贈与の意義
贈与とは、当事者の一方(贈与者)が自己の財産を無償で相手方(受贈者)に与える意思を表示し、相手方がこれを受諾することによって成立する契約です(民法549条)。
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贈与の法的性質
無償・片務・諾成契約:対価なく(無償)、一方のみが義務を負い(片務)、合意のみで成立(諾成)します。
相手方の受諾が必要:贈与者の一方的な意思表示だけでは成立しません。受贈者の承諾が必要です。
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FP3級学科試験主要用語集2026
「財産を贈与・相続するとき、何が起きてどんな税がかかるか」を個人のライフプランの観点から概略として理解する科目です。
テーマ1「贈与と法律」では、単純贈与・定期贈与・負担付贈与・死因贈与の種類と民法の親族規定(親族の範囲・婚姻・扶養義務)を概略で押さえます。テーマ2「贈与と税金」では贈与税の課税財産・非課税財産・基礎控除110万円を使った税額計算、配偶者控除(おしどり贈与)・相続時精算課税制度・住宅取得等資金の贈与特例を概略として学びます。
テーマ3「相続と法律」は3級の重点テーマです。相続人の範囲と順位(第1〜3順位)・法定相続分の計算・代襲相続、遺産分割の4方式(指定/協議/調停/審判)と3種の財産分割方法(現物/換価/代償)、遺言の3方式(自筆証書・公正証書・秘密証書)と自筆証書遺言書保管制度、遺留分・配偶者居住権を概略で理解します。
テーマ4「相続と税金」では上記のフロー(課税財産・非課税財産・債務控除・基礎控除・相続税の総額計算・配偶者の税額軽減・延納・物納)を概略で習得します。テーマ5〜6「相続財産の評価」では宅地の路線価方式(借地権・貸宅地・貸家建付地)・小規模宅地等の評価減の特例・上場株式・取引相場のない株式の評価を概略として押さえます。テーマ7〜9では不動産相続対策・生命保険の活用・最新動向を概略で学びます。
贈与とは、当事者の一方(贈与者)が自己の財産を無償で相手方(受贈者)に与える意思を表示し、相手方がこれを受諾することによって成立する契約です(民法549条)。
贈与の法的性質
無償・片務・諾成契約:対価なく(無償)、一方のみが義務を負い(片務)、合意のみで成立(諾成)します。
相手方の受諾が必要:贈与者の一方的な意思表示だけでは成立しません。受贈者の承諾が必要です。
贈与契約は口頭(書面によらない場合)でも成立しますが、書面によるかどうかで取消しの可否が異なります。
書面によらない贈与
各当事者がいつでも取り消すことができます(民法550条)。ただし既に履行した部分については取り消しができません。口頭で約束した贈与でも、財産を引き渡してしまった後はその部分を取り戻せません。
書面による贈与
書面によって贈与契約を締結した場合は取り消すことができません。贈与者・受贈者ともに契約に拘束されます。
書面化のメリット
贈与の事実・金額・日付を明確にすることで、相続発生後の税務調査等での証明がしやすくなります。特に毎年の暦年贈与を継続する場合は、各年ごとに贈与契約書を作成することが推奨されます。
贈与がいつ成立し、いつ財産が移転するかによって、贈与税の課税年度・相続税への加算の可否が決まります。
書面による贈与
契約成立時(書面の作成日・合意の成立日)に贈与が成立します。財産の引渡しが別の日であっても、贈与税は契約成立年に課税されます。
書面によらない贈与
財産が実際に引き渡された時(現実の履行)に贈与が成立・完了したとみなされます。
年をまたぐ場合の注意点
例:12月31日に書面で贈与契約を締結し、1月5日に引き渡した場合→贈与税の課税年度は前年(12月31日の属する年)。暦年の基礎控除(110万円)の適用年も前年になります。
贈与契約は一定の事由がある場合に取り消しまたは解除することができます。書面によらない贈与の取消し(いつでも可)以外の主な事由を整理します。
負担付贈与の不履行による解除
受贈者が負担(義務)を履行しない場合、贈与者は相当の期間を定めて催告し、それでも履行しない場合に解除できます(双務契約に準じた扱い)。
民法上の贈与には単純贈与のほか、定期贈与・負担付贈与・死因贈与の特殊な形態があります。税務上の取り扱いが異なるため、区別が重要です。
単純贈与
条件なしに財産を無償で渡す通常の贈与。最も一般的な形態です。
定期贈与
一定の期間にわたって定期的に財産を給付することを約束する贈与(例:「毎年100万円を10年間贈与する」)。
税務上の注意点:定期贈与は毎年ごとの贈与ではなく、契約時に総額(例:1,000万円)の贈与があったとみなされる場合があります。これを避けるため、毎年その都度意思決定・書類作成を行うことが重要です(連年贈与)。
贈与者または受贈者の死亡によって契約は終了します。
負担付贈与
受贈者に一定の義務(負担)を負わせる贈与(例:「住宅ローン残債を引き継ぐことを条件に不動産を贈与する」)。
受贈者は負担の限度において贈与者に対して権利を有します。贈与者は売主と同様の責任(契約不適合担保責任)を負います。
税務上の注意点:負担付贈与の贈与税評価は通常の取引価額(時価)から負担額を差し引いた金額が課税価格となります(路線価等による評価ではなく時価)。
死因贈与
贈与者の死亡によって効力が生じる贈与契約(例:「死んだら財産をあげる」という約束)。
遺贈との違い:遺贈は単独行為(贈与者の一方的な意思表示)で受贈者の承諾不要。死因贈与は受贈者の承諾が必要な契約です。
