です。
一時所得
一時所得とは、継続的ではない一時的・偶発的な所得で、他の所得区分に当たらないものです。
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計算式
一時所得の金額=収入金額-収入を得るために支出した費用-特別控除額50万円
課税対象額=一時所得の金額×1/2(総合課税で他の所得に合算)
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主な該当例と計算例
例:生命保険の満期保険金400万円(払込保険料合計300万円)の場合
一時所得=400万円-300万円-50万円=50万円
課税対象額=50万円×1/2=25万円(総合課税の対象として他の所得に加算)
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50万円の特別控除の適用順序
複数の一時所得がある場合、すべての一時所得を合算してから50万円の特別控除を差し引きます。一時所得ごとに50万円が適用されるわけではありません。
2級重要ポイント:一時所得の計算(2段階:控除後×1/2)・特別控除50万円は一時所得全体で1回のみ適用される点が頻出です。
雑所得
雑所得とは、他の9種類の所得に当てはまらない所得です。公的年金等・副業収入・暗号資産の売却益・外貨預金の為替差益などが該当します。
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公的年金等の計算式
雑所得(公的年金等)=収入金額-公的年金等控除額
公的年金等控除額は年齢(65歳未満/以上)・収入金額・他の所得金額(1,000万円超かどうか)によって異なる。65歳以上で年金収入158万円以下は非課税(控除額が収入以上になるため)。
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業務・その他(副業収入等)
雑所得(業務・その他)=収入金額-必要経費
前々年の業務に係る雑所得の収入金額が1,000万円超の場合は収支内訳書の添付が必要。300万円超の場合は帳簿書類の保存が義務付けられています。
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損益通算・損失の繰越の制限
雑所得の赤字は他の所得との損益通算が一切できません。また損失の繰越控除も認められません。
2級重要ポイント:公的年金等控除額の計算(65歳前後の違い)・雑所得は損益通算不可・副業収入300万円超で帳簿保存義務は押さえましょう。
退職所得
退職所得とは、退職手当・一時恩給・iDeCoの一時金受取など、退職を契機に受け取る一時的な所得です。退職所得控除と1/2課税により税負担が大幅に軽減されます。
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退職所得の計算式
退職所得の金額=(退職収入金額-退職所得控除額)×1/2
※勤続年数5年以下の役員等の退職金は1/2を適用しない(短期退職手当等)。
※勤続年数5年以下の役員以外の短期退職手当は、300万円超の部分は1/2を適用しない。
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退職所得控除額の計算
例:勤続35年の場合 → 800万円+70万円×15年=1,850万円
退職金2,500万円なら:(2,500万円-1,850万円)×1/2=325万円が退職所得
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申告分離課税・申告書の提出
「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出すれば、正確な税額が源泉徴収され確定申告不要。提出しない場合は一律20.42%が源泉徴収され、確定申告で精算が必要になります。
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同一年内の複数の退職所得
同一年内に複数の退職金を受け取った場合(例:会社退職金+iDeCo一時金)は、勤続期間の重複がある場合に退職所得控除額の調整が必要です。
2級重要ポイント:退職所得控除額の計算(20年の境界)・×1/2課税・申告書提出で確定申告不要になる仕組みは計算問題として最頻出です。
山林所得
山林所得とは、取得から5年超の山林を伐採して売却したり、立木のまま譲渡することによって生じる所得です。5年以内の取得・譲渡は事業所得または雑所得です。
4. 損益通算
損益通算の仕組み
損益通算とは、一定の所得区分で生じた損失を他の黒字の所得と相殺して課税所得を減らす仕組みです。2級では損益通算ができる所得・できない所得・例外的に通算できない損失まで正確に把握する必要があります。
2級重要ポイント:「土地取得借入金利息相当額の損失は通算不可・建物取得分は通算可」は計算問題で必ず問われる区別です。
損益通算の順序と計算
損益通算は法令で定められた順序に従って行います。2級では通算の手順を追った計算問題が出題されます。
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第1次通算:経常所得グループ内
利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・雑所得の合計から赤字を差し引きます。同グループ内の赤字が黒字を上回る場合、超過損失を次のステップへ。
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第2次通算:山林所得・退職所得・譲渡所得との通算
第1次で残った損失は、譲渡所得(長期)→ 一時所得 → 山林所得 → 退職所得の順で通算します。また山林・譲渡・一時所得に損失がある場合は、経常所得グループと通算します。
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計算例
給与所得500万円・不動産所得▲200万円(うち土地取得借入金利息50万円)・事業所得▲100万円の場合:
通算できる損失=不動産(200万円-50万円)+事業所得100万円=250万円
総所得金額等=500万円-250万円=250万円
雑損失の繰越控除
雑損控除で控除しきれなかった損失(雑損失)は翌年以降3年間繰越控除できます。損失が生じた年と繰越控除を受ける各年の確定申告が必要です。
純損失の繰越控除・繰戻還付
損益通算を行っても控除しきれなかった損失(純損失)は、翌年以降に持ち越すか、前年に遡って還付を求めることができます。
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純損失の繰越控除(3年間)
純損失の金額を翌年以降3年間の総所得金額等から繰越控除できます。
・青色申告者:純損失の全額を繰り越せます。
・白色申告者:変動所得(漁獲・原稿料等)の損失または被災事業用資産の損失のみ繰越可能です。
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純損失の繰戻還付(青色申告者のみ)
青色申告者が生じた純損失を前年の所得に繰り戻し、前年分の所得税の還付を受ける制度。繰戻しできる期間は1年(前年のみ)です。
還付額=前年の課税所得×(繰り戻す損失÷前年の総所得金額等)×前年の税率(概算)
2級重要ポイント:「繰越3年(青色は全額・白色は限定)」「繰戻1年(青色のみ)」の違いは計算問題で問われます。
居住用財産に係る譲渡損失の繰越控除
マイホームを売却して損失が生じた場合に、損失を他の所得と損益通算し、通算しきれない損失を翌年以降3年間繰越控除できる特例です。住宅ローンの有無で適用される特例が異なります。
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特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(ローンあり)
主な要件:譲渡年1月1日現在で所有期間5年超・住宅ローン残高があること・合計所得金額3,000万円以下(各年)。
損益通算の範囲:住宅ローン残高から売却代金を差し引いた金額を上限として損益通算・繰越控除が可能。
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居住用財産の買換えの場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(買換えあり)
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共通の注意点
居住用3,000万円特別控除・軽減税率の特例との重複適用は不可。繰越控除を受ける各年も確定申告が必要。合計所得金額が3,000万円超の年は適用外。
上場株式等の譲渡損失の繰越控除
上場株式等の売却損失が申告分離課税の配当所得等との損益通算後も残る場合、翌年以降3年間、上場株式等の譲渡益・配当所得から繰越控除できます。
2級重要ポイント:「損失が生じた年・繰越控除を受ける各年ともに確定申告が必要」「特定口座(源徴あり)でも繰越控除は確定申告必要」は頻出の引っかけポイントです。
5. 所得控除
所得控除の仕組み
所得控除とは、課税所得金額の計算において総所得金額等から差し引く15種類の控除項目です。2級では各控除の適用要件・控除額・計算方法まで正確に把握する必要があります。
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所得控除の適用順序
課税所得金額=総所得金額等-所得控除の合計額
税額=課税所得金額×税率-税額控除額
控除の順序は法律で定められており、雑損控除→医療費控除→社会保険料控除…の順に適用されます。
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合計所得金額と総所得金額等の違い
合計所得金額:各所得金額を合計したもの(純損失・雑損失の繰越控除適用前)。配偶者控除・扶養控除・基礎控除等の適用要件に使用。
総所得金額等:損益通算・純損失の繰越控除を適用後の合計。雑損控除の計算等に使用。
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所得控除の種類(15種類)
雑損控除・医療費控除・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除・地震保険料控除・寄附金控除・配偶者控除・配偶者特別控除・障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除・扶養控除・基礎控除
雑損控除
雑損控除とは、災害・盗難・横領により生活に必要な資産が損害を受けた場合に適用される控除です。
医療費控除
医療費控除とは、自己または生計を一にする配偶者・親族の医療費が一定額を超えた場合に適用される控除です。
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控除額と計算式
控除額=(支払医療費合計額-保険等補てん額)-10万円(総所得金額等200万円未満の場合は総所得金額等×5%)
控除限度額:200万円
例:医療費30万円(保険金5万円)・総所得500万円の場合
控除額=(30万円-5万円)-10万円=15万円
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医療費に含まれるもの・含まれないもの
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セルフメディケーション税制(特例・選択適用)
一定の健康診断等を受けた者が、スイッチOTC医薬品等を購入した場合、購入費合計額-12,000円(最高88,000円)を控除できる特例。通常の医療費控除との選択適用です。
社会保険料控除
自己または生計を一にする配偶者・親族の社会保険料を支払った場合に、支払額の全額が控除されます。控除限度額はありません。
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済・企業型DC(マッチング拠出分)・iDeCo(個人型DC)・心身障害者扶養共済制度の掛金を支払った場合に、その全額が控除されます。
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iDeCoの拠出限度額(2024年度)
自営業者等(第1号):月額68,000円(年間816,000円)
会社員(企業型DCなし):月額23,000円(年間276,000円)
会社員(企業型DCあり):月額20,000円(年間240,000円)
公務員:月額12,000円(年間144,000円)
専業主婦(夫)等(第3号):月額23,000円(年間276,000円)
2024年12月からiDeCoの拠出限度額が引き上げられました。最新の限度額は試験直前に確認してください。
生命保険料控除
生命保険・介護医療保険・個人年金保険の保険料に対して適用される控除です。新旧制度の区別と控除限度額が2級の重要論点です。
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新制度(2012年1月1日以降の契約)の控除額計算
年間保険料に応じて以下の速算式で各区分の控除額を計算(所得税):
・20,000円以下:支払保険料全額
・20,000円超40,000円以下:支払保険料×1/2+10,000円
・40,000円超80,000円以下:支払保険料×1/4+20,000円
・80,000円超:40,000円(上限)
3区分(一般・介護医療・個人年金)合計の上限:所得税12万円・住民税7万円
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旧制度(2011年12月31日以前の契約)の控除額計算
一般生命保険料・個人年金保険料の2区分。各上限25,000円(住民税)・50,000円(所得税)。新旧混在時は合算して計算します(合計上限:所得税12万円)。
地震保険料控除
居住用家屋または生活用動産を対象とする地震保険料の全額(上限:所得税50,000円・住民税25,000円)が控除されます。火災保険料は対象外です。
配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者の所得に応じて適用される控除です。2017年の税制改正で控除額が本人(納税者)の所得額によっても変わる仕組みになりました。
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配偶者控除(配偶者の合計所得金額48万円以下)
本人所得900万円以下:38万円(老人控除対象配偶者70歳以上:48万円)
本人所得900万円超950万円以下:26万円(老人:32万円)
本人所得950万円超1,000万円以下:13万円(老人:16万円)
本人所得1,000万円超:適用なし
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配偶者特別控除(配偶者の合計所得金額48万円超133万円以下)
配偶者の所得金額と本人の所得金額に応じて1万円〜38万円の控除が段階的に適用。本人の合計所得金額が1,000万円超の場合は適用不可。同一年内に配偶者控除との重複適用不可。
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収入の壁と控除の関係
寄附金控除
国・地方公共団体・認定NPO法人・公益財団法人等への特定寄附金を支払った場合に適用される所得控除です。
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控除額
特定寄附金の合計額(または総所得金額等×40%のいずれか少ない方)-2,000円
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ふるさと納税の仕組み
地方公共団体への寄附。2,000円の自己負担で返礼品を受け取りつつ、所得税から(寄附額-2,000円)×所得税率・住民税から(寄附額-2,000円)×10%・住民税から特例控除(住民税の20%上限)が控除されます。
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ワンストップ特例制度
確定申告が不要な給与所得者等が5自治体以内のふるさと納税を行った場合、申告書の提出なしに住民税からのみ控除を受けられる制度。確定申告すると適用できません(申告した場合は通常の確定申告で処理)。
障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除
特定の個人的事情を持つ納税者に適用される控除です。控除額をまとめて整理します。
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障害者控除
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寡婦控除
27万円。要件:夫と死別・離婚後婚姻していない女性で、扶養親族あり、または合計所得金額500万円以下。ひとり親控除(子あり)とは重複不可。
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ひとり親控除
35万円。要件:未婚または配偶者の生死不明で、生計を一にする子(合計所得金額48万円以下)を有し、合計所得金額500万円以下。男女問わず適用可。
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勤労学生控除
27万円。要件:合計所得金額75万円以下(給与収入130万円以下)かつ給与所得以外の所得が10万円以下の学生。
扶養控除
扶養控除とは、生計を一にする16歳以上の扶養親族(合計所得金額48万円以下)がいる場合に適用される控除です。
2級重要ポイント:年齢区分の判定は「12月31日現在」・特定扶養63万円・老人扶養の同居/別居の違いは計算問題に直結します。
基礎控除
基礎控除とは、すべての納税者が原則として受けられる控除です。2020年の税制改正で48万円(従来38万円)に引き上げられましたが、高所得者は段階的に縮小・消滅します。