税務上の取り扱い:死因贈与は贈与税ではなく相続税の課税対象となります(遺贈と同様の扱い)。
FP試験ポイント:「定期贈与は総額に贈与税→毎年別の意思決定が必要」「負担付贈与の課税価格は時価から負担額を控除」「死因贈与は相続税の対象」の3点が頻出です。
相続・贈与の税務計算に直接影響する民法の基本規定です。特に「誰が扶養義務者か」は贈与税の非課税判定に関わります。
親族の範囲
6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族が法律上の「親族」です(民法725条)。
親等の数え方:親子間は1親等、祖父母・孫は2親等、曾祖父母・ひ孫は3親等、兄弟姉妹は2親等(親を介して数える)。
婚姻・離婚
婚姻の成立:婚姻意思の合致+市区町村への婚姻届の提出(届出婚主義)。内縁関係は法律上の婚姻とは認められず、相続権がありません。
離婚:協議離婚(合意)・調停離婚・審判離婚・裁判離婚の4種類。離婚によって姻族関係は終了します。
離婚後の子の親権:協議または家庭裁判所が決定。親権者でない親にも面会交流権があります。
扶養義務者の範囲
扶養義務者からの生活費・教育費は贈与税が非課税です。扶養義務者の範囲は以下の通りです。
・直系血族(父母・祖父母・子・孫等)
・兄弟姉妹
・家庭裁判所が認めた3親等内の親族(特別の事情がある場合)
FP試験ポイント:「内縁の配偶者は法定相続人ではない」「扶養義務者は直系血族+兄弟姉妹」「6親等内の血族・3親等内の姻族が親族」は相続・贈与の入口として必須の知識です。
贈与税は、個人から財産をもらった者(受贈者)に課税されます。受贈者の住所と贈与者の居住地によって課税範囲が異なります。
無制限納税義務者
国内に住所がある個人(または一定の国外在住者)が贈与を受けた場合。国内・国外を問わずすべての受贈財産が課税対象。
制限納税義務者
国内に住所がない個人が贈与を受けた場合。国内財産のみが課税対象。
特定納税義務者
相続時精算課税制度の適用を選択した者が、被相続人の死亡時に相続税を納付する際に適用される区分。
贈与税の課税対象となる財産と、課税されない財産の区別が重要です。
本来の贈与財産
贈与契約によって受け取った現金・預貯金・不動産・有価証券などすべての財産。
みなし贈与財産
贈与契約はないが実質的に贈与と同じ経済効果があるため課税される財産。
例:著しく低い価額(時価の2分の1未満)での財産譲受・生命保険の保険料を他の人が負担している場合の保険金・債務免除益など。
非課税財産
法人からの贈与財産:法人から個人への贈与は贈与税ではなく所得税(一時所得または給与所得)の対象。
扶養義務者からの生活費・教育費:通常必要と認められる範囲内のもの(貯蓄に回した分は課税)。
香典・贈答・見舞い・祝物等:社交上必要と認められる範囲内のもの。
相続開始年の贈与:被相続人から相続開始年(死亡した年)に受けた贈与は贈与税ではなく相続税の対象。
暦年課税とは、1月1日〜12月31日の1年間に受けた贈与の合計額に課税する通常の贈与税の課税方式です。
基礎控除と計算式
課税価格=1年間に受けた贈与財産の合計額-基礎控除110万円
贈与税額=課税価格×税率-控除額
例:300万円の贈与を受けた場合(一般税率)
課税価格=300万円-110万円=190万円
贈与税額=190万円×15%-10万円=18.5万円
一般税率と特例税率
特例税率:直系尊属(父母・祖父母等)から18歳以上の子・孫への贈与に適用。一般税率より低い(優遇)。
一般税率:特例税率以外の贈与(兄弟間・夫婦間・他人からの贈与等)に適用。
FP試験ポイント:「基礎控除110万円・申告不要」「直系尊属から18歳以上への贈与は特例税率(優遇)」の2点は必須です。
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産またはその取得のための金銭を贈与した場合に、基礎控除110万円に加えて最高2,000万円を課税価格から控除できる特例です。
主な適用要件
贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住し、その後も引き続き居住する見込みがあること。
同一の配偶者からは一生に一度のみ適用可。
居住用不動産の土地のみの贈与も対象(建物と併用の場合)。
生前贈与加算の適用除外(2024年以降)
2024年1月以降、配偶者控除の適用を受けた居住用不動産の贈与は、相続発生時の生前贈与加算の対象外とすることができます(従来より拡充)。
相続時精算課税制度とは、生前に贈与を行い、贈与時は特別控除(累計2,500万円)を使って贈与税を軽減し、贈与者の死亡時に贈与財産を相続財産に加算して相続税で精算する制度です。
適用要件
贈与者:60歳以上の父母・祖父母。
受贈者:18歳以上の子・孫(贈与を受けた年の1月1日現在)。
2024年改正で追加された年110万円の基礎控除
2024年1月1日以降の贈与から、相続時精算課税制度にも年間110万円の基礎控除が新設されました。この110万円以内の贈与は相続税の課税価格への加算対象外です。
累計2,500万円の特別控除
110万円の基礎控除を超えた贈与額について、累計2,500万円まで贈与税が非課税(特別控除)。2,500万円を超えた部分には一律20%の贈与税が課されます。
相続時の精算
制度選択後のすべての贈与財産(2024年以降は110万円基礎控除分を除く)を相続財産に加算して相続税を計算。支払った贈与税は相続税から控除されます。
選択は撤回不可
相続時精算課税制度を選択すると、以後その贈与者からの贈与についてはすべて精算課税制度が適用され、暦年課税に戻すことはできません。
FP試験ポイント:「60歳以上の直系尊属→18歳以上の子・孫」「2,500万円の特別控除+2024年から年110万円の基礎控除」「選択は撤回不可」の3点が頻出です。
一定の目的のための贈与について、贈与税が非課税となる特例制度があります。
住宅取得等資金の贈与の特例
父母・祖父母等の直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の非課税特例。
非課税限度額:省エネ等住宅1,000万円・その他の住宅500万円(2024年度)。
受贈者の所得要件:合計所得金額2,000万円以下(床面積40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下)。
教育資金の一括贈与の特例
30歳未満の子・孫への教育資金の一括贈与について、1,500万円まで(うち学校等以外への支払いは500万円まで)が非課税。金融機関での信託契約・預金が必要。
結婚・子育て資金の一括贈与の特例
18歳以上50歳未満の子・孫への結婚・子育て資金の一括贈与について、1,000万円まで(うち結婚関連費用は300万円まで)が非課税。金融機関での信託契約等が必要。
各特例は適用期限が設けられており、毎年の税制改正で延長・改正される場合があります。試験直前に最新の非課税限度額を確認しましょう。
贈与税の申告・納付は贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日に受贈者の住所地の所轄税務署に行います。
申告が必要な場合
暦年課税:1年間の贈与合計額が基礎控除110万円を超えた場合。
相続時精算課税:制度を適用した場合(贈与税額がゼロでも申告必要)。
各種贈与特例:住宅取得等資金・教育資金等の特例を適用する場合。
延納
贈与税は原則として現金一括納付ですが、納付税額が10万円超で金銭納付が困難な場合に限り、最長5年以内の延納が認められます(利子税がかかります)。不動産等による物納は認められません。
相続は、人が死亡した瞬間に開始します(民法882条)。死亡には普通死亡のほか、失踪宣告(行方不明者を法律上死亡したものとみなす制度)による死亡も含まれます。
失踪宣告の種類
普通失踪:行方不明から7年間生死不明の場合、家庭裁判所が宣告。失踪期間満了時に死亡したものとみなす。
特別失踪(危難失踪):戦争・震災・船舶沈没等の危難に遭遇した者が危難終了後1年間生死不明の場合。危難終了時に死亡したものとみなす。
同時死亡の推定
数人が同一の危難で死亡し、死亡の先後が不明な場合は、同時に死亡したものと推定されます。この場合、互いに相続は発生しません。
民法で定められた法定相続人の範囲と優先順位です。配偶者は常に相続人となり、血族相続人は順位に従って相続人となります。
血族相続人の順位
第1順位:子(直系卑属)。子が先に死亡している場合は孫・ひ孫が代襲相続。
第2順位:直系尊属(父母・祖父母等)。第1順位がいない場合に相続人となる。父母がいれば祖父母より優先。
第3順位:兄弟姉妹。第1・第2順位がいない場合に相続人となる。代襲は甥・姪まで(再代襲なし)。
相続権を失う場合
相続欠格:被相続人を故意に死亡させた・詐欺や強迫で遺言を書かせた等の行為により、当然に相続権を失う。
相続廃除:被相続人が家庭裁判所に申し立て、虐待・侮辱等を行った推定相続人の相続権を失わせる制度。
FP試験ポイント:「配偶者は常に相続人」「第1順位は子(孫まで代襲)」「第3順位は兄弟姉妹(再代襲なし)」の三点を確実に押さえましょう。
相続において、実子と養子はいずれも第1順位の相続人となりますが、相続税計算上の法定相続人の数には養子の算入制限があります。
実子の区分
嫡出子:婚姻中に懐胎・出生した子。
非嫡出子(認知):婚姻外で生まれた子。父が認知することで相続権が発生。嫡出子と同等の相続分(2013年改正)。
養子の種類
普通養子:縁組後も実親との親子関係が継続。実親・養親双方の相続人となります。
特別養子:縁組後は実親との親子関係が終了。養親のみの相続人となります。原則として15歳未満が対象。
相続税計算上の養子の算入制限
実子がいる場合:養子は1人まで法定相続人に算入。
実子がいない場合:養子は2人まで法定相続人に算入。
成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などにより判断能力が不十分な方を支援するための制度です。法定後見と任意後見の2種類があります。
法定後見(3種類)
後見:判断能力が欠けている常況にある人。成年後見人が日常生活に関する行為以外を代理・取消。
保佐:判断能力が著しく不十分な人。保佐人が重要な財産行為(借財・不動産売買等)に同意・取消。
補助:判断能力が不十分な人。補助人が特定の行為について同意・代理。
任意後見制度
判断能力があるうちに、将来に備えて自分が信頼できる人(任意後見受任者)と公正証書による任意後見契約を結んでおく制度。判断能力が低下した後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで効力が生じます。
成年後見制度の利用は相続対策の観点からも重要です。後見開始後は生前贈与等の積極的な相続対策が困難になる場合があります。
法定相続分とは、民法が定める相続人ごとの遺産の取り分です。遺言がない場合や遺産分割協議が整わない場合の基準となります。
配偶者と子が相続人の場合
配偶者1/2・子全員で1/2(子が複数の場合は均等に分割)
配偶者と直系尊属が相続人の場合
配偶者2/3・直系尊属全員で1/3
配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合
配偶者3/4・兄弟姉妹全員で1/4
代襲相続分
代襲相続人(孫・甥姪等)は、被代襲者(亡くなった子・兄弟姉妹)が受けるはずだった相続分を引き継ぎます。代襲相続人が複数の場合はさらに均等に分割。
FP試験ポイント:「子がいれば配偶者1/2・子1/2」「直系尊属のみなら配偶者2/3・尊属1/3」「兄弟姉妹のみなら配偶者3/4・兄弟1/4」の三パターンは必須暗記です。
相続財産は遺産分割によって各相続人に帰属します。分割方法には「誰が分割を決めるか」と「どのように分けるか」の2つの観点があります。
遺産分割の決定方法
指定分割:被相続人が遺言で分割方法を指定する方法。最も優先されます。
協議分割:相続人全員の合意によって分割する方法。全員の合意が必要。
調停分割:協議が整わない場合、家庭裁判所の調停による分割。
審判分割:調停が不成立の場合、家庭裁判所の審判による分割。
財産の分割方法
現物分割:各財産をそのままの形で各相続人に分配。最も基本的な方法。
換価分割:財産を売却して現金化し、その代金を分配する方法。
代償分割:特定の相続人が財産を取得し、他の相続人に代償金を支払う方法。不動産のように分割が難しい財産の分割に有効。
相続開始から遺産分割が完了するまでの一般的な流れです。
①相続人の確定
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集し、法定相続人を確定します。
②遺言書の確認
自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が必要(法務局保管の場合は不要)。公正証書遺言は検認不要。
③相続財産の調査・把握
プラスの財産(不動産・預貯金・有価証券等)とマイナスの財産(借入金・未払債務等)を調査します。
④相続の承認または放棄(3か月以内)
相続開始を知った日から3か月以内に単純承認・限定承認・放棄を選択します。
⑤遺産分割協議・協議書の作成
相続人全員の合意のもとで遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成します(実印・印鑑証明書が必要)。
⑥各種名義変更・申告
不動産の登記変更・預貯金口座の解約・相続税の申告(相続開始から10か月以内)を行います。
相続人は、相続開始を知った日から3か月以内(熟慮期間)に、相続の承認または放棄を選択します。
単純承認
プラス・マイナスすべての財産を引き継ぐ方法。熟慮期間内に特段の手続きをしなければ単純承認とみなされます(法定単純承認)。
限定承認
相続財産の範囲内でのみ債務を引き継ぐ方法。相続財産でまかなえないマイナス財産は引き継がなくてよい。相続人全員で家庭裁判所に申述が必要。
相続放棄
プラス・マイナスのすべての財産を引き継がない方法。各自が家庭裁判所に申述(他の相続人の同意不要)。放棄した者は初めから相続人でなかったとみなされます(代襲相続は発生しない)。
FP試験ポイント:「限定承認は相続人全員で申述」「相続放棄は各自単独で申述」「放棄しても相続人の数(生命保険非課税枠等)には含める」の3点が頻出です。
遺言とは、被相続人が自己の財産の分配・処分について生前に意思表示する法的行為です。遺言があれば法定相続分に優先して財産を分配できます。
遺言の3方式と要件
自筆証書遺言:遺言者が全文・日付・氏名を自書し押印。財産目録はパソコン作成等も可(2020年〜)。費用がかからず手軽だが、形式不備・紛失・改ざんリスクあり。
公正証書遺言:公証役場で公証人が作成。証人2名の立会いが必要。最も確実で紛失・改ざんのリスクがなく、家庭裁判所の検認も不要。費用がかかる。
秘密証書遺言:内容を秘密にできるが、形式不備で無効になるリスクが高い。利用頻度は少ない。
遺言の効力・執行・撤回
効力:遺言は遺言者の死亡時に効力を生じます。遺留分を侵害する内容でも有効(遺留分侵害額請求の対象となる)。
執行:遺言内容の実現。必要に応じて遺言執行者が選任されます(遺言または家庭裁判所が選任)。
撤回:遺言者はいつでも遺言を撤回・変更できます。後の遺言が前の遺言に優先します。
自筆証書遺言書保管制度
2020年7月から施行。法務局(遺言書保管所)に自筆証書遺言を保管できる制度。家庭裁判所の検認が不要になります。本人申請のみ(代理不可)。法務局は形式審査のみで内容の有効性は審査しません。
遺留分とは、一定の相続人(遺留分権利者)に対して遺言等によっても奪えない最低限の取り分です。兄弟姉妹には遺留分がありません。
遺留分の割合
直系尊属のみが相続人:遺産全体の1/3
上記以外(子・配偶者等):遺産全体の1/2
各人の遺留分=遺留分の割合×その人の法定相続分
例:配偶者と子1人の場合→配偶者の遺留分=1/2×1/2=1/4
遺留分侵害額請求
遺留分を侵害された者は、受遺者・受贈者に対して金銭の支払いを請求できます(2019年改正で物権的請求から金銭請求に変更)。
請求期限:遺留分侵害を知った日から1年間、相続開始から10年間。
遺留分の放棄
相続開始前でも家庭裁判所の許可を得れば遺留分を放棄できます(相続放棄とは異なり、他の相続人の遺留分には影響しない)。
FP試験ポイント:「兄弟姉妹に遺留分なし」「直系尊属のみなら1/3・それ以外は1/2」「請求は金銭で・1年以内」の3点が頻出です。
被相続人の配偶者が、相続発生後も引き続き居住建物に住み続けられるよう2020年4月から導入された制度です。配偶者短期居住権と配偶者居住権の2種類があります。
配偶者短期居住権
相続開始の時に被相続人の建物に無償で居住していた配偶者が、遺産分割が確定する日または相続開始から6か月が経過する日のいずれか遅い日まで、無償で住み続けられる権利。自動的に取得(申請不要)。
配偶者居住権
遺産分割協議または遺言によって設定でき、配偶者が終身または一定期間、居住建物を無償で使用できる権利。居住権と所有権を分離することで、配偶者は住む場所を確保しつつ、他の相続財産の取り分を増やすことができます。
配偶者居住権は登記が必要です。また配偶者居住権は譲渡・担保設定ができません。
特別の寄与とは、相続人以外の被相続人の親族(例:息子の配偶者=嫁)が、被相続人の療養看護・事業支援などを無償で行い、財産の維持・増加に特別の貢献をした場合に、相続人に対して特別寄与料を請求できる制度です(2019年施行)。
請求できる者
相続人以外の被相続人の親族(6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族)。相続人自身は寄与分(民法904条の2)の制度を利用します。
請求の期限
相続の開始および相続人を知った日から6か月以内、かつ相続開始から1年以内に相続人に協議を求める必要があります。
相続・遺贈によって財産を取得した者に相続税の納税義務が生じます。取得者の住所(国内・国外)と被相続人の住所によって課税範囲が異なります。
無制限納税義務者
国内に住所がある者(または一定の条件を満たす国外在住者)が相続・遺贈で財産を取得した場合。国内・国外を問わずすべての取得財産が課税対象。
制限納税義務者
国内に住所がない者が相続・遺贈で財産を取得した場合。国内財産のみが課税対象。
特定納税義務者
相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産について、被相続人の死亡時に相続税を納付する義務を負う者(相続・遺贈で財産を取得していなくても対象)。
相続税の課税対象となる財産は、本来の相続財産・みなし相続財産・生前贈与財産(加算分)の3つから構成されます。
本来の相続財産
被相続人が所有していた財産。現金・預貯金・不動産・有価証券・貸付金・ゴルフ会員権・美術品等。
みなし相続財産
民法上の相続財産ではないが、実質的に相続で得た財産と同様の経済効果があるため課税される財産。代表例は死亡保険金・死亡退職金(受取人が相続人の場合に一定額まで非課税)。
相続開始前の贈与財産(生前贈与加算)
被相続人から相続人等が受けた一定期間内の贈与財産は相続税の課税価格に加算されます。
・暦年課税分:相続開始前3年以内(2024年以降の贈与から7年に延長)に受けた贈与。
・相続時精算課税分:制度を選択した場合の全贈与財産。
FP試験ポイント:「死亡保険金・死亡退職金はみなし相続財産」「暦年贈与の加算期間が3年から7年に延長(2024年改正)」の2点は最重要です。
相続税が課されない財産です。みなし相続財産であっても一定額以下は非課税となります。
死亡保険金・死亡退職金の非課税枠
相続人が受け取る死亡保険金・死亡退職金には、それぞれ
非課税限度額=500万円×法定相続人の数
の非課税枠があります。相続放棄した者も法定相続人の数に含めます。
弔慰金の非課税範囲
業務上の死亡:被相続人の死亡時の給与の3年分まで非課税。
業務外の死亡:被相続人の死亡時の給与の半年分まで非課税。
その他の非課税財産
墓地・仏壇・祭具(生前購入済みのもの)。
国・地方公共団体・特定の公益法人への遺贈財産。
相続財産からマイナスとなる債務・葬式費用を控除することで、正味の遺産額(課税価格)を計算します。
控除できる債務
被相続人の確定している債務(借入金・未払医療費・未払税金等)。
無制限納税義務者は国内外すべての債務が控除可。制限納税義務者は国内財産に対応する債務のみ。
控除できない債務
墓地・仏壇の未払購入代金(非課税財産取得のための費用)。保証債務(履行の確実性が不明な場合)。
葬式費用として控除できるもの
控除できる:葬儀代・火葬料・読経料・戒名料・遺体搬送費・お通夜費用など。
控除できない:香典返し・法要費用(初七日・四十九日等)・墓地・墓石購入費・遺体解剖費用など。
相続税の計算は以下の5段階の手順で行います。「各自の取得財産に基づく税額」ではなく、まず「法定相続分で按分した仮の税額総額」を求めてから按分する点が特徴です。
STEP 1:課税遺産総額の計算
課税遺産総額=正味の遺産額(相続財産+みなし相続財産+生前贈与加算-非課税財産-債務控除-葬式費用)-遺産に係る基礎控除額
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
STEP 2:相続税の総額の計算
課税遺産総額を法定相続分どおりに按分したと仮定し、各法定相続人の取得額に相続税率(超過累進:10〜55%)を乗じて各仮税額を算出→合計して相続税の総額を求めます。
STEP 3:各相続人等の相続税額の計算
各相続人等の相続税額=相続税の総額×(各人の実際の取得割合)
STEP 4:加算・控除の適用
2割加算:一親等の血族(子・親)および配偶者以外の者(兄弟姉妹・孫(代襲除く)等)が取得した場合、算出税額に20%加算。
配偶者の税額軽減:配偶者が取得した財産が「1億6,000万円」または「法定相続分相当額」のいずれか多い金額以下であれば相続税ゼロ。申告が必要。
未成年者控除:(18歳-相続開始時の年齢)×10万円を税額から控除。
贈与税額控除:相続時精算課税制度の適用分に係る贈与税額を控除。
FP試験ポイント:基礎控除「3,000万円+600万円×人数」・配偶者軽減「1億6,000万円または法定相続分の多い方」・2割加算の対象者は必須暗記です。
相続税の申告・納付は相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行います。
申告方法と申告期限
被相続人の住所地の所轄税務署に申告書を提出します。申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月以内。
相続財産の合計が基礎控除以下の場合は申告不要。ただし配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を適用するには申告が必要です。
延納
相続税を一括で現金納付することが困難な場合に分割払いができる制度。
要件:税額10万円超・担保提供(50万円超の場合)・申告期限内に申請。
延納期間:原則5年以内(不動産等の割合が多い場合は最長20年)。延納利子税がかかります。
物納
延納でも金銭納付が困難な場合に限り、相続財産そのもので納付できる制度。
物納財産の優先順位:①国債・地方債・上場株式等 → ②不動産・船舶 → ③非上場株式等 → ④動産
税務署長の許可が必要。物納財産の収納価額は相続税評価額です。
相続税・贈与税の課税価格の計算上、財産の価額は原則として課税時期(相続開始日・贈与日)の時価によります(財産評価基本通達)。各財産の種類に応じた評価方法が定められています。
時価主義の原則
財産の評価は「不特定多数の者の間で自由な取引が行われた場合に通常成立すると認められる価額」(客観的な交換価値)が基本です。
主な財産の評価方法の概要
不動産:路線価方式または倍率方式。
上場株式:取引所の相場(原則として4つの価額のうち最も低い価額)。
取引相場のない株式:会社規模等に応じた特別な評価方式。
家庭用の動産(家具・衣類・装身具等)は原則として調達価額(課税時期に取得するとした場合の価額)で評価します。
家庭用財産の特例
一般的な家庭用財産(家具・衣類等の普通の動産)は、一組または一個の価額が5万円以下のものは相続税の課税価格に含めなくてよい取扱いがあります(少額動産の特例)。
書画・骨董・美術品等
専門家による鑑定評価額が原則。市場での取引価格がある場合はその価格も参考にします。
ゴルフ会員権の評価方法は取引相場の有無によって異なります。
取引相場のあるゴルフ会員権
課税時期の取引価格(業者間の売買相場)×70%で評価します。取引価格には通常、名義書換料が含まれていないため、名義書換料相当額を加算する場合があります。
取引相場のないゴルフ会員権
預託金等の返還を受けられる場合は、その返還を受けられる額で評価。株主会員制の場合は株式として評価します。
預貯金・公社債・生命保険契約に関する権利等の金融資産の評価方法です。
預貯金の評価
課税時期の預入残高+既経過利子(課税時期までの未収利息)-源泉所得税相当額。定期預金は解約した場合に支払われる既経過利子を加算します。
公社債の評価
上場公社債:課税時期の最終価格(取引所の相場)。
個人向け国債・利付公債等:元本+既経過利子(源泉税控除後)。
生命保険契約に関する権利の評価
被相続人が保険料を負担していた生命保険契約(死亡以外の保険事故未発生)は、課税時期の解約返戻金相当額で評価します。
株式の評価方法は上場株式・気配相場株・取引相場のない株式(非上場株)で大きく異なります。
上場株式の評価
次の4つの価額のうち最も低い価額で評価します。
①課税時期の最終価格、②課税時期の属する月の月間平均価額、③前月の月間平均価額、④前々月の月間平均価額
気配相場等のある株式
上場準備中や店頭売買株式等。取引価格や公表された気配値をもとに評価します。上場株式に準じた方法が適用される場合もあります。
取引相場のない株式(非上場株式)
評価者(株主)の会社に対する支配力と会社の規模によって評価方式が異なります。
・大会社:類似業種比準方式(または純資産価額方式)
・中会社:類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式
・小会社:純資産価額方式(または選択で類似業種比準方式との併用方式)
・同族株主以外の少数株主:配当還元方式(年間配当金額÷10%×1/2)
FP試験ポイント:上場株式は「4つの価額の最低値」・非上場株式は「会社規模と株主の立場で評価方式が決まる」・少数株主は「配当還元方式」の3点が頻出です。
宅地の相続税評価は、市街地では路線価方式、市街地以外では倍率方式が用いられます。
路線価方式
路線価(道路に面する土地1㎡あたりの評価額)を基に、地積・形状等を補正して評価する方式。
評価額=路線価×各種補正率×地積(㎡)
路線価は毎年1月1日を基準に国税庁が公表(公示価格の約80%水準)。
倍率方式
路線価が設定されていない地域で適用。固定資産税評価額に国税庁が定める評価倍率を乗じて評価します。
評価額=固定資産税評価額×評価倍率
評価単位
宅地は利用の単位となっている1区画を1単位として評価します。地番単位ではなく実際の利用状況(自用地・貸宅地等)に応じて評価単位を判定します。
土地を第三者に貸したり、借地権が設定されている場合の評価方法です。自用地評価額(更地としての評価額)を基に、各種権利の割合を乗じて計算します。
借地権の評価
借地権評価額=自用地評価額×借地権割合(30〜90%・路線価図に記載)
貸宅地(底地)の評価
借地権が設定された土地の所有者の評価。
貸宅地評価額=自用地評価額×(1-借地権割合)
貸家建付地の評価
自分が所有する土地に建設した家屋(貸家)を他人に貸している場合の土地評価。
評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
借家権割合は一般的に30%。賃貸割合は課税時期において実際に賃貸されている割合。
貸家建付借地権・定期借地権等
貸家建付借地権:借地権を持つ土地の上に賃貸家屋を建てている場合の借地権の評価。借地権評価額からさらに調整した評価額となります。
定期借地権等:残存期間に応じた逓減率(0〜60%)を借地権割合と組み合わせて評価します。
建物の相続税評価は、固定資産税評価額を基に評価します。
自用家屋の評価
自分で使用している建物(自宅等):
評価額=固定資産税評価額×1.0(固定資産税評価額そのもの)
貸家の評価
他人に賃貸している建物:
評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合30%×賃貸割合)
例:賃貸割合100%の場合:固定資産税評価額×0.7
FP試験ポイント:「貸家・貸家建付地は評価額が下がる→相続税対策として有効」という点が7. 不動産の相続対策とつながります。
被相続人等が居住・事業に使用していた宅地等について、一定の要件のもとで相続税評価額を大幅に減額できる特例です。
特定居住用宅地等(居住用)
被相続人が住んでいた宅地等。330㎡まで80%減額。
取得者要件:配偶者(無条件)・同居相続人(相続後も居住継続)・一定の別居親族(家なき子等)。
特定事業用宅地等(事業用)
被相続人が事業(不動産貸付を除く)に使っていた宅地等。400㎡まで80%減額。
貸付事業用宅地等(貸付用)
被相続人が不動産貸付事業に使っていた宅地等。200㎡まで50%減額。
複数の宅地等の適用(限度面積の調整)
特定居住用と特定事業用は原則として完全に別枠で適用可能(合算730㎡まで)。
貸付事業用宅地等を含む場合は調整計算が必要。
FP試験ポイント:「居住用330㎡80%減・事業用400㎡80%減・貸付用200㎡50%減」の三区分は必須暗記です。
配偶者居住権には財産的価値があり、相続税の課税価格に算入されます。建物の価値を「居住権」と「所有権(居住権が付着した建物)」に分けて評価します。
評価の考え方
建物の固定資産税評価額等をもとに、配偶者の余命年数・存続年数・建物の耐用年数・法定利率を用いて評価額を算定します。
居住建物の所有権評価額=建物の評価額-配偶者居住権の評価額
相続税の財産評価は、通常の取引価額(市場価格)よりも低く評価されるケースが多くあります。この評価差を活用することが不動産を活用した相続対策の基本です。
主な評価差の例
宅地(更地):路線価は公示価格の約80%水準 → 現金で保有するより不動産に換えると評価が下がります。
貸家建付地:更地より低い評価(借地権割合×借家権割合×賃貸割合分だけ自用地評価額から控除)。
貸家(賃貸建物):固定資産税評価額×(1-借家権割合30%×賃貸割合)で評価 → 自用家屋よりも低い評価。
生前に財産を次世代に移転することで、相続時の遺産を減らす対策です。贈与・売却・交換のそれぞれに特有の税務上の取り扱いがあります。
暦年課税による贈与の活用
年間110万円の基礎控除を活用した毎年の生前贈与で、相続財産を計画的に減少させます。定期贈与とみなされないよう、毎年ごとに別個の意思決定と書面作成が重要です。2024年からは暦年贈与加算が3年から7年に延長されたため、早期からの計画が必要です。
贈与税の配偶者控除の活用
婚姻20年以上の配偶者への居住用不動産贈与(最高2,000万円非課税)。2024年以降は贈与した居住用不動産が生前贈与加算の対象外となったため、相続対策としての有効性がさらに高まりました。
住宅取得等資金の贈与の特例の活用
直系尊属から子・孫への住宅取得資金贈与(省エネ等住宅:1,000万円・その他:500万円非課税)。通常の基礎控除110万円と組み合わせることで最大1,110万円の非課税枠が活用できます。
相続財産の評価額を合法的に引き下げることで、課税価格を減少させる対策です。
不動産の購入による評価引き下げ
現金・預貯金(時価で評価)を不動産(路線価等・市場価格の約80%水準で評価)に換えることで、評価額を約20%引き下げられます。さらに賃貸物件とすることで評価がさらに下がります。
不動産の有効活用(賃貸経営)
更地に賃貸アパート・マンションを建設すると、①土地が貸家建付地として評価減、②建物が貸家として評価減(固定資産税評価額×70%)の二重の評価減効果があります。同時に家賃収入によって相続税の納税資金を確保することもできます。
貸家建付地による評価減
貸家建付地の評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合30%×賃貸割合)。空室を埋めて賃貸割合を高めることで評価減の効果が最大になります。
定期借地権の活用
土地を一般定期借地権(50年以上)または事業用定期借地権等で第三者に貸すことで、土地の相続税評価が下がります(定期借地権の目的となっている宅地として評価)。また地代収入が入るため資産の流動性も確保できます。
小規模宅地等の評価減の特例の活用
居住用(330㎡・80%減)・事業用(400㎡・80%減)・貸付用(200㎡・50%減)の各特例を最大限活用することで、課税価格を大幅に圧縮できます。特例の適用要件(取得者・継続要件等)を事前に確認し、要件を満たせる形で遺産分割を行うことが重要です。
相続税の納付に備えた資金確保と、納付方法の選択についての対策です。
延納による納税対策
相続税が高額で一括納付が困難な場合、最長20年の延納制度を活用できます。不動産の割合が多い遺産構成の場合は延納期間が長くなります。延納には担保提供と利子税負担が伴います。
物納による納税対策
延納でも金銭納付が困難な場合に限り、相続財産(不動産・株式等)そのもので納税できます。物納財産の収納価額は相続税評価額(市場価格より低い場合がある)のため、現金化して納付する方が有利な場合もあります。
相続人間の争い(遺産分割紛争)を防ぎ、円滑な相続を実現するための対策です。
遺言書の作成
遺言によって遺産の分割方法を明示することで、相続人間の協議を不要にし紛争を防ぎます。公正証書遺言が最も確実です。遺言執行者を指定しておくと、執行がスムーズになります。
分割容易資産への変換
分割しにくい不動産や非上場株式を、生前に換金(売却・信託・法人化等)して現金・預貯金・有価証券等の分割しやすい資産に変換しておく対策。
代償分割の活用
特定の相続人が不動産等の現物を取得し、他の相続人に代償金を支払う方法。例:長男が自宅を相続し、代償金を生命保険金で賄う(生命保険の非課税枠も活用)。遺産分割協議書に代償金の金額・支払時期を明記することが重要です。
生命保険は相続対策として多面的に活用できます。「契約者・被保険者・受取人の組み合わせ」によって保険金の課税区分が異なる点が重要です。
保険金の課税区分(三者の関係)
契約者=被保険者≠受取人(例:父=被保険者・子=受取人):死亡保険金はみなし相続財産として相続税の対象。非課税枠(500万円×法定相続人の数)が適用される。
契約者≠被保険者=受取人(例:父=契約者・母=被保険者・父=受取人):満期保険金は一時所得として所得税の対象(保険料負担者=受取人の場合)。
契約者・被保険者・受取人がすべて異なる(例:父=契約者・母=被保険者・子=受取人):死亡保険金は贈与税の対象(父から子への贈与とみなされる)。
相続税の非課税枠の活用
死亡保険金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数。相続人が受け取る死亡保険金について、この非課税枠が適用されます(相続放棄した者も人数に含める)。
生命保険は遺産分割対策・相続税軽減・納税資金確保・二次相続対策(2級のみ)の4つの目的で活用できます。
遺産分割対策
死亡保険金は受取人固有の財産(民法上の相続財産ではない)のため、遺産分割協議の対象外です。特定の相続人(例:長男)を受取人に指定することで、遺産分割とは別に確実に財産を渡せます。
代償分割の原資としても有効:長男が不動産を相続し、他の相続人への代償金を死亡保険金で賄うことができます。
相続税の軽減対策
現金・預貯金を生命保険(終身保険・養老保険等)に組み換えることで、死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を活用できます。
例:法定相続人3人で1,500万円の非課税枠がある場合、現金1,500万円を保険に変えるだけで相続税が減少します(保険料が同額の場合)。
FP試験ポイント:「死亡保険金は受取人固有の財産→遺産分割対象外」「非課税枠500万円×人数」「二次相続では配偶者軽減を最大活用すると逆に税が増える場合あり」の3点が頻出です。
2024年1月1日以降の贈与から、相続発生時に相続財産に加算される暦年贈与の期間が3年から7年に延長されました(経過措置あり)。早期からの生前贈与計画が従来以上に重要になっています。
改正の概要
相続人等が被相続人から受けた暦年贈与のうち、相続開始前7年以内の贈与が相続財産に加算されます。
ただし延長された4年間(相続開始前3〜7年前)の贈与については、合計100万円を差し引いた額のみ加算対象となります(少額の緩和措置)。
経過措置
2024年以前の贈与は従来通り3年加算。2024年1月1日以降の贈与から段階的に加算期間が延長され、2031年1月1日以降の相続から完全に7年加算が適用されます。
2024年1月1日以降の贈与から、相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が新設されました。従来は基礎控除がなく使いにくい面があった精算課税制度の利便性が大幅に向上しました。
改正の概要
年間110万円以内の贈与は精算課税制度を選択しても贈与税申告が不要(基礎控除内)であり、さらにこの基礎控除分は相続財産への加算対象外となります。
2,500万円の特別控除と組み合わせると、年110万円を超えた分だけ特別控除が消費されます。
2024年4月1日から、相続によって不動産を取得した相続人は相続登記が義務となりました。「所有者不明土地」問題の深刻化を受けた法改正です。
登記義務の内容
相続(遺言含む)によって不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。遺産分割が成立した場合は、分割成立を知った日から3年以内に登記が必要です。
過去の相続分も対象
2024年4月1日より前に発生した相続で未登記のものも義務化の対象です。2027年3月31日までに登記が必要です(経過措置)。
正当な理由なく義務を怠った場合
10万円以下の過料が科される場合があります。
相続登記の義務化はFPとして必ず把握すべき改正です。相続発生後の手続きとして「10か月以内の相続税申告」と「3年以内の相続登記」の両方を顧客にアドバイスする必要があります。
2020年4月施行の配偶者居住権は、相続発生から5年以上が経過し実務での活用事例が蓄積されています。メリット・デメリットを正確に把握したアドバイスが求められています。
配偶者居住権の活用メリット
居住権と所有権を分離することで、配偶者は住む場所を確保しながら他の財産(預貯金・有価証券等)も相続できます。特に自宅不動産の価値が高い場合に有効です。